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魔術学院を首席で卒業した俺が冒険者を始めるのはそんなにおかしいだろうか  作者: いかぽん
第四章

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第四十一話

 城の食堂は広い。

 庶民の家が丸々一つ収まるのではないかと思うほどの広大なスペースに、二十人ほどが列席できる規模の長大なテーブルが置かれている。


 そのテーブルには色とりどりの料理が盛り付けられた大皿がいくつも用意されていて、それに加えていまもなお、執事やメイドたちが配膳を続けている最中だ。


 この光景、俺は幼少の頃から何度かアイリーンに誘われてお邪魔させてもらったことがあるので見慣れているが──


「ふえぇ……なんじゃこりゃ」


「す、すごいです……」


 アイリーンと俺のあとについて食堂に入ったサツキとミィが、感嘆の声をあげる。

 その隣のシリルも、声にこそ出さないもののすさまじく緊張してカチコチになっている様子が見て取れた。


「あ、あのさ、いまさらなんだけど、何であたしたちこんなすげぇとこで晩飯食うって話になってんの?」


「わ、私に聞かないでよ! 全部ウィリアムの仕業でしょ!」


「ミィはなんだか、とんでもない人と一緒にパーティを組んでいる気がしてきたです……」


 何故か彼女らの中では、事が俺への評価にすり替わっているようだった。

 この状況は単に俺がアイリーンの友人であるという事実その一点から生じているものであり、強いて言うならばそのアイリーンの気まぐれが原因であると思うのだが……。


「えっと、ウィルは僕の隣だからここね。お仲間のみんなはそっちに座ってくれるかな」


 ドレス姿のアイリーンが、テキパキと各自の座席を指示してくる。

 さすがの彼女をもってしても、「適当に座って」というわけにはいかないのだろう。


 俺と三人の少女は、指示された椅子に着席する。

 アイリーンはそれを見て満足げにうなずき、自らも俺の隣の席についた。


 それからアイリーンは、対面に座らせた三人の少女を見て、俺にそっと耳打ちしてくる。


「それにしても、みんな可愛いよね。あんな美少女ばっかりどうやって引っかけたのさ。……っていうかウィルって、その、なに……女の子に興味とか、結構持ち始めてたりするの?」


「いや、それはまったく関係ない。たまたま条件が合致するパーティメンバー候補として、彼女たちに出会っただけだ」


「だ、だよねー、ウィルだもんね。……ちなみに意中の子とかいたりするの?」


「だからそういった関係とは無縁だ。……いや、自意識過剰を恥じずに言えば、実際のところ約一名から言い寄られているような気もするが、ただこちらにそのつもりはない。男女の関係になれば冒険者として活動を続けることが困難になる」


「うわぁ……さすがウィルだ、理性のバケモノ。っていうか、えっと、色々と意外だな……でも少し安心もしたかも。それならまだ僕にも……」


「安心した? 何故だ」


「う、ううん、何でもない。こっちの話」


 アイリーンは頬を赤く染め、手をぶんぶんと振って話を切る。

 相変わらず、こういうところはよく分からんやつだ。


 一方、その俺たちの様子を見て、サツキ、ミィ、シリルの三人も何やら内緒話をしているようだった。

 あちらはあちらで、俺やアイリーンに話せないようなこともあるのだろう。


 と、そのとき──


「──おお、ウィリアム! しばらく見ないうちに大きくなったな」


 食堂の入り口のほうから、通りの良い精悍な声が聞こえてきた。

 俺は声の主を認め、立ち上がって会釈をする。


「お久しぶりです、アンドリュー王。このたびは晩餐にお招きいただき、ありがとうございます」


「はっはっ、例によって我が愛娘のわがままだ、恐縮することはない。──そちらの絶世の美女三人は、ウィリアムの連れであるという冒険者だな?」


 食堂の入り口から朗々たる様で現れたのは、アイリーンの父親にしてこの国の王、アンドリューであった。

 体格の良い筋骨隆々とした偉丈夫で、精強という様が国王の服を着て歩いているような印象だ。


 アイリーンと同じ色の銀髪は短く切り揃えられており、その目つきは朗らかな様子を見せながらも、その奥にはこちらを射抜くような鋭さを秘めている。

 年齢は確か三十代の後半ほどであったと記憶しているが、最後に会った五年ほど前と比べても一向に衰えの気配が見えない。


 サツキ、ミィ、シリルの三人は、その人物の到来に慌てて席を立ち、礼をする。

 サツキに関してはシリルに尻を叩かれて無理やり、という様子ではあったが。


「別にそう堅苦しくしなくていいぞ。ほかの貴族連中の前ならいざ知らず、今日は娘の友人を招待したホームパーティにすぎん。俺相手には無礼講で構わんよ」


 そう言って国王アンドリューは上座の席にどっかりと腰を下ろす。

 そして、「座ってくれ」というので、俺たちも席に腰を下ろした。


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[一言] 王様まで来ちゃったよぉ〜
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