第40話 快調の駿
紅葉ヶ丘小学校 対 芽吹小学校
1セット目は芽吹小が獲得
2セット目は芽吹小がメンバーを交代、
司と駿、海と沙雪が交代し、試合が進む。
奈津のもこもこショットがコート外に出た時、
司は体育館の外で横になって、空を見上げていた。
(あー、つかれた。陽介の止め方は示したし大丈夫だろ。
綿の能力はレシーブ以外にも、跳ぶのにも打つのにも使えるだろうな。
でも、そんな使い方したらすぐ疲れるか、、、
まぁ、大丈夫だろ)
司は思考を止め、あくびを一つした。
「あららぁ~、沖和くんこんなところでサボりはダメですよ?」
4年生担任の青屋風奈が司の顔を覗き込んだ。
「そっちこそこんな所で何してんですか?」
「ちょこっと休憩です」
「俺と変わんないですよ、それ」
「試合はどうなりました?」
「紅葉ヶ丘とやってて、1セット目を取りました。
今、2セット目をやってるところです」
「どうです?相手の能力者は」
「ジャンプ力強化と綿使いの2人です」
「どちらもバレーにおいては使い勝手よさそうですねぇ」
「で、そっちはどうなんですか?」
「うーん、特に何もないですよ」
「テキトーっすね」
「でもやっぱり、授業より緊張感あっていいですね」
「それは、そうでしょうね。
ま、他校まで来てヘマしないでくださいよ、先生」
「普段の授業でもヘマしませんよ!」
「じゃっ、俺は戻りますね」
(さて、私も少し休みますか)
司は体育館に戻りスコアボードに目を向けた。
紅葉ヶ丘 2-4 芽吹
(思ったより善戦してるな)
「おぉ、沖和戻ったか」
「俺の作戦なくてもいい試合してますね。
次も休んでていいですか?」
「ダメだろ、ちゃんと中からの分析をしてくれ。
俺を含め全員が沖和の作戦に一目置いてんだ」
「それは、ありがたいですが、、、
駿の調子はどうですか?」
「松平なぁ、調子よさそうだぞ。
向こうの綿井が上げたら、松平も上げる。
今日はレシーブがいい感じだ!」
「そ!いつにもまして良いレシーブしてるよ。
あれなら、波溜ちゃんも文句言わなそう」
「、、、珍しいですね」
そんな話をしている間にも
駿がこころのサーブを高く上げた。
(たしかに、いいレシーブになってるけど、
いつもより高く上がってるからか?)
そしてボールは朱里から開に繋がれ、芽吹小が得点を重ねた。
― ピッ 紅葉ヶ丘 2-5 芽吹 ―
「お!司、帰ってんじゃん!
どーだ?ナイスレシーブだろ」
「調子よさそうだな、
このまま最後まで頼んだぞ」
「おう!任せとけ」
司に褒められた駿は
意気揚々とサービスゾーンに向かい、ボールを宙に放った。
((なんか、嫌な予感がする、、、))
司と朱里の予感を裏切らない駿のサーブ、
ボールはネットにかかって落ちた。
― ピッ 紅葉ヶ丘 3-5 芽吹 ―
「ビビったぁ、ジャンプサーブかと思った」
「駿は目立ちたがり屋みたいやから、やってみただけやろ。
レシーブは奈津みたいで上手いようやけど」
「私もジャンプサーブしてみよっかなぁ」
「それはやめてくれや」
「みーちゃん、ジャンプサーブできるの?」
「ん~、できないかなぁ」
「劣勢じゃなかったら、してみてもよかったけどな」
「まぁ、ふわふわっと打ってくるわぁ」
そう言うと美春はサービスゾーンに立ち、ボールを打った。
ボールは緩やかな弧を描いた後、朱里にレシーブされた。
そしてボールの落下地点には麻由が入る。
「オーラーイッ」
麻由はボールを高く、開へと上げた。
開は力いっぱいボールを打ったが、
奈津の周りに敷かれた綿がボールを跳ね上げた。
(くそっ、まだ能力使えるのかよ)
(う~ん、そろそろ限界かな)
上がったボールを大吾が上げ、陽介が打ったが
これも駿がレシーブした。
(、、、駿のレシーブ怖いくらいにいいな。
陽介のジャンプ前の溜めは長くなってるし、このままでいいな)
そして、朱里のトスから慎悟がスパイクを決めた。
― ピッ 紅葉ヶ丘 3-6 芽吹 ―
「うーっし、マッチポイントだ!」
「慎悟さん!さすがっす」
駿もマッチポイントに熱くなっているようだ。
「おう!
朱里もナイストスだったぞ」
「あ、ありがとうございます」
「さて、マッチポイント握られたが、、、」
「う~ん、、、、」
「なっちゃんどうしたの?」
「ここ、取られるのよくないよねぇ」
「うん、もう取られたらダメだね」
「う~ん、出し惜しみしたくないし、あれやっちゃおうか」
「奈津、それマジで言ってんのか?」
「あれかぁ~」
「え?皆さん、あれってなんですか?」
「なっちゃんのとっておきだよ」
「やってもええけどな、あと4点体力が持つんか?」
「う~ん、ムリ。
でも、ベンチのあの子驚くんじゃない?」
奈津が司を指さして言った。
「確かに、驚きそうやな」
「司を驚かせれるなら、やってみてもいいんじゃない?」
「はー、たしかにそれは見てみたいな」
「まぁ、何かしなきゃ状況は変わんないよねぇ」
「あの、えっと、、、奈津さんのとっておきって、、、」
陽介、こころ、大吾、美春は乗り気、
新太はいまだに状況を把握できていない様子だ。
「新太くん、私のとっておきはね―――――」
新太は奈津がやろうとしていることを聞き、
驚きを隠せないでいた。
「そ、それ、本当にやるんですか?」
特殊能力のある世界 第40話 ご覧いただきありがとうございます。
あれだけ、レシーブが下手だと言われ続けた駿が、
絶好調でございます。
残念ながら、攻撃での見せ場はありませんが、活躍しています。
しかし、綿井奈津にはまだ奥の手があるようですね、
なにが起きるのか、第37~39話にヒントがあります。
次回の投稿は12/16(土)19時頃です。
岡山マラソン完走から1か月の休養を経て
11kmランニングを行いました
案の定、筋肉痛です。。。
オーバーワーク厳禁