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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第14章 海上交易‬
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2 海上交易 ネドル支店2

 これまで:アリスはケドルをトリスタンまで案内して食材を買いつけた後、食堂でどんなサービスをするのか実地にみせた。

 アリスは復路、ケドルにこのチューブ列車についてあらましを話した。


 ネドルに着くとケルヤークからのアルミ満載の輸送トラクが5台待っていた。良い感じに貯蔵庫の中が冷えていたので、荷車の食材を貯蔵庫に移すのはクロミケにお任せでも大丈夫。この食材は練習用だ。本番前にはトリスタン支店に発注書を書いて、輸送トラクが配達してくれる。

 美味しいものも食べて欲しいしね。

 早速シロルが厨房の機材チェックと掃除を始めた。


 あたしはアルミを積んだ輸送トラクをエレベーターで地上にあげて島の角に下ろしてもらう。このトラクは自分で荷台を傾けて下すので、降ろし場所だけ教えてやればあとは世話がない。先頭車の運転手は女の人だった。


「お嬢さん、ここは良いところですね。わたしもここに移住しようかな?

 えーっと、アルミはこの5台しか配送トラクがないんで7往復します。注文量の610トンは明後日の午前中で運び切る予定になってます」


 アルミはまだあんまり需要がないからね。他にはシルバ隊のトラクを改造するくらいか。あいつらも忙しいんだろう。


「ここまでの出入りは見てたと思うけど大丈夫かな?」

「大体わかったよ。分からなかったら誰か捕まえて聞くから良いよ」


 そうは言っても初めて来たのだ。聞く相手だってこれから教えるんだし、乗り場まで説明しながら戻ってお見送りした。ケドルもついて来て、一緒になって聞いていたね。


 さて、厨房の掃除はシロルに任せて食堂の掃除をやってもらおうか。


「ミット。聞こえる?」

『んー?アリスー?なんかザカザカ言って聴きにくいねー。どーしたのー?』

「海底からだからな?レストランの掃除を始めたいんだけど何十人か回せるかな?」

『んー?掃除ー?いーよー、適当に連れてくー』

「お願いね。切るよ」


「いま村から人を呼んだからレストランの掃除をさせてちょうだい。テーブルや椅子、床や壁も水洗いして全部拭き上げるんだよ?」

「水はどうすれば?」

「シロルに言っておくよ。あたしは下の支店の設備をしてるから。あ、冷蔵庫の掃除もさせてね。寒いから交代で」


 次は階段を作ろう。レストランの入口手前の左側。この壁に降りていく階段が作れないかな?デンジバを見ると銅線の束が2本埋まってる。マシンで束を一旦露出させて、トラクから箱紐(デンシブヒン)を持ってくると、不足分を延長して降り口を確保した。あとは海水が入って来ないように壁厚をたっぷりとって、下へ向け階段を作るだけだ。


 その間にシルバが50人くらい連れてやって来た。ケドルが声を張り上げ、掃除道具を配っているけど、こんな海底ドームなんて見るのはみんな初めてだから、動き出すまでしばらくかかった。

 それでも女衆を中心にテーブルの水拭きが始まると、男衆が床や壁を洗い出した。


 あたしの方はまだ階段ができてないけど、そこは放っといてエレベーターで下に降りる。

 車両通路を6メル確保したらその先に階段が降りてくるからちょうど良いかな。

 まずはエレベーター前から冷蔵庫まで車両通路を仕切ってしまおう。これで売店と輸送トラクの運搬路を区分することができる。


 売店は手前の柱の前で区切って奥は倉庫と事務室かな。陳列台と会計カウンターを作っていったんだけど、トラクの木質(セルロース)を使い切ってしまった。棚や平台が寂しいのは後で考えよう。


 レストランに上がってみると厨房はピッカピカ。フロアはまだ掃除の真っ最中だね。シロルが見当たらないので冷蔵庫を見に降りると、中で食材の物色をしていた。手押し車を持ち込んでいろいろ載せている。ここの掃除はまだ手が回ってないんだね。


 エレベーターで海上へ出ると穏やかな風が吹いている。日はまだ高い。


「ミットー。そっちはどうかな?」

『午前中に水揚げした魚の処理を見てたよー』

「いまエレベーターで上がって来たんだ。ちょっとそれ見たいね」

「『あいよー』」


いくらも間をおかずパッと脇に現れるミット。

「『いくよー』」


 村の集会場のような大きな建物の中、30人ほどが床に並んだ板の上で魚を捌いている。

 その脇では大鍋に湯を沸かし、切り離された頭やヒレを集めては、片端から煮えたぎった湯に放り込む。おかげですごく蒸し暑いがあまり気にしてないようで、薄く削いだ切り身をザルに並べている。


 角にある燻製炉の壁が大きく開かれ、切り身を載せたザルが幾層にも重ねて差し込まれていく。そばに足場が用意してある所を見ると天井までぎっしりと入れるのだろう。


「鍋は海水を薄めて沸かしてるらしいよー。この後すぐ食べちゃう分だってー。

 燻製は3日くらい(いぶ)すっていってたねー」


 魚の解体を見るともうほとんど終わりになっていて、何人かが片付けを始めた。


「3日も燻したら随分固いんじゃないのかな?」


 近くでザルを運んでいたおばちゃんが教えてくれた。


「へえ、でも日持ちさせるんでそのくらいは。そのままだと噛み切るに一苦労します。お湯で戻してから刻んで、葉物といっしょに食べるです」

「硬くなっちゃったのは薄く切ってあげるといいんだよ?」

「はあ、固くてそこまで薄くなんてできませんです。ほら、こんなですよ?」


 渡された燻製はすっかり飴色でいじけたように捻れ、確かに硬そうだ。

 あたしは腰のベルトからナイフを抜き、台に燻製を当てがうと薄く削ぐように切ってみた。最後の方は小さくなり過ぎて押さえられないのは仕方ないけどかなり薄く切れた。おばちゃんは感心してみている。


 あたしのナイフを柄の方を向け差し出し

「これでやってみて」

「へえ」


 やらせてみるとうまく切れるようだ。ミットが手を伸ばして薄くなった燻製を口に入れた。


「美味しいけどちょっと味が濃いねー。たくさん食べると喉が渇きそうだよー」

「こんなに薄く切れるんですね、良いナイフです」

「そーお?そのナイフで良ければ何本か作ってあげるね」


 燻製も悪くはないけど、船着場をエレベーターのそばにもう一つ作って、冷蔵庫へ水揚げした魚を運べるようにしたほうがいいね。大きな遊覧船用の桟橋も欲しいな。それにしても行き来が不便だ。


「村からエレベーターが遠いから、移動手段がトラクとミットの転移だけじゃ不便だね、ジョーヨーを何台か送って貰おう。小さいトラクも要るかな?」

「あたいがガルツに言っておくよー。5台ずつもあればいーよねー?」

「当面は十分だと思う。ついでに木質(セルロース)も1台追加をお願い。トラクに送ってもらっていいかなー?」

「あいよー。じゃ、先にやっちゃうー」


 トラクは冷蔵庫前に置いてあったので、まず薄刃のナイフを5本作ってからシロルを探す。シロルは上の厨房で6人のお姉さんたちを相手に調理器具の説明をしていた。

 フロアの掃除が止まっていてみんなテーブルに着いて、多分シロルが用意したのだろう、お茶のカップと軽食を頬張っている。


 あたしはフロアの掃除具合を見て回った。 ドームと違って床やテーブルは埃がこびり付いていたようで、排水の流れが悪くなっている。分解マシンを少し入れてあげた。マシンは滑りや泥を互いにくっつきにくい微粒子にしてくれる。

 排水口は厨房も含めて全体で20箇所あった。この人数でやっても1日じゃ終わりそうもない。


 ナック坊やを抱いたミットがドームに戻って

「外はもう日が暮れるよー。あとは明日にしなー。シルバ、上まで送ってやんなー」

「はい、ミットさま。皆さん、エレベーターで戻りますよ」


「シロル、どうだった?」

「はいアリスさま。ミルク専用の泡立て機がございます。冷凍庫もあるのでアイスクリームが作れますよ」

「アイスクリームって氷菓子とは違うの」

「はい、クリームを泡立ててから凍らせるので口溶け食感が滑らかです。いろんな味付けができますから美味しいですよ?

 あとは小型の製麺機もありまして太さをほぼ自由に設定できますね。もちろん一通りの調理道具は揃っていますので大概のものは、ここで調理してお出しできます」


「アリスー、シロルー。晩御飯にしよー。魚の

燻製とあら汁少しもらって来たよー」

「ナイラ達が練習で作った料理は持たせましたから、ミットさまのお土産で何か考えましょう。トリスタン市場の肉料理もトラクにありますよ」

「「わーい」」


   ・   ・   ・


「アリスさま、おはようございます。今シルバが対応しておりますが、ジョーヨーと小型トラクが5台ずつペタ班が運んできております。

 小型トラクには木質(セルロース)が満載で、うち2台は支店エリアに下させています。車両は全て海上のエレベーター脇でよろしいでしょうか?」

「またあいつら夜っぴて走ってきたのか。とりあえずそこでいいよ。後で駐車場を考えないとね」


 海上まで上がってみると、昨日のうちにアルミが5台届いて山が大きくなっていた。このままではどんどん広がってしまうので、1メル角のブロックにしておいてミットに積みあげて貰おう。

 手摺沿いの遊歩道を穏やかな海面を見ながら潮風を堪能してお散歩。帰りは森に沿って晩秋の草花を見ながらエレベーターまで戻った。

 シルバが運び込んだジョーヨーや小型トラクを整列させていた。


 トラクに戻ると朝食の用意はすでに出来ている。ミットはまだ夢の中。ナックが目を開けあたしの顔をぽかんと見た。


「ナック。おはようー」


 ニコっと笑ったナックがミットのお腹に飛び乗った。お尻をドスンとばかりに落とす。


「グエッ」


 淑女(レディ)らしからぬうめき声と共に上体を起こすミットの動きにベッドから転げ落ちそうになるナック坊や。あたしは咄嗟に抱き止めた。


「マー、メッ!」

「ほら、ミット、ナックが起きろって言ってるよー」

「あー……もう。こんな乱暴な起こし方するなんて。誰に似たんだ?」


 それあんたがガルツさんにやってたやつ、って喉まで出かかった。

「さっさと起きなよー」

 そう言ってナックをミットの膝の上に座らせるとミットがギュッと一つ抱きしめた。どうやら起きる気になったかな。


「ペタ班が注文したジョーヨーやらを配達してくれたよ。上でシルバが整列させてた」

「また夜中に走って来たのかー、見境ないねー」

「こっちは話が早くて助かるけどね。木質(セルロース)もきたし」

「それって何台で走って来たのよー?」


 戸口からシルバが入って来て

「ミットさま、5台です。ジョーヨーと荷台に 木質を満載した小型トラクを積み合わせにして、ちょっきり8メルとは参りませんが、問題なく運んで来ております」

「はあ、よっくやるよー」


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