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エデン・マキナ ~我らは機械仕掛けの楽園にて謳う~  作者: モッコム
第1章 楽園開場
16/62

殻を破っても転がるのはやめない

ピキピキと音を立てながら今にも孵ろうしているイセット。

それを前にした俺は完全にパニック状態に陥っていていた。


「ええと、ええと……孵化する時ってどうすればいいんだっけ? お湯準備? 拭き物と暖かい場所と……あと、あとは何が……そもそも虫の孵し方なんてわかんないよぅー……」


泣き言を言ったところで孵化が止まる訳もなく、ぽろり、ぽろりと中身が動くに合わせてイセットの殻が剥がれ落ちていく。

俺はその光景に狼狽しながらも『水魔法』で温水が出ないか確かめたり、葉っぱを掻き集めて温めようとしたり役に立つのかも分からない謎の行動を繰り返す。


……後で冷静なって考えてみるとイセットのは元々が野生動物?だ。

もし、何か必要なのあるなら自力で済ましているだろう、という事に気づく余裕がない程にテンパっていたのだ。

そしてそんな不安と焦りの時間は突然として終わりを告げ声が響く。


《従魔・イセットが『虫卵バグエッグ』から『魔幼虫キャタピラー』に進化しました》


「進化……? よ、よく分からないけど。無事に孵化したってこと、か?」


システム的なメッセージが問題なく孵化……もとい進化したと言われた事から何とか心を鎮静させる。


「と、そんなことより。イセット大丈夫か……イセットだよな?」


落ち着いたって事で進化したというイセットを観察してみる。

そこには殻を破ったばかりの芋虫がいた。

ただ、卵時代のイセットの大きさを考慮に入れてもかなりデカイサイズの、だ。

まあ、ソフトボールぐらいのサイズはあったから当然とも言える。

と言ってもこの間まで丸々してる球体がいきなり芋虫になったからか、どうも馴染みがないその姿につい本人か確かめてしまった。


(ゴロゴロ~♪)


するとゴロゴロと肯定された。


「そうかそうか……ってその姿でも転がって返事するのかよ!」


わざわざ身を丸めてまですることか?

それでこそイセットって気はするからいいけどさ。

そういやステータスどうなってんだろうか? ついでだし自分のと合わせ見てみるか。

メニューを開きステータス画面をアップさせる。


_____________________


  名前『アベル』 性別『男』 種族『人間族ヒューマン


  レベル『10』 属性『無』 特性『なし』


 《スキル》


『走行LV7』『風魔法LV6』『水魔法LV6』『光魔法LV4』『素手LV8』

『抗魔LV4』『追跡LV2』『索敵LV1』『隠密LV1』


 《称号》


『大物殺し』『密偵』

_____________________



_____________________


  名前『イセット』 性別『未定』 種族『魔幼虫キャタピラー


  種族レベル『10』 属性『無』 特性『蠢爾、草食』


 《スキル》


『回転LVMax』『回避LV8』『逃走LV7』『突進LV7』『弾化LV6』

『硬化LV5』『風魔法LV3』『糸生成LV1』


《称号》


名有化物ネームドモンスター』『付き従う者』

_____________________


俺の方は……まぁインフォ通知通りだな。

しかし、あれだけでスキルが2つも貰えのは凄い、出来ればイセットにも就職させたいとこだな。

俺も条件が揃い次第またやれるなら、またやりたいし……あ、あの光をもう一度とかの変な意味はないからな! そう、決して他意はないのだ。


ま、まあそんなことよりも今は進化したイセットの確認だ。

一番の変化はなんと言ったて種族が虫卵バグエッグから魔幼虫キャタピラに変わった事だろう。

ただ見た目としては幼虫というより芋虫だけど……そこは何かゲーム的な都合があるのだろうと納得しておく。

それと特性の『喰香』と『甲殻』が消えて『蠢爾』と『草食』になっている。

孵化して消えたってことはあくまで卵の殻に付属していた特性だったのだろうな、これは。


これで厄介な『喰香』とはおさらばかー……。

必死こいてゴブリンの住処を手に入れた理由が半分は消えて、その分は徒労になった形になっただけど……前よりは安全になったので特に気にする事でもない。

と、肝心の殻は……イセットが食ってるな。

そういや栄養補給のために自分が出できた卵の殻を食べるって虫や爬虫類がいるってのは聞いた事あるかも。


後は『糸生成』とか、それ以外にも気になる事は他にもあるが、それよりも……


「スキルレベルMax、か……」


……そう、イセットの『回転』スキルが10になるに伴ってMaxに表示が変わった、今はこっちの方が重要だ。

俺だと『素手』一番の近いけど、これMaxになったら何が変わるんだろうか?

単にもうレベルが上がらないだけなのかな?それとも何か特殊な効果でもあるのか?

むむむ……またもやネット遮断よる情報弱者ぶりが足を引っ張る事に……。


「ええい、結局は”分からない事で悩むのはやめる”なるだけじゃないか。今は頭より体を動かす方向で行こ!

行くぞ、イセット」

(ゴロゴロ!)


で、残っているゴブリン住居に行こうすると長い体を丸めて転がる巨大芋虫が一匹。

意地でも転がるのをやめるつもりはないのか、お前は……。

いや、そっちの方が速いならそれでいいけどさ、特性の『蠢爾』はガン無視でいいの?

……システム上にも本人にも問題がないならいっか、俺もこっちの方が馴染むしな。





♢  ♦  ♢





場は移って残骸が乱れ散らばる元ゴブリンの住処、そこの木組み家の中だ。

軽く家探して見たがいくつかの布や草が乱雑に置かれてる以外は特筆するものはない。

それも寝床使うためにとかではなく、本当に大量に集めて積もらせて置いただけって感じの。


「薬草を置く倉庫か? いや、毒草かもしれないけど」


ひょろ長ゴブリンが毒を常用してたようだしな……迂闊に手を出さない方がいいか。

残っている住居は他にもあってそこも見たけど、正直汚な過ぎて使えた物じゃなかった。

ゴブリンには衛生管理って概念はないらしい事が分かっただけだった……こうなる井戸水も心配になる。

まぁ、こっちは『水魔法』があるからまだいいけど、寝床はどうにもならない。


「だから出来ればここを使いたいんだけど。迂闊に触れないとなると片付けるにも困るな……」


いくら治せるとはいえ、うっかり毒に感染するかもしれないとなるとあんまり触れたくはない。

でもそうなるとあの糞尿と汚臭掃除する事に……どっちも嫌だな、そんな言ってる場合じゃないのは分かるけどさ。


「はぁ……。仕方ない、臭いのより毒草がましか。『光魔法』で簡単に治せるし」


渋々とどれが毒か薬かも不明な草を建物の外へと運んでいく。

すると最初の家探しで、あの匂いから逃げて近くの木に登ってから葉っぱを食べていたイセットが草に興味をそそられたのかゴロゴロと木から降りて近寄ってくる。


せめて木の登り下がりぐらい『蠢爾』でしてやれよ、製作者が泣くぞ……。


「どうした、これ食べたいのか? 駄目だからな、毒あるかもしれないんだから」

(ゴロゴロ)

「違う? じゃあ何しに……うわっ!?」


来たんだ、と問おうとしたらいきなり俺の横を草の束が通り過ぎる。

何が起きたのかと飛んできて地面に落ちたその草束を見てみるとそこに白くて細長い物体……糸が見えた。


「おお、これがイセットがやったのか?」

(ゴロゴロン!)


ドヤ顔……ならぬドヤゴロで、凄いでしょ! と主張するイセット。

実際に凄い、それにめっちゃ便利そう。

ちょっと触ってみると草に束ねる部分は粘着質で、引っ張る部分は粘りはなく頑丈な硬質な糸だった

これが『糸生成』スキルの効果なのだろう、糸の扱いが上手いのは単にイセットのセンスがいいからの気がするが。


あ、そうだ。


「なぁ、イセット。この糸であそこの草全部束ねる事は出来るか?  こう、手持ち紐が伸びてる感じで」

(ゴロゴロ~!)


出来るようだ、今のはそういう肯定のゴロゴロだったので間違いない。

……って何を言ってるんだろう、俺は……会話の答えがゴロゴロしかないから、ちょっと思考がおかしな方向にいってる気がする。


まあ、それはともかく、イセットが参加してからはサクサクと倉庫の片付けが進んだ。

そうして草束を別の場所に移したり、寝床用の布切れなどを残骸から掘り出したりしていたら、終わる頃には薄暗かった空にすっかり日が昇っていた。


「ふぁ~流石に眠いな……。徹夜で戦ってたから当たり前だけど。でも、まだ寝る訳にもいかないんだよな」


スキルの検証とか進化した流れで省略されたイセットの就職とか、やること多いがこれは別に一眠りしてからでも遅くないからいい。

だが、掃除してる間に放置しとく訳にもいかない問題が発生したのだ


「死体が消える方なんだな。ゴブリンは」


そう、前回の空歩猿の時同様にゴブリンは時間経過で死体が消え、謎の石を残す魔物なのが判明したのだ。

だったらあそこを確認しない手はない


俺はつい先程まで死闘を広げた場所……ひょろ長ゴブリンの死体があるはずの場所に向かうのだった。

孵化しようが進化しようがぶれないイセットでしたw


・『糸生成』


粘着糸と強糸の2つの種類の糸が出せるようになる。

出る場所は種族毎に違う。

MP、HPは消耗しないが、使うと腹が減り空腹状態では発動出来ない。


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