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意地悪なお姉様2(スノーフレーク)

 その後、小さな庭を通り過ぎて家の玄関を開けて中に入って、真新しいけど今まで使っていた物よりも明らかに質が落ちた家具に、天国に居るお父様とお母様とお屋敷で過ごした思い出がよみがえって来てぼろぼろと涙がこぼれ落ちた。

 そのまま何もしないで日が落ち始めたころに空腹感を覚えたけれど、そこでやっともう料理をしてくれる人がいないんだと思い出して途方に暮れてしまった。

 お父様とお母様が亡くなってから、コックやメイドが今後の為に料理や買い物が一人で出来るように訓練しろと言っていたけど、それもお姉様の嫌がらせだと思ってやらなかったわ。

 あ、でも持たされた荷物の中に最後だからって渡されたお弁当があったはず。


「荷物……」


 そういえば馬車から降ろされたままだわ。

 使用人が居れば勝手に運んでくれるのに、お姉様が使用人を付けてくれないから。

 そう思いながらも仕方がなく鍵のかかっていない玄関を出て、開けっ放しの門の所に行くと、そこには荷物が置きっぱなしになっていた。

 どうして私が荷物運びなんてしないといけないの?

 持ち上げようにも重すぎて持ち上がらない鞄を引きずって家の中に運び込んで床に座り込んでしまう。

 もう腕が痛い。

 本当は動きたくないけど、お腹がすいたままじゃ眠れないから鞄を開けてお弁当を取り出して蓋を開けると、中にはサンドイッチしか入ってなくてがっくりと肩を落としてしまう。

 こんな平民が食べるような物……。

 それでもお腹がすいて眠れないよりはと無理やり口に入れて、喉が渇いたと思って使用人を呼ぼうとしていないのだと思い出してまた涙が浮かんだ。

 なんとかサンドイッチを食べ終わって、疲れ果ててしまってそのまま家の中をうろついて寝室を見つけ、倒れ込むようにベッドに入る。

 ドレスだったらしわになるとか気にするのかもしれないけど、所詮は安物のワンピースだもの、どうでもいいわ。


 翌朝、大分日が昇った頃に目が覚めてベッドから起き上がって着替えようと荷物を置きっぱなしにしていた場所に行く。

 鞄の中からワンピースを取り出して着替え、とりあえず家の中を確認することにした。

 私の事を憎んでいるお姉様の事だもの、きっと意地悪を仕掛けているに違いないわ。

 そう思って家の中を見回って、やっぱり家にある家具の質が落ちているのだと悲しくなって、まるで私に今後は自分で料理をしろと言うように用意された厨房の道具に悲しくなって、倉庫のような所に仕舞われている掃除道具に私に掃除をしろというのかと悲しくなった。

 極めつけは本が並んでいる棚に、レシピ本や平民の生活の知識などの本が並んでいるのを見つけて、ついにお姉様の意地悪に我慢が出来なくなってしまい、床に座り込んでしまった。

 血の繋がった姉妹なのに、お姉様はお父様に愛されていた私の事が憎くて仕方がないんだわ。

 だからこんな風に私を虐めるんだわ。


◇ ◇ ◇


(名もなき平民視点)


 ええ、荷物置いて行っちゃったけど大丈夫なのか?

 なんかよくわかんないけど、この一等地に『二階建ての広い庭付き一戸建て』を大改築してくれたお姉さんなんだよな?

 しかも生活費まで用意してとか、屋敷ってのを追い出されたらしいけど、この荷物の量なら身一つで追い出されたってわけじゃないだろうし、俺だったら一回しか会ったことの無い異母妹にそんな事はしないぞ?

 言葉遣いとか、屋敷って言うのから考えたら貴族関係かもしれないけど、別邸に囲っていた愛人の娘だったとか?

 うーん、正直ここにどんな家族が引っ越してくるのか近所で噂をしていたから、ちょっと期待外れだな。

 しっかし、門も開けっ放しとか、いくら治安がいいからってどんだけ危機管理能力が無いんだよ。

 荷物も放置だし。

 運んでやってもいいけど、泥棒とかって難癖付けられるのも嫌だしな。

 まあ、そのうち取りに来るだろう。

 一応子供が一人暮らしするわけだし、近所の連中には気を付けて見ておいてやった方がいいって言っておくか。

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