最推しが尊い6
「ほ、本当にこれだけの量を用意、いえ、ブルーローズ様が作成したのですか?」
「当然でございましょう。言ったとおりにわたくしは出来ないことは言いませんもの」
あれから半年後、しっかりと完成した薫風の音色の入った箱の山をお見せいたしましたら、スピラエ様が驚いたように顔を引きつらせていらっしゃいましたけれど、お約束を守らない女だと思っていらっしゃったのでしょうか?
そうなのだとしたら非常に残念でなりませんわ。
「はぁー、さすがブルーローズ様。なんでもありですね」
「ベロニカ様。わたくしにだって出来ないことは(多分)ありますわよ」
「私、ブルーローズ様だったら今すぐに魔法師団に入団して第三師団に所属させられても先陣をきって戦えるって信じています。ねえ、スピラエ様」
「それはまた否定出来ないことを言いますね、ベロニカ様。とにかく、我々の為にこのような過分な物をご用意してくださりありがとうございます。皆の士気も間違いなく上がりますよ」
「それですと作成した甲斐がありますわ。あ、あとこちらなのですが、見本と申しますか、皆様にお配りになる前にスピラエ様でお試しいただくように作ったものでございますわ」
そっとお渡しした薫風の音色をお受け取りいただいた際に微笑んでいただけまして、最推しの微笑みにやはりうっとりとしてしまいます。
はあ、最推しが今日も尊いですわ。
お渡しする物もお渡しいたしましたので、紅茶やお茶菓子の準備が整いますと早速授業が始まります。
尤も、わたくしは教えていただくことがございませんので逆にスピラエ様にお貸しした本の内容をご説明する復習という形に、そしてその合間にスピラエ様はベロニカ様が学んでいる中級魔法の教本への質問に答えるという形であります。
それにしても、折角ご用意した幻音流星でしたのに、殆どにダメ出しをされて結局お見せできたのは二冊だけでございました。
わたくしとしてはちょっとぐらい精神的に影響を受けても大丈夫だと思うのですが、わたくしのちょっとは普通の人族にとって致命的とまで言われてしまい、ショックのあまりその日の夕食では一言も口をきいて差し上げませんでしたわ。
もっとも、幻音流星の螢惑史伝と門杭玲紀を見た瞬間スピラエ様は、椅子から立ち上がった挙句にティーカップの上に手を置いてひっくり返して床に落として割り、立ち眩みがしたようにぐらりと倒れて椅子とテーブルに強かに体を打ち付けましたけれど、精神的影響はない本と言われましたのでちょっと驚いただけだったのだと思いますわ。
少々驚きすぎとは思いましたが、もしかしたらずっと探していらっしゃって嬉しすぎて我を忘れてしまったのかもしれませんわ。
あれから、スピラエ様は月に一度魔法を教えるという名目で幻音流星の本を読み、わたくしにわからないところの解説を求めていらっしゃってそれに答えるという形になりました。
音魔法は風魔法に分類されるのですが少々特殊でございまして、消費魔力も多く難易度も高いのですが、その分効果は大きいのです。
わたくしも、『花と星の乙女』でダンジョンや魔物討伐イベントではよく使用してあたり一帯の魔物を内部から破裂させておりましたわ。
一気にスコアを稼ぐことが出来たので便利でしたわね。
その分、ドロップアイテムも大量に自動取得になりましたので処理に困ったのはいい思い出ですわ。
基本的には乙女ゲームでございましたので、RPG要素があるとはいえ連れて歩けるキャラは言ってしまえば攻略対象と準攻略対象のみ。
行動を共にしてその対象キャラを強化しつつ、ある一定レベルで頭打ちになるレベルの限界突破をするにはガチャで素材を集めたり、攻略対象との期間限定イベントを楽しむためにガチャを引いたり、その他にもガチャでしか得られない魔法を覚えさせたりと、お金をかければそれだけ(運がよければ)還元されてはおりました。
わたくしのようにすべてのキャラクターの好感度MAX及び、イベントガチャオールコンプ、対象キャラのレベルオール99超えというのは、ほぼいませんでしたけれども、年々上がって行くランイベの総合ノルマ値に対応出来ませんでしたのでしかたがありませんの。
ガチャ引き生放送では視聴者から「もうやめてあげて」とか「石油王マジ石油王」とか「見てるこっちの胃がやばい」とか言われましたけれども、ガチャなんてそんなものですわ。
一方、ランイベ生放送では「まだやってる」とか「不眠乙女様は今回も不眠乙女様か」とか「追いつける気がしないので自分のペースが逆にわかりました」とか言われましたが、わたくしのペースでも一位を取る事は少なかったのですから、あそこまで言われるのもおかしな話ですわよね。




