表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境惑星で旧文明AIを起動したら、銀河インフラが再起動しはじめた 〜廃船修理のつもりが、星系管理者に登録されました〜  作者: 七森シオン
地上港を、帰る場所にする

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
191/192

第181話 三つの承認が並ぶ

 レンは欠けた骨格材の輪郭を、中央卓の端へ固定した。


 昨日見つけた南東側の係留骨格材は、まだ幽霊みたいに薄い灰色で浮かんでいる。月面工廠の休眠パターンは白く返っているが、製造欄には手を入れない。レンが開いたのは、その一つ手前にある承認条件の窓だった。


『製造前承認照会を開始します』


「製造命令じゃない。条件照会だけ」


『了解。第一ロック試験系、切り離し維持』


 ガタは中央卓の下で前輪灯を床へ落としていた。右輪の黄色は昨日と同じ幅だ。床の白線は細く、欠けた骨格材の位置だけ少し淡い。ノアの監視窓には、給水、温食、医療・休息、補給路の白表示が並んでいる。


 生活系は動いている。承認を調べるために、それを止めない。


「復旧責任者権限で照会」


 レンは自分の識別を送った。中央卓に、一つ目の白い窓が灯る。責任者承認。そこまでは通る。だが、隣の二つは灰色のまま残った。


『単独承認では製造前照会を完了できません』


「足りない窓を出せ」


『基地監視承認。現地安全承認。復旧責任者承認。三系統が必要です』


 レンは短く息を吐いた。やっぱり、というより、少しだけほっとした。昨日の上振れ値を平常扱いし、欠けた骨を見つけたばかりで、また自分の手だけで先へ行けたら怖すぎる。


『基地監視承認、提示可能です』


 ノアの声が平坦に落ちた。中央卓の左窓に、基地監視の細い線が立ち上がる。水循環、温食、休息区画、通信塔温度、E-03補助、補給路。全部がひとつの承認ではなく、守る対象として並んでいた。


「ノアの承認は、基地が生きていることの保証か」


『はい。地上港機能を停止させる操作は承認不可です』


「いい止め方だ」


『止めていません。条件化しています』


 レンは少し笑った。止め役ではない。進むための条件を、生活系の白表示で縛る。それならいい。


『現地安全承認、ガタですか』


 ガタの前輪灯が床の欠けた線を照らした。声は短いが、いつもの逃げ腰だけではない。


『床、車輪、帰還経路、右輪を見ます』


「右輪も条件に入れるのか」


『入れます。黄色のまま無理をすると嫌です』


「正しい」


 レンは現地安全の窓を開いた。ガタの前輪灯が床の白線を一周し、欠けた骨格材の影、通信塔側の戻り線、E-03への退避線を順に照らす。中央卓の二つ目の窓に、遅れて白い線が入った。


『現地安全承認、仮登録。右輪黄表示の悪化時は自動撤回』


「仮でいい。悪くなったら撤回しろ」


『はい。嫌を条件化しました』


「それ、気に入ったのか」


『現場語です』


 最後の窓は、レンの承認だった。さっき一度通ったものと同じに見える。けれど、三つ並んだ後では意味が違った。単独で押す白ではなく、基地と現地の白に挟まれた責任者の白だ。


 レンは手袋の指を置き直した。


「復旧責任者、承認。製造命令ではなく、承認条件の登録まで」


 三つの窓が同時に点灯した。中央卓の欠けた骨の輪郭が、灰色から白へ少しだけ濃くなる。作られてはいない。動いてもいない。だが、誰の白がそろわなければ進まないのかが、初めて固定された。


[THREE CHANNEL APPROVAL]

――――――――――

対象:係留骨格材の製造前照会/再試験準備

必要:基地監視承認、現地安全承認、復旧責任者承認

登録:ノア=基地監視、ガタ=現地安全、レン=責任者

制限:生活系停止、退避線喪失、右輪黄悪化時は承認撤回

未解決:材料条件、必要保持時間、製造命令

維持:低出力照会、給水、温食、医療・休息、補給路

次作業:骨格材ありで許される短時間保持枠を決める

――――――――――


 ログを閉じると、三つの窓だけが中央卓に残った。レンはその白を見て、少しだけ肩の力を抜いた。ノアは補助ではない。ガタも足回りの乗り物ではない。少なくとも、この骨を作って試す時、二つの白が欠けたらレンの白も意味を失う。


『責任者承認、単独使用不可として記録しました』


「俺が一人で突っ走らないための鎖か」


『安全線です』


『帰る線です』


 ノアとガタの返答が、少しだけ違う言葉で同じ場所へ落ちた。レンは欠けた骨格材の輪郭を見た。作れる骨。けれど、作っていいと決める手は三ついる。


「次は、どれだけ短く動かせるかだな」


『保持時間計算を推奨します』


『短い方が好きです』


「知ってる」


 レンは三つの承認窓を閉じずに、保持時間の空欄へ移した。進む線は細い。だが、今度は一人分の線ではなかった。

「続きが読みたい」と思ったら下の評価とブックマーク登録をどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ