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第七十一話

「……見苦しいところを見せてごめんなさい。少し落ち着いたわ」


 しばらくして、エルフの少女は俺の元から離れた。

 少女は頬を染め、長く尖ったエルフ耳まで真っ赤になっていた。


「いや、構わない。誰しも心が弱っているときはあるものだ。俺も先日、彼女に慰めてもらったばかりだ」


 俺がそう言ってエルフ少女の治療を終えたシリルを指さすと、その神官衣の少女もまた恥ずかしそうに顔を赤らめ、


「ちょっと。事実だとしても言い方。勘違いされるでしょうに」


 などとやんわり俺を叱りつけてきた。


「む……すまない。そういうつもりはなかったのだが」


「でしょうね。ホントしょうがないんだから」


「……そこまで言われるほどのことでもないと思うのだが」


「あなたもサツキと同じで天然なところがあるの。少しは自覚なさい」


 シリルはそう言って俺の前に立つと、俺の額を指先で突いてきた。

 俺は少し釈然としないものを抱えながらも、特に反論もなかったので彼女の言い分を受け入れておいた。


 なお余談だが、ゴルダート伯爵付きの宮廷魔術師アリスと戦ったあの日以降、シリルの俺に対する態度が微妙に変わっている感じがある。

 上から目線というのも少し違うが、若干俺の保護者みたいな立ち位置から物を言ってくることがある。


 子供のようだと思われているのか……まあ否定しきれない部分もあるし、シリルにはどこか母性のようなものを感じるせいか不快でもないので構わないのだが。


 一方、その様子を見ていたエルフの少女は、何やら恍惚としたような様子だった。

 だがすぐにぶんぶんと頭を振ると、毛布を羽織ったまま立ち上がり、頭を下げてきた。


「あらためて、どうもありがとう。あなたたちは命の恩人よ。あなたたちがいなければ、私たちは全員オークどもに殺され、なぶり者にされていたはずよ。なんてお礼を言っていいか」


「いや、行きがかり上ついでにやったことだ。オーク退治に関しては、別途報酬をもらうことになっている。気にしなくていい」


「そうはいかないわ。エルフが恩知らずだと思われるわけにはいかないもの。できればお礼をさせてほしい。もしよければ、私たちの集落に来てもらえない?」


 エルフの少女がそう言って俺の手を取ってくるので、俺はどうしたものかと仲間たちのほうを見る。

 するとサツキ、ミィ、シリルの三人は、


「ん、いいんじゃね? あたしエルフの集落って見たことねぇし、行ってみたいな」


「ミィも賛成です。もらえるお礼はもらうです」


「私も同意。先にオーク退治の終了報告は必要でしょうけど、そのあとで良ければお邪魔してみたいわ」


 と、三人とも乗り気の様子だった。

 そうであるなら俺も否やはない。


「分かった。では厚意に甘んずるとしよう」


「良かった。集落をあげて歓迎するわ」


 俺の返答に、そう儚げな笑顔で答えるエルフの少女。


 俺はその様子を見て──まあここまでメンタルが回復したなら大丈夫だろうと判断し、先にやろうと思っていたことを実行に移すことにした。


「ところで、キミに一つ伝えたいことがあるのだが」


「え、あ、うん……何?」


 きょとんとした様子のエルフの少女に、俺は自分の考えを述べてゆく。


「先ほどキミは、自分がオークの慰み者になるべきだったというようなことを言ったが、あれは感心しない。責任感が強いのは結構なことだが、それを自虐に向けるべきではない。責任を感じるなら、後悔ではなく未来に向けた反省をするべきだ。具体的には、今回の失敗が何故発生したのかを分析して、次に同じ失敗をしないためにはどうするべきか──」


「あ、えっと……うん、はい、そうです……」


 俺のその説教を聞いて、エルフの少女はしゅんとして肩身を狭くしていた。


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[良い点] シリルママー! [一言] 出会う女皆落としてくじゃん
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