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社交界デビュー2

 無様にも目の前で涙を流し始めた遺伝子上の父親の愛人に冷たい視線が注がれるのを確認して、この余興も飽きてきたとため息を吐き出しました。

 七歳の子供にやり込められて衆目の中で無様にも泣き始める場違いな平民に、ここに集まった誰が同情をするというのでしょうか。


「ブルーローズ、オダマキに謝罪しろ!」


 ああ、居ましたわね。同情というか状況を理解しない頭の弱い方が。


「わたくしは何か間違ったことを申しましたかしら? そもそも、平民の愛人を実の娘の大切な『社交界デビュー』のパーティーに連れてくるという事自体が常識を疑う行為ですわよね。それに、わたくしはお二人の仲を認めていないわけではございませんのよ? お爺様もおっしゃったように、本当に愛し合っていてご結婚なさりたいのであれば我がエッシャル大公家と縁を切って再婚なさればよろしいのです。それをなさらない選択をしたのはお父様ではございませんか」

「それは、私は父親としての責任があるから再婚できずにいるのだ」

「責任? 現状、エッシャル大公家の婿としてお父様が何かなさっていまして? 婿として社交界で人脈を築き上げることもろくに出来ず、かといって領地に赴き管理をなさっているわけでもございませんわよね? むしろ領地の事をきちんと把握すらなさっていないのではございませんか? 子育てに関してもわたくしを育ててくださったのはお母様と王宮の方々であり、お父様ではございません。その証拠に、お母様が亡くなった翌日にそちらの元娼婦の愛人と再婚したい、あまつさえその愛人の娘を養女にしたいと暴言をおっしゃってお爺様に王宮を追い出されて以降、本日まで一度たりともお会いしたことはございませんでしたわ」

「それはっ、お、お前が私を邪険に扱うから」

「そうよ、旦那様は優しいから貴女を孤児にしたくないからと私と結婚しないでいてくれるのに、あんまりじゃないっ。会わないでいたのも貴女の為を思ってよ」

「このわたくしがそちらの遺伝子上の父親と縁が切れるだけで孤児になると? ふふ、随分と面白いことをおっしゃいますのね。流石は平民というべきなのでしょうか」


 わたくしがクスクスと笑うと会場にいらっしゃる方々の多くも同じように笑い声を漏らし始めました。


「エッシャル大公家の娘、すなわち王族であるわたくしが孤児になると本当に思っていらっしゃるのでしたら、随分と王族をばかになさっていらっしゃいますのね」

「だって、旦那様に捨てられたら貴女は身寄りが無くなるのよ」

「お爺様か伯父様に新しく正式に保護者になっていただくだけですが、何か問題がありまして? ああ、アンデルフ皇国の親類に保護者になっていただくという手段もございましてよ? どちらにせよ、遺伝子上の父親と縁を切った程度でわたくしが孤児になる事は絶対にございませんの」


 なんでしたら、今この場で縁を切っていただいてよろしいのですわよ?

 そう言って遺伝子上の父親を見れば、未だに怒りに顔を赤くしてブルブルと体を震えさせておりますけれども、その程度の威嚇でわたくしが感情を動かすと思っているのでしょうか?

 それに、むしろ孤児になるのはヒロインであるお二人の娘でしてよ?

 『花と星の乙女』が始まる時、ヒロインは『両親の残した遺産』で学園に入学しておりますし、住んでいる家も両親が残した平民が暮らすには立派なものという設定でございます。

 ゲーム開始当初は使用人はいませんけれども、進めて行くうちに家を拡張していったり、使用人を雇ったりしていくことが出来ます。

 ヒロインは唯一の肉親である異母姉であるブルーローズは王宮で何不自由なく暮らしているのに、自分は両親も亡くし頼る人もいない中必死に生きて行くしかないと攻略対象に訴えることが多々ございますが、学園に通うことが出来、尚且つ生活に困らない財産を残され、住むに困らない家があるということが、一般的な孤児と比べてどれだけ恵まれているのかよく考えるべきですわよね。

 それでいて、本当の孤児上がりの攻略対象に対しては同じように両親がいないながらも自分がどれだけ恵まれているのかと『両親に』感謝をするのです。

 ゲームをしていた時も思いましたが、感謝をするのはお金を出したエッシャル大公家ですわよね。

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