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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第11章 サイナス‬
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7 転移陣・・・アリス

 これまで:突然トラクの前方に転がり出た高音の岩はロックという怪物だった。放水冷却で対処するが苦戦するアリスにジーナとミットが大量の海水で一気に片付けてしまった。そこで手に入れたタングステンでジーナが何か思い付いたようで転移場所へ行く事になった。

 シロルとクロミケはお留守番だ。

 行ってみると広場はあの時掘り返したままだ。道は海側の山沿いにつけたから、ここは本当に行き止まりなんだ。

 転移は変わらずにできるらしい。どうやっているんだろうね。


「少し掘ってみようかの。あの大きな石は蓋ではないかと思うのじゃ。下に何かあるやもしれぬ」

「よーし、土を退()けてみるよー」


 ミットが20メルもある穴の底から10セロ皮を()くように、土を()いで左右へ積み上げて行った。一皮目で土の表面に所々光るものが見えた。


「ふむ、やはりの。あれは遮蔽材じゃろう。そのまま土だけ除いてみよ。あれを傷めるでないぞ。薄く()いで行け」

「あんな細いの無理だよー」

「形が分かればいいんですか?マシンでマッピングしてみるよ」

「そうだと思うがの。やってみておくれ」


 型取りだけなら、そう掛からないね。

 マシンを撒いてタングステンの表面を伝って潜ってもらう。マノさんにその動きを記録してもらえば細かいところまでデータが取れる。マシンは回収するのに地表へ戻るから、分からない部分は帰りに通って貰えばいい。マシンの移動時間だけなので10メニほどで終わった。

 それを元にタングステンの変形を始める。タングステン球をミットに15メル角の板にしてもらった。


「すっごいペラッペラになったよー?こんなんでいーの?」

「多分大丈夫だよ。やってみるね」


 タングステンの上にナノマシンを撒いて行く。マシンは出来上がりとなる上の方から網を作って行くので細いつのが一面に突き出て来た。横のつながりがパッと現れ、網目がババッとできて行く。網目は非常にゆっくりと持ち上がって、複雑になって来た。全体に四角い形だけどその中に大きな丸が突然現れたり。これは見ていて面白いね。

 1ハワー近く掛かって動きが止まった。早速ジーナが試しを入れた。


「ほう、いいようじゃの。やはりこれを地面に埋めて、(ゆが)まないように石の蓋をしたんじゃの。

 力を封じた石を周りに置いて通るものをヤルクツールまで跳ばしたと言うところかの。さてそうなるとどうやって行き先を決めておるのか?」

「てきとーに据えて、跳んでったとこに反対向きにもう一個置けばどーだろー?」


「そうじゃの。同じものなら同じだけ跳ぶのかも知れん。向きを同じにして新しいので跳んでみようかの」

「今出来上がったのは見本と同じ向きだから、このまま跳んでみてよ。ズレは20メル手前だよ」

「良かろう。行ってみようかの」


 ジーナが前へ歩き出しフッと消えた。あまりにあっさりと行ったので拍子抜けするね。

 本当にちゃんと着いたかなと言おうと口を開けたところへ、ジーナがポンと戻って来た。


「手前に20メルは当たりじゃの。右に50メルずれておったの。実に惜しいところじゃった」


 千ケラルでズレが50メル?あ。マノさんが照準の精度を二つ上げた。そんなことしても合わせるのは無理じゃないかな?


「使えることは分かったねー。トリスタン行きもやってみるー?」

「どうせなら村でやりたいがのう。距離が近過ぎやせんか。シロルさんがトリスタンまで400ケラルと言っておらなんだか?」

「そうだね。ちょっと跳び過ぎだよね。100ケラル跳べれば、楽しい旅ができるんだよ。形はそのまんまで小さくしてみようか?」

「構わんよ。いくらでも付き合うぞよ」


 大きさを半分にして見たけど跳ぶ距離は変わらなかった。むしろ跳べたことに驚いた。跳べる荷物の範囲が半分になったという事らしかった。

 マノさんの予想では4メル幅の道路の下に埋めるなら、5メル角の網でいい計算になるらしい。


「面白いのう。形を変えずに他を変えると言ったら太さかのう?」

「やってみよう」


 太さを半分にしてみた。ついでに大きさも5メル角で作って見る。さあどうなる?ワクワクするね。ミットとジーナさんが消えた。いくらもせずに戻って来てミットがマノボードを見せてくれる。


「出たのはここだねー。とんでもない山の中だったよー」

「相当近いぞ。200ケラルくらいかの?」

「えーっと。測るからちょっと待ってね。

 250ケラルだね。

 ……太さじゃなくて、ダンメンセキ……?100ケラルなら1/3くらい?

 それは細っそいね。やってみよーか」


 ひょろひょろの網が出来上がった。線は硬いけど網全体では触るとふよふよと動いている。


「おお。これはまた随分と頼りないのう。歪めないように埋められるかのう」

「穴に置いて水をかけながら砂で埋める方法があるらしいよ」

「そうかの。また行ってみてくるぞえ」


 すぐ戻って来たね。ボードで見ると96ケラル。


「良さそーだねー。トンネル作る分、儲けちゃったー?」

「どっかに距離で変わる形がなくて良かったよ。そんなのぜったい分かんないから」

「あー、それはお手上げだねー。うまく行ってホントによかったねー」


「ここはどうするんじゃ?ヤルクツールへはもう行かんのじゃろ?」

「そうだね。片付けちゃおうか」


 形はデータで分かるし古いのも、もう要らない。ミットに丸めてもらうと200キルの玉が2つ分になった。土の山を穴へ戻して見ると微妙に凹んでいた。石の板を砕いた時に減ったのかな。


「あとはホーシャセンの供給じゃの」

「あー。それがあった」

「ここから持っていったあの丸い石を作ればいいのじゃ。力の石を遮蔽材で巻けば良いのであろう?」

「まあやってみよーよ」


 滝の上の村長屋敷へ3人で跳んだ。マノさんが危険だと騒ぎ出すのでミットの袖を引いた。

 すぐに気がついてミットがホーシャセンを集めてくれた。


「おお、そうじゃった。アリスさんにはこれは毒じゃったのう」


 あの広場を囲うように埋めてあった50セロの丸い銀色の石が3つ、そこにはあった。

 3セロほどの小さな穴が一つ空いて、ぼんやり光っているのが見えた。


「むう、これはいかんの。強すぎる」


 そう言ってジーナさんが25セロのタングステンを伸ばし2つに被せてしまった。


「ワシらに伝わる力の鉱石もここまで強いホーシャセンは出さん。アリスさん、どうなっているのか見てくれんかの」


 あたしはマシンを銀の石に撒いて外殻から測る。


「中は見えないね。穴から入る途中でみんな焼けちゃった」

「そうか。闇雲(やみくも)にやって見るしかないかの。

 ミットさん。力の鉱石を取りに行こうぞ。

 と、その前にアリスさんを耕作地へ送るかの」


 フッと開けた所へ跳んだ。海の見える広い草地。前にトラクの通った跡があった。ミットたちはもうそこにいない。

 将来のことを考えるとここにも立派な3叉路(さろ)を作りたいけど、12メル幅の街道とトリスタン行きの分かれ道を作っちゃうと農地が随分減るかな。山からは圧迫感があるから離した方がいいよね。サイナス村は通ってくるんだし手前でいいか。

 出来上がりの道を考えながらぶらぶらと歩き回った。


 場所を決めたところへミットたちが戻って来た。50セロの大きな銀の球が3つ。30セロが一つあった。


「アリスー、お待たせー。ここにするのー?」

「ここを6メル角で掘ってみて」

「いいけどアリスの箱の方が丈夫で良くない?」

「そうかもね、丈夫な方が安心か」


 マシンを撒いて待っていると地面が四角く窪んでいく。厚さ10セロの壁に囲まれた深さ1メルの箱。

 その間に脇でミットが銀の玉を6メル角に広げている。さっすが分かってるねー。


「こっちはもう少し掛かるよ。(あみ)を作っちゃうね」


 マシンを撒くと細いツノが一面に生えて来た。見る間に横に繋がる線が次々に現れ、複雑な網目になって持ち上がっていく。何度見ても面白いね。


 穴が出来上がるとミットが網をふわっと持ち上げて箱の中へ下ろした。網の高さは40セロくらいなので結構下の方だ。上には道路を乗せるつもりだから深いんだよ。


「いいねー。じゃあどこに出るか、ちょっと行ってくるねー」


 ミットが一歩前へ出てフッと消えた。

 すぐに戻って来てボードを見せてくれた。


「出たのはここだよー。川のそば。うまく行ったねー」

「次はこれじゃな。あれよりは随分と弱いでの。近くに置いてみてはどうかの?」

「じゃあ適当に3つ穴を作ってみるよ」


 箱にくっつけるようにして囲むように3つ。こんなものかな。


 ミットがそれぞれ銀の玉を入れ、小さな蓋を外すと向きの調整を始めた。


「うーん、ちょっと弱いねー。行けそうな気はするんだけど。これだと一人跳べるかってくらいだから、もっといっぱい置こうか?」

「マノさんがなんか言ってる。ちょっと待ってね。

 ……ノーシュクー?トリチウムー?……シコーセイ?ホーシャセンをシューチューって?分かんないって!どうすればいいの?……これ容れ物の絵?中の形を変えるの?……へー、

 やってみるよ」


 まったくノーガキばっかりなんだから。


「この殻の中の形を変えてみるよ。こんな感じで作ってみて」

「わー、めんどくさそうな形だねー」

「仕上げはあたしがやるから大体でいいよ。中に鉱石を入れるのは大丈夫?」

「鉱石はねー、割と柔らかいんだー。ギュッと押し込めば詰め込めるよー」


 ミットがタングステンの球から外殻を作って行く。くるくる回る銀の球に穴が(くぼ)んでいって全体が(ふく)らんでいった。ほんとに自由自在って感じだね。感覚でやってるから精度は低いんだろうけど。

 終わった分からあたしが仕上げ。マシンを中に入れて出来上がったら回収するだけなんだけどね。


「おー、ミットすごいねー、ほんのちょっとしか違わないよ。ほら、底の方にすこーし余った」

「ふーん?でも仕上げしないとずっと弱いんでしょー?

 わっ、何これ?中ピッカピカじゃない」

「うん、なんかね、面のキョクリツ?でホーシャセンの向きを揃えるんだって。ほんとに綺麗に揃ってないとダメらしい。でもミットが上手に作ってくれたから、パパッと出来ちゃった」

「へー、そうなんだ。まあ役に立ったんなら良かったよー」


 殻が3個出来上がるのを待ってミットはジーナと鉱山へ跳んで行った。

 あたしは暇になったので、山をぶらぶら見て歩く。この辺りは葉っぱの大きな木がたくさん生えていて、木陰がたくさんある。暑い日は木の影に入るのが一番だよ。

 木の上にはちっちゃなリスが結構いるんだね。あ、キツネかな、おっきなしっぽを引き回し走り回ってる。


 そうやって山を(なが)めているとミットたちが帰ってきた。


「アリスー。どこ行ったー」

「こっちだよ」

「アリスー、これいーよ。行けそう!」

「そんなに?」

「うん、見本よりは弱いけどトラクくらいは跳ばせそうだよ」


 ミットが持ってきた球をさっき作った3つの箱に収めていく、向きの微調整を何度も繰り返して

「これで最大かなー?」

「そうじゃの。どう(いじ)ってもそれ以上にはならんようじゃ。近いせいかの、ヤルクツール行きの渦巻いていた様子とそう変わらんように見えるの」


「あー。そうかも!やったねー、アリスー。

 これでトリスタンに行けるよー」

「まあ、見通しはついたね。向こうにもこのジャンプ台作って道の体裁(ていさい)もちゃんとしないとね。そろそろお昼だから一回戻ろうよ」


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