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静かな湖畔

高機能執筆フォーム......おかげで投稿がめちゃくちゃ遅れました。

 町を出ると早々に美しい湖畔(こはん)が現れた。湖の水面は波をたてることもなく静かに澄んでいる。

 まだ何か胸につっかえているような気分で湖に沿って歩く。もしも湖に飛び込んだらこの虚しいつっかかりは消えてくれるのだろうか。

 

 何もせずひたすら歩いているだけだと二葉のことを思い出してしまう。

 こんな気持ち早く忘れてしまいたいけれど、それなら二葉のこともすっかり忘れてしまっていいのかと、そう問い詰められればまったくの嘘になる。

 なぜ二葉を助けてやれなかったのだろうか。それは一也がいうまでもなく力不足だっただけだ。

 もしかすると__の話ではあるが、あそこで一也が広場に近づかなければ二葉は助かったのではないだろうか。

 一人なら苦戦はするだろうが最終的には青年たちを倒すことができたのかもしれない。

 助けに行ったつもりがただの足かせとなり二葉を困らせ、あげくの果てには足かせにとどまらずもっと重くてどうしようもないものとなって、彼女を殺してしまった。


 ということは二葉を殺してしまったのは自分になるのか? と一也は心の中で呟く。

 直接的に殺したわけではなくても間接的に殺した。これはどうだろうか。

 それはもちろん、許されることではないだろう。

 

 やはり自分が悪かったのかと多いに落胆した。

 先ほどまで少しずつ薄れてきていた罪悪感を、再び強く色濃く上塗りされた気分だった。


「そんなに悩むことないと思うよ。三条君は助けにいっただけなんだから__」


 隣を歩く糸川が静かに言った。


「......なんで分かったんだ」

「ずっとうつむいて黙ってるし、すごく悩んでるみたいだったからね。バレバレ」


やはり顔に出てしまうほど悩んでいるようだった。


「それと、ごめん。私がぼーっとしてなかったら」

「糸川のせいじゃないんだからお前は気にしたってしょうがない。まあ何かしないと気が済まないってんなら反省じゃなくて感謝しといてやってくれ」


少し歩くと二人は大きな岩を見つけた。座れそうだ。

近づいて腰を下ろして、糸川も隣に寝転がった。


「そういえばなんだけどさ」


一也が急に話を切り出した。


「プレイヤー狩りをする理由って、何だと思う?」

「なにそれ」

「言ってなかったっけ。あの人たちやっぱりなにか理由があってプレイヤー狩りをしているらしいんだ」


本当に理由があるのかないのかは一也にはわからない。けれど何の理由もなく二葉が殺されたということだけは考えたくなかった。できることならば、高校生程度では到底想像のつかないような過大な理由の上での死亡を望んでいた。


「理由ねえ。本当にそんなのあるのかな。あんなに平気な顔して人殺してるのに」

「そうか? 平気な顔してるようには見えないけど」

「三条君はむしろ嫌々しているように見えるの?」

「うん」


 糸川にはあれが快楽殺人に見えているのか。

 というか普通に考えたら確かにそう見えるかもしれない。けれど一也には、話しているうちに青年たちがどこか無理をして快楽殺人者を装っているように感じられた。そのうえあるのかどうか定かではないが彼らの言っていた理由というものを計算に入れて考えてみれば、青年たちが快楽を求めて人を殺しているようには思えない。

 とんでもないことを言わせてもらうのであれば、悪意から生まれた殺人というより、善意から生まれた殺人のように一也は、そんな馬鹿げたことを考える自分をいぶかしみつつも、思っていた。


「嫌々殺しをしてなかったんなら、あのとき同情なんてしないだろ。もしあの人たちが快楽殺人者なら、二葉がやられたときに絶対俺は殺されてただろうし」

「でも、三条君の言い分を認めたとして、じゃあなんで好きでもない人殺しなんてことしてるの?」

「そこに理由があるんだろ。人殺しをしなければならない理由がな」


 しかし嫌でもプレイヤー狩りをしなければならない理由とはなんだ。

 まさかゲームから指示されたクエストだったり、もしくはプレイヤーを倒せばごく希に手に入るレアアイテムがあったりするのだろうか。

 後者はあくまでも物欲の問題であってどうしても人殺しをしたくないというのであればする必要はないだろう。

 だが前者はどうだ。たとえば『プレイヤーを殺せ』といったクエストであった場合、もしそれをクリアしなければ先に進めないというものだったのなら、彼らは嫌々ながらもプレイヤー狩りをするのかもしれない。


「そろそろ行こうよ」


 糸川が体を起こして言った。


「そうだな」


 一也も立ち上がってまた歩き出した。

 次に見つけた町であの青年たちについて何か分かることがあればいいなと思いつつ足を進めた。

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