第14話 彼ら
私たちは今部屋でのんびりしていた。
部屋って言っても私たちの家的存在であるあのでっかい量の部屋だ。
そこで、彩人くんを待っていた。
あの後すぐに武器に変えたペンダントたちを元に戻した樹希たちに後ろから声がかかった。
「なかなかやりはりますなあ、鈴さん。」
椿さんが私ににこにことした表情でそう言った。
なんか機嫌がよさそうだった。
ふと椿さんの後ろを見ると、無表情のバルドさんがいた。
そして樹希たちのほうも見ると、驚きと怯えの顔をしていた。
「あー・・・」
なぜバルドさんまで固まっているのかわからなくて困っていると椿さんが一言。
「戦闘始めるつもりやったら、間に入って3人で戦闘しよう言うてはったんです。まあ、止められたときはぶー垂れてましたけど、そのあとの言葉には私も少しぞくっとしましてなあ。その時からああなっとります。」
そんなに怒気乗せたつもりはないんだけど・・・というかむしろ普通に話そうとしてたくらいなのに。
「そんなつもりはなかったんですけど・・・自分の思った以上に怒ってた、のかもしれないですね。」
そういうとちょっとバルドさんが驚いた顔をして
「あれで結構抑えられていた・・・?なら本気で怒ったらどれだけ怖いんだ・・・?前のクイーンはもっと穏やかだったのに・・・。いや、きっとあの人も起こったときは怖かったんだろうな・・・」
ぶつぶつと言っていた。
バルドさーん、聞こえてますよー?
そう思ってバルドさんに視線を向けると再度固まった。
ゆっくりこちらに目を向けるバルドさん。
「聞こえてますよー?」
そこそこ明るめの声でそういうと彼は一気に顔を青くして、まさにビイィィィン!とでもいう感じで直立不動になった。
・・・真祖がそれってどうなの・・・?
ちょっと何か見てはいけないものを見た気がしたけど、スルーする方向で視線を椿さんに向けた。
「それで、どうするか決まりはったんですか?」
スルーするようだった。
「はい。状況からして多分彼は何にも知らないと思うんです。なので説明して仲間になってもらおうと思います。」
「仲間ねえ。人狼は吸血鬼と仲が悪いんですえ?だから、襲ってきたんでしょう?」
「この人狼は違います。もともとは人間であった私たちの友達です。説明するくらいならと思うんですけど・・・だめですか?」
「・・・まあ、バルドが彼をどうにかする権利はあんたら二人に預けてしもうたからなあ。わかりました、とりあえず説明だけは私たちがさせてもらいます。そのあとどうするか、話し合ってくださいね。」
そして施設に戻ってきた私たちはバルドさんたちに一度彩人くんを預けて、こうして寮で待っていた。
掃討が開始されたのが12時。
そこからギャルンを探し回ったり倒したり、彩人くんと接触したりして5時間経っていた。
もう夕方だった。
多分彩人くんは1時間くらい後に来るかなーなんて思っていると、意外に早く寮に来た。
30分くらい後だった。
ポーーン!という、この寮のチャイムが鳴った。
すぐに玄関の扉を開けに行った。
「きたよー」
「あがってあがって。話はどこまで聞いたの?」
「とりあえずこの施設とあの化け物・・・ギャランだって?のことは聞いたよ。」
「なるほどねー」
そしてリビングまで来たので、座ってと促してお茶を3人分出した。
「・・・それで、どこから聞きたい?」
私がそう促すと、少し彩人は考えて言った。
「・・・・・・そうだなあ、まず俺のほうから話をしないといけないと思うんだけど。」
「あー・・・」
「逆に聞くけど・・・何から聞きたい?」
そういわれて私と樹希は少し悩んだ。
先に質問したのは樹希だった。
「ねえ、どうして・・・人狼であるお前が学校に行ってたんだ?」
確かにそうだ。どうして人狼なのに学校に行っていたんだろう?
「・・・あー、まあ、俺の生い立ちから話すことになるんだけどいいか?」
「いいよ。」
「俺はまず中学に上がるまでは自分が人狼だって知らなかったんだ。」
えっ。
「それで、中学に上がって親に聞かされた。お前は人狼なんだって。びっくりしたよな。物語とかに出てきて人を食う人狼だって言われたって最初は信じらんなかったよ。」
「・・・確かに、それはそうだよね。」
「そう。でも、そのあとの満月の日の夜に俺はどうしようもなく周りに襲い掛かりたくなってたんだ。その日の昼はいつも通りだったのに。」
「うん。」
「それで何とか我慢して親に、この症状はなんだって聞いたら、『それが人狼である証だよ。知ってるだろ?』って親父に言われた。そこで、俺は本当に人狼だったんだって受け入れた。」
「・・・受け入れたのは分かったけど・・・」
「ああ。そこまでどうして症状が出なかったかだろ。人狼はもうほとんどが人間との混血になってしまっているかららしい。かくいう俺の母親も人間だしな。」
「・・・」
「まあ・・・夜の月の光さえ浴びなければ大丈夫だってその時に言われて、そこから満月の日は何が何でも早く帰ることにして俺は学生を続けた。そして、お前らと仲良くなったんだ。」
「・・・そうだったんだ・・・」
「学生を続けて何をしたかったの?」
「いや。特には何もなかった。ただ、友達と遊んでいたかった・・・んだと思うな。」
「なるほど・・・」
「俺はこんな感じだよ。お前らは?」
「・・・うん。私が話すね。」
「ああ。」
そうして私たちがどうして吸血鬼になってしまったのか、事細くもう一度説明して、私たちはギャランを倒していることも説明した。
そうして今日は、彩人を家に帰した。
「ねえ、ヴィスリーさん。」
「なんだ?」
「・・・鈴が、私たちの娘が覚醒したみたい。」
「・・・人間として育ってきたのに今更なぜ?」
「わからないわ。でも、あの子は・・・」
「ああ。これまでのクイーンとは違う・・・クイーンの息子たる俺の血を引いているし、何よりお前の血も引いている。」
「・・・」
「お前の・・・陽炎の血もな・・・」
「・・・そうね・・・」
「今までのクイーンよりいくつか強くなるだろうし、何より日に当たっても力の減少は抑えられる。」
「・・・私たちの種族は名前の通り性格がフラッとしているけれど・・・姿かたちに寿命までほとんど人間と変わりない。ただ少し日に強いのと・・・昼間は姿を消せる術があること。」
「そして吸血鬼である・・・夜に姿を消せる術があること、そして日や水に弱いが・・・」
『寿命が長いこと。』
「・・・これらが合わさったなら・・・」
「きっとあの子がしばらくの間は率いていくのでしょうね・・・」
「・・・本当に、俺の血を飲まなくてもいいのか?吸血鬼にならなくてもいいのか?」
「確かに、あの子の行く末を見てみたいけれど・・・陽炎族であることには変わりないわ。いまさらその姿を捨ててまで見たいとも思わないわよ。それに・・・あなたがいるじゃない。」
「・・・そうだな。わかったよ。」
「・・・いつか、ちゃんと私たちのことをあの子に言いましょう。」
「・・・そうだな。もしかしたら、結構すぐに言う時が来るかもしれないな。」
「そうね・・・。なら、あの子が次帰ってきたときにでも言いましょう。」
「・・・そうだな。その時に俺がいるかはわからないがな。」
「・・・しばらくいるんでしょう?」
「ああ。1年くらいはこっちにいるよ。」
「わかったわ。その間に帰ってくるといいわね・・・」
「そうだな。綺麗になったはずのあの子たちの顔を見てみたいな。」
「そうね・・・」




