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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第12章 トリスタン‬
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3 探検・・・アリス

 これまで:孤児が車列を縫って売り歩く夜食に興味を持ったミットが声を掛けた。教会にトラクを駐め、屋台をやって見る。話は公園用地買収から支店開設まで進んでしまい、片付くまでアリスとミットは忙しい日々だった。

 それでやっとお楽しみの探検に行ける。もうミットもシロルもワックワクだよ。

 シロルと3人手を繋いで立つ。


「いっくよー」


 ミッとの声に瞬きしたらあたしは空中にいた。緑の葉というにはなんとなく黄色っぽい丸が下にあった。


「随分きれいな丸だね。これ絶対なんかあるよ?」

「アリスさま、あちらの山も」

 そっちはちょっとだけ緑の濃い丸だね。

「あの草地も変ー。もうちょっと上に行っくよー」


 バッと風の音が変わり並んだ丸が小さくなった。ほんとに綺麗な丸が三つ並んでいる。それぞれに性質も違うみたい。なんだろね?


「草地の方からみよーか?」

「そうですね。見晴らしはよろしいですから」


 風の音が止むと同時に草の上に立っていた。草丈は膝の半分。綺麗な緑の細い長い葉っぱが風にゆらゆらと(なび)いている。ぐるっと見回したけど他の種類は一本もない感じだ。


「毒は無いから食べられるね」

「あまり柔らかそうではありませんよ?」


 一枚葉を(むし)って見ると確かに硬い。

 ミットが下を向いてジーっと地面を見てる。


「なんかあるの?」

「いっやー。分っかんないけど、なんだろー?」

「なんか埋まってる感じ?掘って見る?」

「うーん。埋まってるならきっとでっかいよー?この丸全部ー?」

「じゃあ、端の方をぐるっと歩いて見ようか」


 この丸は直径が500メル。これ全部というなら随分大きなものが埋まっている。

 草地の端に沿って3人で歩く。あたしとシロルは周囲の警戒、ミットはしきりに首を振りながら下を向いて歩く。3歩ほど外側へ寄った。

 10歩歩いてもう3歩外側へ。また首を傾げる。そのまま50メル弧を描いて歩く。一度止まったがまた歩き出す。更に200メル。


「よく分かんないけど、ここに印をしよう」

「プロット」


 シロルが(つぶや)いた。

 二人で顔を覗き込むと


「大丈夫ですよ。ほら印をしました」


 見せてくれたマノボードにはミットが歩いた跡が赤い線で書いてあった。その線の端に赤い丸がピコンピコンというように点滅している。


「まあ、シロルだしねー」


 ミットがそう呟いて、また下を向いて歩き出した。300メルで足を止めた。ところどころ止まるものの、ぐるっと一周して結局あの場所へ戻る。


「うん。掘るならここじゃないかな?」

「穴はどのくらいにする?」

「そーだねー……分かんない」

「あたしが3メルの輪っかを沈めるから中の土を出してくれるかな?」


 ミットの印を中心に5セロ厚の円筒を下へ向けて伸ばしていく。2メルで内側のマシンが何か硬いものに当たった。円周の1/3をそこで止めて外側に再配置して更に下げていく。シロルが筒の絵をマノボードに映してミットに見せてるね。壁はまだ下へ続いている。10メルを超えた。どんだけでっかいの?


 22メル下げて一つ段があった。


「50セロくらい壁から突き出ている硬いものがあるね。一旦ここで土を出してみよっか?」

「うん。なんだろね。土はこっちに置くよー」


 ドドドドーー

 ミットが遠慮なしに掘ってるよ。土って落とすとこんな音がするんだね。

 掘った土が積もってすごいことになって来た。こっちに崩れて来ないように壁を下から立ち上げた。


「アリス、サンキュ」

 ドドドドーー  土の勢いが増した。


「お?なんかあるねー」

「20メルですね」

 2メルも上?


「ちょっと底を綺麗(きれい)にできる?」

「ん。こうかな?」


 壁から突き出る2メル角の白っぽい板?


「あの隙間から掘るのかー。見やすい場所へ降りるねー」


 ミットがさっきの板の上にパッと現れた。


「あー、こっち側にいたほーがいーかなー?ここに神経使う分、上は自信がないー」


 あたしとシロルは(あわ)てて移動した。この筒、もっと地面から突き出しとけばよかったね。今からでもやろうか。


「ミットー。ちょっと筒いじるよー。一回上がってー」


 言い終わらないうちにポンと目の前に現れるミット。


「どーしたのー?」

「正直に言うね。あたし、下を見るのが怖いの。だから筒をこのくらいまで上に伸ばして、絶対落ちないって安心したい」

「ふーん?アリスならそーかもね。やって」

「うん。ありがと」


 さあこれで安心だ。ミットが下へ跳び土が上がり出す。ミットの言う通り土の落ちる場所の制御が甘くなってる。上がり損ねて穴に落ちる土も結構ある。ミットが自分に当たる前に弾いているね。さっすがー。土はポスポスと山になった上に積もって行く。30メニ経った。


「ミットさま、休憩しましょう」


 言った途端、ミットがシロルの前にいた。シロルは平然と

「準備しますからお待ちください。クッキーを持って来てますからどうぞ」


 そう言ってお茶セットを並べ保温容器からポットにお湯を注ぐ。茶葉をそっと入れると残りのお湯を少量カップに注ぎ温めた。シロルの動きがそこで止まる。蒸らし待ちかな?

 シロルが動き出す。カップのお湯を捨て、ポットからお茶を注ぐ。ポットの高さを揺らすように変えている。多分、見ているのはカップの中のお茶の温度だ。決めた温度になるように空気に触れる時間を調整してる。

 シロルとの付き合いも長くなったね。仕草である程度分かるようになった。今日のお茶も最高だよ、シロル。


「いっやー。細かく調整するってつっかれるねー。あれでまだ1メル下がってないんだよー」

「ミットー、シロル連れて来てよかったねー」

「ほんとだよー。アリスと二人じゃここで帰るとこだもんねー」


「そーかな?ミットがへばって帰れなくなってるかも」

「んなことあるかーい。「あはははー」」


 あーだこーだとしゃべってミットは穴へ戻った。

 30メニ経って土が上がらなくなった。ミットが下を覗き込んでいる。どうしたのか?


 あ、消えた。どこ行った?辺りを見回すが居ない。

 と思ったら目の前にポンと現れ、

「下へ行くよ。シロルも」


 次の瞬間壁の前?いや、薄いけど線が見える。これ扉か?


「シロル、どう思う?」

「扉でしょうか?埋まっている理由がわかりません」

「あたしもだよ。これって開くのかな?」


 あたしは隙間らしい線に、マシンを塗り込むように(こす)って行く。ジワジワとマシンが隙間に入り出した。厚さ50セロ。マシンは向こう側へ抜けた。途中にゴムが2箇所。硬くなっていたので抜けるのに時間がかかったけど。


 マシンを組み替えて小さなカメラを作る。真っ暗だね。灯りを一つ。マシンは足りるかな?扉には頑丈なかんぬきが3本見えた。壊すと戻せないね。どうしたものだろ。

 マシンの追加をシロルに頼んで辺りをカメラで見る。ミットはマノボードに映る絵に夢中だ。灯りとカメラを操作して順に見て行く。

 何か大きな鉄の構造がそばにある。かんぬきを動かしてくれないかな?


「ねー、アリスー。この辺に穴開けちゃダメかなー?」

「あー、そういやそうだった。さっすがミットー。冴えてるー」


 馬鹿だねー。正面なんてめんどくさいとこに(こだわ)るなんて。


 カメラで穴の開けられそうなところを探す。横はどっちもダメだね。下は床だし、上は?天井は床から4メルか。鉄の構造材が3メルにあるね。


「シロル。この構造材の上ってこっち側だと、どの辺だろ?」

「はい。少々お待ちください。

 ミットさま、この上へあげていただいてもよろしいでしょうか?」


 シロルが指すのはミットが穴掘りしてた足場の上。首を傾げたミットがそれでも上に運んでくれた。


「ここですね」

 2メル角の(ひさし)のすぐ上、ちょうど真ん中だ。

 早速あたしは60セロくらいの丸をそこに描くようにマシンを塗って行く。


「まいっかー」

 突然ミットが言った。


「ミットー。あんたが頑張ってくれたから、ここに穴を開けたら良さそうって分かったんだからねー」

「ん」


 こんな短い返事は初めて聞くね。


 40メニ経って穴は貫通した。灯りを二つ放り込む。あたしはじっと中を見て、毒の心配はなさそうだねと思った。


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