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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第14章 海上交易‬
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4 出港・・・シロル

 これまで:シロルはケドルのお悩み相談の後、双胴船の中を客室から右舷の厨房まで見て回った。

 船の乗組定員は操船で5人、漁と保安で10人、他に客室関連で8人となっています。

 ネドル島で船乗りと言えるのは現在2艘の漁船で漁に出る8人と、たまに手伝いで乗る6人の計14人のみです。

 操船と漁で経験者がいるのはいいことですが漁船は今後も運航しますので、4人を島に残し20人の見習いを加えて試験運航することになりました。客室乗務員は定数の倍の16人でお客さん役と交代で勤務します。


 他に調理が18人、アリスさま、ミットさまにナックさま。

 準備は70人1月分の食糧の積み込みから始めます。


 ケドルが操船、保安の30人を前に大きな声で作業の説明を始めます。


「あの補助マストのガフブームはクレーンブームを兼ねている。下のスパンカーブームを畳めば、余裕でこの遊歩道にフックを下ろすことができる。そして作業デッキの後ろは跳ね上げだ。あれを平らまで下ろせばここから荷の受け渡しができるんだ。作業デッキからは両舷の船内へ出入りができるし冷蔵庫にも荷運びができる。左舷は獲物を冷凍する設備だから今回は触るなよ。

 ここに8人。左舷補助マストに7人。作業デッキには15人降りてくれ。使い方は班長に教えてあるが、わからなくなったらミットさまを呼ぶんだ。だがくれぐれも失礼のないように。

 では配置につけ!」

「「「「「おう!」」」」」


 昨日のうちに図面を渡し説明も受けたでしょうが、見ると聞くが違うのはよくあることです。どうなることかと見ていますと、左舷船尾の跳ね上げハッチから15人が潜り込んで行き作業デッキが降ろされました。話し声を聞くと船内との出入りも確保したようです。

 船尾デッキではガフブームの操作盤に7人が取り付き上を見上げてクレーン操作を始めます。

 あたくしの後ろではアリスさまが客室乗務員員16人を相手に説明を始めました。


 ネドル支店の荷役担当をクロが手伝い、食料資材を小型トラク5台で運んで来ました。

 すでにカゴに分けて積まれていて、すぐに吊り上げられました。

 ガフは補助マストの後面にある大きなハンドルで振るようで、グルグル回す勢いとは対照的にゆっくりと荷を振り出していきます。手すりを越えると荷を下げ始め、船尾のレールガンを越えるとさらに下げていきます。


 その間にアリスさまは船内へ客室係16人を連れて入って行きました。


 下ろし終わったところでミットさまが船尾デッキに跳び何か指示しています。

 それからはガフの動きが速くなりました。

 作業デッキからもミットさまの声が聞こえますから何か指導があったのでしょう。


 見物はこれくらいにして、あたくしも船内の仕事を見にいくとしましょう。客室整備はメイドの本領でございます。


 アリスさまは1等客室から船内の案内を始めるおつもりのようですね。あたくしも付いて参りましょう。2等、3等と見て船尾のトイレとシャワー室。その一角に洗濯室。ここはお客さまがご自分で衣類を洗濯される設備だそうです。


 有料あるいは業務として行う洗濯室は左舷船首にあるそうで、1階の周回通路前方にある跳ね上げハッチからの出入りができます。リネンエレベーターがブリッジの左舷側にあってバーからの出し入れと多少の収納が可能だとのこと。

 とそこでアリスさまから指示が参ります。


「シロル。調理担当の6人が2人ずつ補助を連れてきてるから、右舷の厨房に行ってもらっていいかな?」


 18人ですか。あの厨房に入り切るでしょうか?


「場所と貯蔵庫、船室の案内をして、レストランの厨房で実習して頂きますが、宜しいですか?」

「あー、狭いか。シロルに任せるよ」


 渡り桟橋を戻るとネーリスたちが12人の子供を連れて待っていました。12、3歳くらいでしょうか。


「おはようございます。手伝いというのはその子達ですか?」

「はい、シロルさん。わたし達の妹や弟です。近所の子も混じってますけど、よく言い聞かせてあります」


「これは、まず覚悟をお聞きしないといけませんね。

 このお仕事には商会からお給料が出ます。ですが言うことが聞けなければ辞めさせられます。特に船で出ている場合は海に放り出されるかも知れないのです。

 決して嫌なことを無理にさせるわけではありませんが、大変に厳しいのです。それでもこの仕事を覚えたいというのですか?」


「姉ちゃんみたいに美味しいものを作るんだい。仕事の時はわがまま言わないからやらせておくれよ」

「うちは姉ちゃんしかいないんだ。あたし達も連れて行って。いい子にしてるから!」

「ぼくんちはみんな船に乗るんだけど、まだ子供だからって乗せてもらえない。船の手伝いって聞いたよ。料理なら尚のこと役に立てるんだ。どうしても行きたいんだ。にいちゃん達も乗るって言ってた」


「皆さまは広いとは言えない船内でひと月過ごすことになります。晴れた日ばかりではありませんし、危ないこともあると思います。辛いこともたくさんあります。それでも行きますか?」

「「「「「行く!」」」」」


 皆さまいい目をしています。未来を見ているようにあたくしには見えました。子供は希望。そんな言葉がどこからか浮かんできます。


「では船の厨房へ案内します。付いてきてください」


 あたくしは船内へ入り横断通路から1階へ降ります。右舷船尾のハッチを開け

「珍しいものがたくさんあるのは分かりますが、よそ見をすると海に落ちますよ。ここから降りて下で待っていて下さい」


 皆さまを先に下ろして降りて見ると作業デッキへのハッチが開いていました。男たちが食材を運び込む威勢のいい声が聞こえています。

「そちらの通路を進んでください。厨房は4つ目のドアです」


 ゾロゾロと進む列に付いて行くと先頭がドアを開け厨房に入りました。なんとか入り切ったようです。あたくしは入り口から顔だけ入れて説明します。


「この人数ではなんの作業もできませんね。調理道具はレストランと同じものが用意されています。出来上がったものはそこの配膳エレベーターでお客さまに出されます。使い終わった食器も逆に降りて参ります。右の奥には船員のための配膳口があります。その向こうは船員の食堂です。

 食材は今来た途中のドアが冷蔵庫や貯蔵庫になっていますので、そちらから出してきて使います。では船室を見に行きますよ。付いてきて下さい」


 さらに船首へ向かって進みます。

「ここが船員の食堂です。狭いですが12人くらい座れますね。次が船室。一つに4人入ります。突き当たりがトイレとシャワー室です。数がないので交代で使います。このハッチから下へ行きますよ」


 下へ降りるとこちらも灯りで照らされ、暗いところなどありません。この階の船室はドアがありカギが掛かるようですが、2段の寝台が1列に並び60セロの棚板が向かい側に作り付けになっています。8つの椅子にも使えそうな箱がその下に並んでいました。広いとは言えませんね。


「あたくしがいただいた船室割り当てでは、あなた方は船首から5部屋を使うことになっています。寝台が二つ余りますが、共同で荷物などを置いていいそうです。何か質問はありますか?

 では、海底の厨房へ移動します。手伝いと言っても何もできないのでは役に立ちませんので、夕方まで特訓です」


 そのまま船尾まで通路を進んで船尾から登って海底レストランの厨房へ向かいました。

 オウラ達にそれぞれ連れてきた子達の指導をさせて基本を叩き込みます。ナイフの持ち方、イモの皮むき。ざるの使い方、野菜洗い。冷蔵庫から食材を運んで、切り分けてもらった肉の筋切り。

 お昼にはそうやって下拵えした炒め物を皆さまで食べてもらいます。


 午後はお魚料理です。小さな頃から見慣れた魚だけあって皆さま捌き方はご存知のようですが、うまく刃物を扱えない様子ですので、基本のまな板上での押し引きで切る練習をさせます。

 皮や骨の部分が切りにくいのでみっちりとやってもらい、美味しいあら汁を作りました。


 お片付けと食器洗いの後、鍋と作業台、シンクに加熱器までしっかり磨き上げます。


「明日は出港です。家に戻ったら着替えなど、自分の持ち物をまとめて下さい。持ち物はバッグに一つです。あまり大きいバックはダメですよ。今日見た箱の椅子を覚えてますか?あれ一つに入るくらいまでです。朝は大人たちと一緒に船まで来てください」


 エレベーターに乗って海上に戻るとアリスさまも初日の訓練は終わったようで、ジョーヨーやトラクの送り迎えが始まっていた。子供達も荷台に分乗して村に帰って行った。



 トラクに戻ってお風呂と夕飯の後のいつもの会議です。


「ケドルがこっちに残るから、船に乗って長いネモスがネドル村のリーダーで行くって言ってた。でね、あたしに船長をやれって言うんだよ。ネモスは副長だって。漁の方を主に見るって言ってたよ」

「あー。いーんじゃないー?あの船っていろいろ今のと違うからねー。帆の使い方はもちろんだしー。ジェットだっけー?水噴き出して走るヤツー。あれ楽しみだよー」

「呑気なこと言ってるけど、あんた漁と保安の班長だからね?」

「へー、まんざら節穴でもないねー」


「シロルはメイド長だからね」

「はい、お任せ下さい」

「そーするとシルバはナックの相手でー。クロミケはー?」

「あいつらでっかいんだよね。置いてって畑でもやってもらおうか?」


「そうだねー、使いたくなったらあたいが迎えに来るよー。それよりさー、船室はどこにするー?」

「あたしは2等がいいかな?船長特権で、働きのいい人を1等客室ご招待5日間。とか?」

「まるきりお客さん役がいないと客室係が困るよー?」

「客室に定員72人だけど今回の乗組と一緒だからね。でも全員上にあげるのもなんか違うと思うんだ」


「半分交代ってのも移動がめんどくさいよねー。やっても10人くらい?」

「ハイエデンとかからお客さんを連れて来る?ミットの転移で」

「連れてきたい人はいっぱいいるねー。ジーナとか、喜んで運んでくれそー。でも食料がたりなくなるー?」

「それも最悪運んじゃえばいいよ。漁もするんだし」

「どっちにしろ、少しさまになってからだねー」


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