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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第12章 トリスタン‬
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1 トリスタン・・・ミット

 チューブ列車の路線の旅は続く。どこも何某かの問題を抱え閉鎖に追い込まれているらしい。アリスとミットは全ての乗り場を復旧できるのだろうか。

         登場人物


 アリス 主人公 18歳 薄い茶の髪、白い肌、青い目、身長158セロの女の子。


 マノさん ナノマシンコントロールユニット3型


 ミット 17歳 孤児 濃茶色の髪、やや褐色の肌、黒い目、木登りが得意、身長168セロの女の子。


 ガルツ 工房出身 元猟師 その後兵士を3年ほどやっていた。日焼けした肌、赤黒い髪、青い目、身長185セロの大男。青ずくめの防具、楯と長剣が基本のスタイル。ガルツ商会の会頭


 シロル アリスの従僕 白猫ベースのネコミミメイド ロボト


 クロミケ アリスの従僕 クロとミケの2体 身長3メルのネコ耳ヤロー ロボト


 シルバ アリスの従僕 銀色ボディの執事 ロボト のちにミットの従僕 黒い執事服に白黒のねじり鉢巻を着用



 ナルクール  トリスタンの警備隊長


 カンズラール トリスタンの教会牧師


 ルイーダ   トリスタンの教会シスター


 トルクス、アイサ、レイラ トリスタンの孤児


 クレスハント トリスタンの市長


 *********************************************


       第12章 トリスタン


    1 トリスタン・・・ミット


 バクスト町を抜けて今日はトリスタンに向けて走っている。

 この先に左を流れる川に合流する支流が横切っていて、馬車一台がやっとの木の橋が架かっている。そこをどう渡ったらいいかでちょっと困ってたりするんだ。

 もう使わない木の橋は洪水になると邪魔(じゃま)なだけだから片付けたいけど、あれだって誰かがお金を出して架けたんだ。

 勝手に壊していいものでもないだろう。なので少し右に10メル幅の橋を架けることになった。古い橋はそのままにしておくよー。埋め土は対岸の荒地から持って来た。バクストの町がまだ近いからねー。


 道の傷んだところは直しながら進んで行く。

 途中で一泊して進むとトリスタンが見えて来た。大きな建物の影が(かす)んで見える。少し行くと一面の小麦畑だ。刈り取りの真っ最中だねー。見渡す限りの黄金色の畑を貫いて街道をトラクが走る。でも小麦を積んだ馬車に追いついてしまい、もうゆっくりとしか進めない。


「シロルー。トラクは任せていーかなー?あたいとアリスは空を散歩に行ってくるよー」

「あら、ミットさま、お退屈ですか?どうぞ行ってらっしゃいまし」


 アリスが見てる絵はマノさんを通じてシロルに見えるようにしたらしい。腰に剣を一本ずつ。赤い小さなポーチを持った。


 この街は1ケラル上空から見るとずいぶん(いびつ)な形をしてる。南北に逆くの字を描く山。その出っ張りを囲むように街が広がっている。外れの方は水路や道路に引き伸ばされるように街区が出入りして、見ていて面白い。

 くの字の突端が街の中心らしく、大きな建物が集まっている。


「ねえミット。あそこなんか変だよ?」


 アリスの指を辿った先にはまん丸の草っ原があった。ほんとだねー。

 街の中心から一段上がった高台にその草地と林らしい緑の薄い丸が二つ。あれって500メルはあるよ、なんだろねー?


「落ち着いたら見に来ようか」


 今日の目的は街の偵察だからねー。これだけおっきいと何があるのか楽しみだねー。

 中心部の40メル上空。歩く人の服装まで見える。建物のない一角は広場のようで花壇が連なり、屋台とベンチが並んで大勢がそぞろ歩く感じだー。


 えーっと、人のいない場所はどっかにー、あった。あそこの路地。


「わわっ、ミットー、降りるんなら先に言ってよー」

「ごめんってアリス。こっちに行こうー」


 アリスの手を引いて少し広い道に出た。裏口、通用口ばかりだね。馬車が入れる広さじゃないよー。

 見当をつけておいた広場へ向かう方向へ歩き出す。あたい達を見ている目が二人分?あー、あれかー。


「アリスー、アホがいるよー。そこの戸の影ー」


 お?後ろに3人かー、上手に隠れてたねー。


「ヒヒッ!いいところに来たね、嬢ちゃんたち!」

「シッ。おめえ、声でけえ」

「ふーん?漫才コンビ見てるとこを後ろから3人?」


 アリスは前だけじっと見てる。後ろはあたいがもらっていいってことだー。


「さあ、痛い目を見たくなければ大人しするんだな」

「やなこったねー。大体、5人であたいの相手が務まるかいー?」

「ふん(じば)れ!」


 3人が後ろから(つかみ)みかかってくる。アリスは前の二人の(もも)を針を飛ばし縫い付けた、その瞬間を狙い、あたいは3人の背後に跳んで並んだ2つの後頭部に蹴りを叩き込んだ。3人が(もつ)れて転ぶ背に、追撃の膝を落とす。手近な男の短剣(なまくら)を抜いて喉元に突き付けた。


「なんだってー?よく聞こえなかったねー。誰を縛るんだってー?」

「いや、ミットー。怖いから」


 アリスの突っ込みが来たけど、まあいーじゃない。5人を縛り上げ、無理矢理歩かせて行くとまた5人隠れてる。


「お仲間かい?」

「へっ、てめえもう無事じゃ済まねえぞ」


 ぱぱっと皆殺しが楽なんだけどねー。そう思いながら出てくるのを待っていると、でかいのが2人、前に現れた。またかい?

 アリスが行くようだね。


「おめえら、そこで何やってる。この恥(さら)しが」と武器を振り上げた2人の腕をアリスの針が縫い付ける。


 グッと(うな)ったところへ(もも)に針が突き刺さる。横合いから3人が短剣を抜き向かってくる鼻先を、あたいの剣がヒュッと抜ける。短剣の一本が小さな火花を飛ばし根元から切れて落ちた。あたいは刃を返さず3人を滅多(めった)打ちにした。

 めんどくさくなってるのはあたいも一緒だよ。短剣(なまくら)を全て回収してあたいは言ってやる。


「おい、アジトに案内しな」


 3人がボロボロになって転がってるのを見て6人は震える足で歩き出した。付いて行くと途中で3人。さっきと同じように峰でボコボコに殴りつけ先を(うなが)す。


「こ、ここです」

「先に入んな」


 ドアを開けた途端そいつは棍棒(こんぼう)で殴り倒された。あたいはドアを派手に蹴り開け見えた奥へ跳ぶ。アリスが縛った男を前に蹴り出すのが見えた。7人かー。3人を(みね)で殴ったところで残りがあたいに向き直ったけど、なんか忘れてるよー。

 ダン!とあたいが足を踏み込むとアリスの2本の針が2人の脹脛(ふくらはぎ)を縫い付ける。残る2人の剣を切り飛ばし、こいつらも峰で滅多打ちにしてやった。


 ドヤドヤと5人やってくるね。こんな(にぎ)やかに歩いてたんじゃ獲物が逃げちまうよー?


「武器を捨てろ!」


 一見するとアリスは武器を抜いてないからね。こいつらの視線はあたいに向いている。


「なんでかなー?」

「武器を捨てろ!」

「理由を言いな」

「抵抗すれば切る!」

「あんたにあたいが切れるかい?笑わせないどくれ」

「ミット。言われる通りにしよう」

「ふーーっ。アリスがそう言うんならあたいはいいよ」


 あたいは剣を床に放った。

 腰の鞘もベルトごと外され、アリスの剣も預かると言って外した。ゴロツキどもをロープ で縛り、あたいたちには抜剣した護衛が付いた。300メルほど歩き、詰所に案内された。あいつらはそのまま地下に連行され、あたいたちは2階の狭い部屋だ。

 武器ベルトは部屋の隅に置かれた。


「まず名前を聞こうか?」

「アリスです」「あたいはミットー」


「どこのものだ?」

「ハイエデンのガルツ商会」

「ハイエデン?それはどこだ?」

「東北東に2000ケラルちょっとかな?」


「何を言っている?誤魔化(ごまか)す気だな?」

「なんで?」

「おまえたち、密売人か?」

「何?密売って?商人だからいろんなものを売るけど?」


「ぬ。何を売った?」

「最近売ったのは橋?家も売ったね」

「あたいはこの間、蟹を売ったよ。生きた奴ー。それで野菜に穀物とお酒買って来たよ」


 あ、なんか頭、抱えたねー。


「あの路地で何をしていた?」

「何ってゆーとあれだけど、観光?おっきな広場に行きたかったんだー」

「こんな業物の剣を下げて観光だと?」

「そりゃあねー。旅に危険は付き物だからねー」


「なんであいつらに絡まれた?」

「それは向こうに聞いてよー。路地からわらわら涌いてくるんだものー。あたいちょっとキレちゃったよー」

「うん。あたしもイラっとしたよ」


 あ。また頭抱えたー。


「トリスタンにはいつまで滞在する予定だ?」

「さあー?来たばっかりだしねー。これから考えるよー」

「そうか。行っていいぞ。俺はナルクールと言う。ここの分団長だ。何かあったら言ってこい」

「ナルクールねー。またよろしくねー」

「またはない方がいいな。騒ぎは起こさんように頼む」


   ・   ・   ・


「ふいー。お泊まりなんかになったら、シロルに連絡が大変だよー」

「シロルは全部見てたよ。そう言う設定になってるし」

「あー。そうだっけー。アリスー、屋台行こー。あたい、お腹すいたー」

「うん。行こう。こっちだっけ?」

「そうそう。ほら見えて来たー」


「どこに行っても串焼きはあるねー。うん、いい匂い。おじさん、2本ちょうだい」

「はい、120シルだよ」



「うん、このタレ美味しい」

「ほんとだー。やっぱりいいねー、串焼き」

「ねー、あれなんだろ。肉をなんか削ってない?」

「スパイスの効いたいい匂いだねー。あ、パンに挟んで食べるんだー、へー」



「こっちに焼き菓子があるよー。甘い匂いがすっごいねー。よだれが出ちゃうよー」

「買ってみようか。6個入りの袋売りなんだね。

 お姉さん、ひとつちょうだい」

「はい。70シルです」



「おー、ふわっふわだねー。甘ーい!」

「うん、美味しいけど紅茶とは合わないかな?」



「ふう。なんかガッツリ食べたいねー。

 あ、なんかうどんっぽいねー。細いしスープも違うみたいだけどー。なんか赤いスープ?」


 お肉と野菜がたっぷり載ってるね、良いかもー。


「おっちゃん、これ二つー」

「嬢ちゃん、これは辛いよ?大丈夫かい?辛くないのもあるからこっちにしなよ」

「えーっ?辛いのとあっついの苦手ー。じゃそっち二つー」

「あいよ。ちょっと待ってな。180シルだよ。器は返してな」


 どんぶりに細い棒が2本。こんな棒で食べられるのー?うどんのときは棒の上が弾力のある板で繋がってたよねー。


 アリスが皮で棒の上繋ぎを作ってくれた。これなら食べられるー。もうちょっとして冷めたらねー。


「ふうーー、ふうーー。お、美味しいかも?」

「ふうーー。うん、しっかりした味だね。あち、ふうーー」


 いやー、美味しいけど時間かかったー。おっちゃんがあの上繋ぎに食いついたよー。

 あの2本の棒、(はし)っていうらしいんだけど、上手く使える人が少ないんだってー。

 作ったげよーかって聞いたら、2千セットで1万シルの注文をもらったー。


 そのあとは市場を見て服を見て。飾り物は色が少ないねー。あたいたちのキラキラ色の商品は売れそうだよー。


 広場で見窄(みすぼ)らしい身なりの男が一段高い場所に登って叫び始めた。


「このトリスタンは原初の街であーる。しかるに昨今の退廃(たいはい)は目に余るものがあーる。我々は誇りを持って周囲の町村を従えて行く義務があーる。こんなことではー」

「君は騒乱罪で逮捕であーる。大人しくしなさい」


 おやおや。あの制服はさっき見たねー。隣に立って見てた太い男に聞いてみる。


「ねー、さっきの人が言ってた原初の街ってなーに?」

「お?嬢ちゃん。俺に聞いてるのかい?

 俺も良くは知らないけど、このトリスタンは遠くに行ける乗り物の駅があったって言うんだ。で、トリスタンが最初に作られてその乗り物で広がっていったとかなんとか?」

「ふーん?それで原初ー?」


「ああ、聞いた話だけどね。なー、飯食いに行こうよ、そっちの嬢ちゃんも一緒にさー」

「あー。あたしたちお腹いっぱいなのー。ごめんあそばせー」

「なんだよ……滅多に見ない美人だったのに……」


「ねー、駅だってー」

「そう言ってたね。どこにあるんだろ?」

「この広場ってさー、妙に山に近いと思わないー?」


「あ。あの丸3つ?」

「なんとなくだけどねー。レクサスが似てる気がするよー」

「あー。悪魔に滅ぼされた街。あの古い地図じゃ山の近くが中心街で、そこにあの駅があったね。確かに似てるね」


「シロルはどこまで来てるー?」

「まだ結構かかりそうだよ」

「戻って交代しよっかー?あの甘いお菓子買ってって上げよー」


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