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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第12章 トリスタン‬
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4 サーバー2・・・ミット

 これまで:初日に見かけたおかしな3つの丸の調査を始めたアリスとミット。巨大なサーバルームと交換部品の倉庫のようなものを見つけたが。

 朝は屋台の仕込みとニコラスたちの部屋の準備で潰れたー。シロルは屋台を少し手伝うと言ってた。


 午後になってやっとアリスと二人で草地の地下施設探検だ。昨日と同じ装備で直接最上階の倉庫っぽい場所へ直接転移した。


「これって螺旋(らせん)階段に対称に部屋が並んでる感じだよね?廊下に戻ってこの隣を見てみようよ」

「うんいーよ。でもここって壁一枚じゃないかなー?」


 左の間仕切りを叩いてみると音が良く響く。あたいは鉄剣の柄に手を掛けた。


「斬ってみるー?」

「切れる材質かってのにも興味があるね。やってみようか」


 よーし。まずは一番剣速の乗る唐竹割。んっ?何だこれ?手応えがまるでなかったよ?叩いた感じじゃそれなりに硬かったんだけどなー?

 刃先で軽く突いてみたらパスッと刺さる。そのまま押しながら下げるとスーッと切れていく。


「何だこれ?」


 あたいは剣を収めて板に前蹴りをかました。

 ドカッ、パリーン。簡単に隣への通路ができたよー。気を取り直して棚を見るとおっき目の箱があるねー。


「アリスー、これ」


 箱を開けると黒い50セロ角のおっきなサーバ。同じものが3個あった。

 右手のロッカも順に開けてみると、二つ目の一番下にボタンの箱があった。

 ふとロッカの上が気になった。体を60セロ、ジーナに教わった浮遊術で持ち上げて灯りを掲げて覗いてみた。隅っこになんか小さいのがあるね。(つま)んでホコリを(こす)り取るとマノボタンだった。アリスに渡す。


「ずいぶん古いボタンだね。ちょっと変だけど生きてるよ」


 そう言ってアリスはポケットにしまった。


 棚はガラガラなので他に見るものはない。

 ここの大きな出口はやはりハンドルが動かない。けど気が付かなかったつまみがあるね。カチャリと回すとレバーが動いた。


 ドアを押し開けてみると向こうと同じ棚だらけの部屋。棚は一回り大きいけどやっぱりガラガラだ。扉を半ば閉めて取手を見る。

 やっぱりつまみはついていない。取手を回すと三角が引っ込んだ。ふうん?アリスがその三角を(つま)んで上下に動かすと、カタカタと遊びがある。押し込むとスッと引っ込んだ。離すと出て来る、よくできてるねー。閉めるとこの取手を動かさないと押されても開かないんだ。

 つまみを回すとカチャリ、四角い棒が2セロ飛び出した。こっちは遊びがほとんどなくて、押しても動かない。カチャリ、カチャリ。

 ドア枠の方を見ると四角い穴が二つあって鉄板が(はま)っている。上の穴は三角が、下の穴は四角が入るのかー。

 あたいが昨日切ったのはこれだったんだー。


 おっと、今欲しいのはドアじゃない。

 ドアの影にはおっきな箱が見えた。結構残ってたねー。下の箱はボードだね。

 そばへ行くと中段におっき目の箱と小さな箱。上の段にも小さい箱が載ってる。

 おっきめの箱は机に載ってるとこをいくつも見てきた黒い厚板。ずいぶん厳重に箱との隙間を埋めてあった。透明の袋から出すと切れ目がある。剥がすように持ち上げると蓋が開いた。下には記号が書かれた小さなタイルが並んでいる。何だこれ?小さいのは昨日見た小さいサーバだろう。

 上の段の箱は9個。下へ下ろして中を見ると小さな四角い箱紐(デンシブヒン)が入っていた。これもよくわからないね。


「なんかね、センサだって」

「何をするものなのー?」

「さあ?マノさんが相変わらずごちゃごちゃ言ってるけど分かんない」


「ふうん?まーいーけど。アリスー、手押し車つくろーよ、この棚、横倒しにして車輪付けてさー」

「あー、そうだね。ちょっと持てる量じゃないもんね」

「あたいはこっちに残ってる箱を集めて来るよー」


 箱の残っている棚へ跳んで、箱をチョンチョンと触って回り次の棚へ跳ぶ。1度で残ってた箱が全部回収できちゃった。木質(セルロース)と比べたら軽いからかなー?

 戻るとアリスは手押し車に床を張っていた。車輪はもう付いてるね。


「アリスー。この向こうってやっぱりサーバの柱ばっかりなのー?」

「こっちは見てないけど向こうの端は机と棚があったよ。最初のと同じ感じで」

「ふーん、じゃあ次は向こう端でいいね。

 あー、真ん中の部屋ももう少し見たいかなー」

「えー、何で?」

「なんかね、見たのが下っぱとちょっとえらい奴の部屋だけなんだよ」

「そうなの?こんだけの施設で?」


 アリスの作業が終わったので箱を積み込んで押して行く。廊下に出たので最初の角の部屋を覗くとやっぱり箱紐(デンシブヒン)の物置部屋だった。


「うわ、なにこれ?ドアの前まで壁になってるよ?」

「この裏もそうだったよー。もう箱紐(デンシブヒン)に困ることはないかもねー。あたいがここに取りに来ればいーんだものー」


 そっとドアを閉めて次を開ける。


「ほら、ただ寝るだけって感じでしょー?」

「ああ、ベッドと机と椅子……だけだね」


 廊下をズンズン進んで階段がここでしょ。次を開けるとちょっと広い部屋。ベッドと机、椅子もちょっとしっかりした作りだね。壁にかかったおっきなボードは幅1メル半、高さ1メルもある。


「比べるとちょっと立派な感じはあるね」

「小部屋は数えてないけど、この部屋は10個だねー。もっと大きな部屋がどっかにあるのかなー?」


 一応残り4部屋を覗いたけどみんな一緒だった。向こう側の倉庫にそのまま突撃だー。


 結果から言うと荷物がほぼ倍になったけど、新しい発見はない。アリスと荷車を持ってトラクに跳んだ。休憩がお手軽にできるのはいいねー。



「シロルー。休憩しよー」

「あら、おかえりなさい、ミットさま。すぐにお茶を用意しますね」

「アリスもおいでよー」

「うん」


 ミケがテーブルセットを出してくれている。用意ができたので椅子に座るとシロルもトラクからお茶セットを持って来た。

 アリスが見てるのはあたいが隅っこで見つけたボタンだねー。


「そのボタンがどーかしたー?」

「うん、これも誰かに使われていたボタンでさ、記録の読み出しができるらしいよ」

「ふーん?で、どうするの?」

「シロル、あの施設で使っていた大きなサーバが14台あるんだけど、このトラクで使えないかな?記録をできるだけ(まと)めたいんだけど」

「そうですね。少し調べてみましょう」


 シロルが遠い目をした。


「そちらは[にい]ですね。ガルツさまがお持ちのものとは違い、検索に反応があります。箱入りの[さん]がございましたから、あれを一つあたくしに頂いてよろしいでしょうか?」

「1個でいいの?」


「はい、十分です。アリスさまも、この機会にもう一つ持たれてはどうでしょうか?」


 アリスはマノさんと相談してるのかなー?

「ねえ、どーする?

 ……はっきりしないねー?使うの?使わないの?……そーいやいーんだよ。ったくー」


 あたいがボタンとおっきなサーバを持って来ると、シロルは耳を出して右耳の根元に押し込んでいた。アリスは襟裏に並べて留めた。


「あたくしがまず欲しいのはあの大きなサーバーの設定に関する情報です」

 そう言いながらおっきな箱からサーバを取り出す。袋入りのままテーブルに置いて、箱の底から薄い紙束を取り出した。1枚1枚じっくりと読み込んでいるようだねー。あたいも横から覗いてみた。読める字が1個もないよー!


「シロルー、これ読めるのー?」

「はい、翻訳作業をしながらなのでどうしても時間はかかりますが、読めますよ。ですが、情報が足りないようです」


 そう言ってトラクから出してきたのは最下層で見つけた黒い部品の塊。たくさん付いている紐から3本束のを選んで、先を片手で器用に分けて(つま)んだ。


「これは何も入っていませんね。記録用にはいいですが」


   ・   ・   ・


 今日も朝から楽しい探検だー。

 トラクから階段部屋に跳んで来たあたいたち3人は螺旋(らせん)階段で下へ。

 真っ暗な広いフロアだ。縦棒はアリスが外した。灯りをかざすとポツンポツンと箱型のものが見える。


 その一つへ近づいていくと角に丸みのある四角い箱。50セロくらいの車輪が4つ付いている。色は黄色で高さは3メルほど1メルから2メルの高さにぐるっと透明な窓がある。長さは5メルくらい、幅は2メルだね。中に椅子が6つ。入り口はどこだろ?

 左側の真ん中2メルが横に動くようだ。取手を引くとドアが浮き上がって後ろに動くようになった。前にボードが一つある切りで運転台がない。


「これってジョーヨーみたいなものかなー?」

「6人乗りの箱型ジョーヨー?」

「うん、こっち向いてるってことは出口は向こうだね。倉庫の下は出入り口みたいだねー」

「でもずいぶん間が空いてるね?出払ってる?」

「下はあんなにぎっしりだったのにねー」

「ぐるっと回ってみよーか?」


 前へ見て行くと色が違うだけで同じ型の車両だね。突き当たりの閉鎖された出口からを左へ回って行くと、なんかこのジョーヨーおっきいね?中を覗いて見ると椅子がゴツイ?


「椅子の間隔も少し広いねー。ちょっと豪華(ごうか)版かなー?」

「ミットさま、後ろのはもっと大きいです」

「大きいのはそっちの2台だけみたいだね。それよりミット、そこの壁の向こうってどうなってるのかな?」


「おー。出っ張ってるねー。そこの小さい壁ってドアっぽくないー?」

「でも取手がないよ?んー、穴があるね」

「マシンに中を見てもらおーよー」

「それしかないかー」


 アリスが穴とそのそばの隙間を(こす)ってる。


「ん、抜けたね。カメラと灯りを入れるよ」

「なんか普通の玄関っぽいねー。これだけわかれば跳べるかなー?行ってみるねー」


 こっちには取手がついてるんだ。あれ、回らない、これかな?

 (つま)みを回すとガチャリと手応えがあった。


「アリスー、シロルー、お久ー」

「ミットの転移が一番(ずる)いかもね」

「何言ってるかなー。誰かができないことを他の誰かができるからいーんじゃないのー?

 一人で何でもなんて無理だよー。頭爆発するぞー」

「で、中はどうなってる?」


 あたいが頭上に灯りを(かざ)すと、奥のドアは開いていて飾り棚と座り心地の良さそうなソファが見えた。


「部屋っぽいね」


 奥へ進むと小さな流し台にカーテンで仕切られたベッド、2メル幅のおっきなボードが壁に掛かってる。どれを見ても上の家具より立派だね。

 奥に四角い出っ張りがあるね、何だろ?

 ドアがあったので開けてみると椅子が一つ。角に上下っぽい印のついたタイルが二つ。天井が50セロも高い?


「この場所は上の机の並ぶ一角の真ん中になりますね。昨日の探索で椅子のない席が2つございまいした」

「上の椅子が降りてきてるってことー?」

「おそらくそうですね。この向こうにもう一部屋あると思われます」


 部屋の中を一通り見たけど良さそうなものって家具くらいだね。パルザノンやハイエデンまで持っていけばいい値段が付きそうだよ。

 ぐるっと向こうへ回って隣も調べてみた。おんなじ作りだね。違いと言ったら、衣装箱に女物らしい靴下があったくらいだ。


「向こう側にもきっとおんなじ部屋が二つあるんだろうね」


 次はもう一つ下がってみよーか。螺旋階段を降りて縦棒を外す。ここも(まば)らに箱型が並んでる。前に2本後ろに4本車輪のついたただの箱。人の乗るとこがないねー。前後左右に扉がついている。開けると中は一つの荷台になってるね。

 シロルが右後ろの角を調べているけどどうしたのかな?


「アリスさま、ここにロボトが一体おります。おそらく荷物の管理のために積まれているようです」


 シロルが小さなボタンの付いた取手を引くと細い人形が立っていた。身長は170セロちょっとありそうだけど、くすんだ銀一色でとにかく細い。あたいはなんとなく上が気になった。


 浮き上がって屋根を見ると

「アリスー。真っ黒のお日様発電が屋根にべったりだよー」

「へー、それはありがたいねー。お日様発電は材料がなかなか揃わないから助かるよ」


「うん。でもこれってトラクだよねー?ちょっと直したらそのまま使えるんじゃないのー?」

「それもいいね、やってみようか?でも外まで運べる?」

「あたいが運んぶんだと1日で2台くらいだよー?」

「じゃあ帰りに小さいのを頼むね。もう少しこの階を見て回ろうよ」


 トラクは30台くらいしか無かったよー。5メルから12メルまで種類があって、みんな右の後ろに管理用ロボトを積んでいた。ここは一通り回ったからお土産に5メルのトラクを1台持って教会にもどった。


 持ち帰った新しいおもちゃ(トラク)にアリスとシロルは夕飯の後から夢中になってるけど、あたいはあんな穴掘りは無駄が多くて納得できない。アリスに無理を言って穴掘り道具を作らせた。

 内寸3セロの筒を伸ばしながら地面にどんどん穿孔(せんこう)して行って、固い天井もそのまま突き抜けると、先に灯りとカメラが出るんだ。マノボードで中の様子が見られればあたいはそこへ跳べる。紐でカメラと一緒にマシンを回収して穴を潰して貰えばそれで後始末もできちゃうように頼んだ。


 アリスはマノさんとヤイノヤイノやっていたけど30メニくらいで(まと)まって、1ハワーくらいでアルミの筒を5本くれた。一回1本らしくて太さ4セロ、長さ8セロはちょっと嵩張るけどリュックのポケットに収まった。


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