ごめんね? 君の期待と違って
初めまして、あるいはこんにちは。毎日毎日、同じようなチート要求をしてくる転生者にウンザリしている神様です。本日も、ちょっと態度のデカい男がやってきたので、適当に処理しようと思います。どうぞ気楽にお付き合いください。
「おいおい、俺を転生させるってことは、当然『全属性魔法』とか『経験値100倍』とか、あとは『鑑定眼』もセットだよな? あ、ついでに聖女とか王女とかのハーレムもよろしく!」
真っ白な空間で、目の前の男――ついさっきトラックに跳ねられてここへやってきたらしい、名前も覚える気の起きない元・現代人――が、腰に手を当てて偉そうにまくし立てている。
何だその態度は。君、死んだ身なんだけど。
というか、どいつもこいつもテンプレのチート要求ばかりで、毎日何十人も処理しているこちらの身にもなってほしい。
ぶっちゃけ、めちゃくちゃ面倒くさい。
最初は優しく対応していた時期もあった。でもね、こういう「自分が物語の主人公」だと信じて疑わない生意気な転生者の相手をするの、本当に精神がゴリゴリ削れるのよ。
だから私は、心の中でフッと微笑んで、手元の神様用端末をタップした。
――よし、決定。
「ごめんね? 君の期待と違って」
「は? 何が――」
言いかけた男の足元に、まばゆい魔法陣が展開する。男は「おお、やっぱりチートの演出か!」と目を輝かせているけれど、残念、それただの強制転移陣。
「君に与えるスキルは『気配遮断(微)』と『頑丈な胃袋』。あとボーナスで『一目で一般人だとわかる服装』ね」
「おい待て! なんだその地味なスキルは!? 聖剣は!? 魔力無限は――」
「異世界でたくましく、一人の『MOB(その他大勢)』として生きて貰うことにしました。それじゃあ、元気でね」
「待っ――!」
男の叫び声が光の中に消えていく。
ふう、と私は誰もいなくなった白い空間で大きなため息をついた。
さて、と。
私は神様の特権で、下界が見える水晶のスイッチを入れる。
画面に映し出されたのは、異世界の辺境の村で、麻の服を着て「ステータス! ステータス開けよ!」と虚空に向かって必死に叫んでいる男の姿。
「よし、あいつが大人しく畑を耕し始めるか、ゴブリンに追いかけ回される方に、今夜のデザートのプリンを賭けよう」
神様の退屈しのぎには、これくらいがちょうどいいのよ。
ご覧いただきありがとうございます!無事に(?)辺境の村へと出荷された大輔くん。神様のあげた地味すぎるスキルのせいで、早くもステータス画面すら開けずに絶望しているようです。次回、空腹のあまり大輔が限界を突破します。「いや、それ食うの!?」と神様が思わずモニターに突っ込んだ、大輔の初サバイバルをお楽しみに!




