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最推しが尊い4

「ブルーローズ様は、怖くはございませんか?」

「何がでしょう?」

「私は公爵家の息子とはいえ、魔法師団の第三師団に所属している人族です。多くの時間を戦いに、血に濡れた荒事に身を投じています。普通のご令嬢であれば嫌悪や恐怖の対象になるのでは?」

「まあ! おかしなことをおっしゃいますのね。魔法師団や騎士団の第三師団が常日頃最前線でご活躍なさるのはひとえにお国の為にございます。冒険者も確かに戦いに明け暮れる日々を送りますがそれは基本的には自分の利益につなげるため。けれども、公的機関に所属する第三師団の方々は違いますわ」


 どんなに稀少なドロップ品を得ても国に提出することが義務付けられており、それなのにも関わらず最前線で命を落とす危険性は冒険者と同じ。

 安定した高額な収入を得ることは出来るけれども、逆を言ってしまえば名誉とそれだけしか得ることが出来ないのです。

 冒険者になる方が一向に減らないのは、そう言ったしがらみよりも己の利益を優先したいと思う方がいらっしゃるからでございます。

 だって、公的機関に所属しているわけではない冒険者の方々は、ドロップしたものはご自分の采配でいかようにでも出来るのですもの。


「お国の為に戦っている方を称えこそすれ、嫌悪や恐怖するなんてそのような愚か者ではございませんわ。上辺だけを見て騒ぐそこら辺の方々と一緒にされては困りますのよ。わたくしはエッシャル大公女、すなわち王族の女なのですから」


 背後を振り返って悠然と微笑んでそう言うと、スピラエ様は驚いたように一度目を瞬かせた後、流れるように地面に足を付き傅きました。


「私の考えが甘く、ブルーローズ様にご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。大公女様が、王族の姫君が我々の事をそのようにご理解くださっていること、大変誉に存じます」


 まじめですわ。流石はわたくしの最推し、とても誠実でまじめですわ。


「今後も皆様のご活躍を応援しております」

「はい。ブルーローズ様が我々を気にかけてくださること、他の者にも必ずや伝えさせていただきます」

「ふふ、それでしたら今度贈らせていただく魔道具も好意的に受け止めてくださいますかしら」

「魔道具ですか?」


 スピラエ様が顔を上げて困惑したように眉を下げました。


「魔道具といってもおまじないのような物ですわ。戦地から離れている時だけでも心安らかに眠りにつけるよう、あ、この言い方は誤解を与えてしまうかもしれませんわね。穏やかな眠りにつけるような魔道具を贈らせていただきますわ。第三師団の方々皆様に」

「五千人以上在籍しますが」

「騎士団の第三師団の方々を含めますと一万人以上と言う所ですわね」

「流石にエッシャル大公家でも、おまじない程度の魔道具とはいえそれほどの数を揃えるのは……」

「わたくし、不可能な事は口に致しませんわ。不言実行もよろしいけれど、わたくしは有言実行ですのよ」

「然様ですか」


 それでもスピラエ様はいま少し信じていらっしゃらないようですわね。

 確かに、簡単な魔道具ではありますが数が数ですので作成には時間がかかりますが、わたくしは本当に出来ないことを口にする愚か者ではございませんので、ちゃんとお約束は守りますわよ。

 うーん、一万個以上となると余裕を見て半年ほど見ればよいでしょうね。


「必ず贈らせていただきますので、お待ちくださいませね」

「かしこまりました」


 そう言って改めて頭を下げたスピラエ様に立っていただくように言って、わたくしとスピラエ様はしばらくの間、泉から聞こえてくる音に耳を傾けて何も話さずにゆっくりとした時間を過ごしました。


 一時間ほどゆっくりとした後に本日の庭園のご案内を終えて元の東屋まで戻ると、すっかり片付けられている東屋にラピスラズリが待機しております。


「本日はありがとうございました。また来月も楽しみにしておりますわ」

「こちらこそ有意義な時間を過ごさせていただきました。本日は話をするだけで終わってしまいましたが、来月はお二人に合わせた授業内容を考案した上でご訪問させていただきます」

「どうぞよろしくお願いいたします」


 わたくしが頭を下げますとスピラエ様も頭を深々と下げた後、ラピスラズリと一緒にこの離宮から出て行くべく東屋を離れていきましたので、わたくしはその後姿が見えなくなったところで、部屋に戻ることなく書架へ向かいました。

 結星の書架は外見は水晶で出来た建物なのですが、この建物そのものが書架なのでございます。

 小さな水晶の礼拝堂のような建物の入口に入りますと、そこには上下左右に無数の本が納められた棚がございますが、そこに辿り着くための階段や通路はございません。

 それでも、慣れない方がここに入り込んでしまうと書架の誘惑に負けて奥深くに入ってしまうという不思議な空間でございます。


「えっと、幻音流星でしたわね」


 スピラエ様がご希望の本のタイトルを呟きますと、脳内に該当する本がリストアップされて行きます。

 困りましたわ、同じタイトルの物で副題が違うものが十冊ほどございますけれど、どれがご希望なのでしょう?

 とりあえず全部持っていけばどれかは正解だとは思いますけれど、中には危険度ランクAやSの物はスピラエ様だけでしたらともかく、ベロニカ様の場合は本自体を見せるだけでも危険かもしれませんわね。

 ちょっと精神面でやられるだけならいいのですが、下手をすれば一発廃人コースの可能性もございますもの。

 お渡しするのはベロニカ様がいらっしゃらない時にするか、今回は危なさそうなものを選ばない方がよろしいかもしれませんわね。

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