最推しが尊い5
書架からとりあえず該当する本を持って来て自室に置いて、夕食が始まるまでの間早速魔道具の制作をしようと錬金工房に向かいました。
安眠用の魔道具、正式名称を『薫風の音色』と申します。効果はそのまま安眠促進ですわ。
材料は腐るほどあるので問題ありませんが、今回は数が多いのでちょっと奥の手を使いましょう。
パチンと指を鳴らしますとふわふわと綿毛のような光がいくつも浮かび上がって小さな人型に変わっていきます。
こちらは通称錬金工房の妖精さんでございまして、公式がつけている正式な名称はございません。
主な仕事はアイテム作成のお手伝いですわ。ユーザーの魔力を使って生まれる妖精ですの。
錬金工房主の能力次第で錬金工房の妖精さんが作れる品物やスピードが変わってくるのですが、わたくしはもちろん錬金工房主としての能力は十分に優れておりますので、この子達の能力も優れております。
錬金工房の妖精さんへの指示項目をそれぞれ入力していきまして、最終的に薫風の音色が一万五千個になるように数値入力をいたしました。
過剰在庫になってしまっても困りますものね。
さて、全てを錬金工房の妖精さんに任せてもよろしいのですが、スピラエ様にお渡しする分ぐらいわたくしが手掛けてもよろしいですわよね。
そう思って手早く材料を準備して薫風の音色を作成していきます。
わたくしが作成したものでも、錬金工房の妖精さんが作成したものでも、その錬金工房主の魔力の入った紋章がどこかに必ず刻まれる仕組みになっておりますが、薫風の音色の場合は手のひらにコロンと納まるサイズの匂袋なので袋に刻印されます。
一度憩いの泉の水で洗浄した必要な花の花弁や葉を乾燥させて混ぜ合わせ、適度な香りを維持するように入れる袋を編上げて行き、その中に乾燥させた花弁や葉を適量入れ、紋章が刻印されたブルーのリボンで袋の口を結んで完成ですわ。
魔法師団も騎士団も男女ともに所属しておりますので、可愛くなりすぎず、かといって堅苦しくないシンプルなデザインに仕上がりましたわね。
こちらは別に保管してまとめてお渡しする時にスピラエ様に見本としてお渡しいたしましょう。
「では、後はよろしくお願いしますわね」
わたくしは錬金工房の妖精さんにそう言うと、薫風の音色とは別の物を作成いたします。
作るのはスキンケア用のオールインワンジェルですわ。
一度に大量に作れるのですが、以前作ったものは流石に残りが少なくなってしまいましたのよね。
材料に関しては昨日揃えておきましたので後は作るだけですわ。
ゲーム画面では材料と量を選択して実行ボタンを押し、あとは定期的に魔力を流し込めばよかったのですけれども、現実になると材料を切ったり抽出したり乾燥させたり砕いたり、煮込んだり焼いたり炙ったり、その他様々な工程が必要でございますのでやはりゲームとは違って現実だと思い知らされてしまいますわ。
もっともわたくしの場合は魔法で工程を自動で行い、実際に苦労する面といえば魔力を注ぐ行為だけでよいのでだいぶ楽なのですけれどもね。
下準備した材料を鍋に入れて木べらでぐるぐると絶対にこげないようにかき混ぜつつ煮込んで魔力を注ぎ、世界樹の新芽の朝露を投入いたしますと、ほんわりと鍋の中身が発光します。
さて、完成まで七十二時間ですが、その間注いでいる魔力が無くならないように定期的に注がなければいけませんの。
それが非常に面倒くさいのですわ。
作成するものによって注ぎ込める上限が決まっておりまして、上限から十二時間で注いだ魔力が無くなってしまいますので、完成させるためには絶対に魔力を注ぐのを忘れてはいけませんし、材料や量、工程が完璧で尚且つ魔力が無くなっていない状態でも自分のレベルによっては作成に失敗するということは往々にしてございますわ。
一般的には、ですけれどもね。
わたくしの拠点にあるこの時鏡の錬金工房には魔力切れにならない限り失敗しないという特典がございます。
また、わたくしは持っておりませんが時空の錬金工房というものでは、魔力切れになった場合その時点で作成が止まり、魔力が再び注がれると作成が再開するという特典が付いているものもございますわ。
どちらもイベントで一位になったユーザーが報酬で得ることのできた施設でございまして、多くのユーザーからはチート施設と言われております。
そして、多くのユーザーが勘違いなさっていましたが、どちらも作成する品物が100%成功するわけではございません。
わたくしの場合は魔力切れを起こせば失敗いたしますし、時空の錬金工房では材料や量、工程にミスがあれば作成に失敗いたします。
アイテムの作成は錬金工房主のレベルと作成するアイテムの作成難易度によって失敗率が決まりますが、運営(神)は100%の成功は認めていらっしゃいませんでしたのよ。




