第2話:【ダブル・イグニッション】 〜夢見た光、二人のガイアード〜
「流星……この予備エネルギーを取り込んで、再変身しろっ! それまで俺が何とかするぜっ!」
俺がライターの火花を突き出すと、システムを介して純白のエネルギーの奔流が放たれ、倒れ伏す流星の胸のコアへと激しく注ぎ込まれた。パチパチと青かった火花が、黄金色の輝きへと変わっていく。
「な、なんだこのエネルギーは……! 体の内側から、力が、溢れてくる……っ!」
驚愕する流星を背に、俺はバルバロッサの巨躯へと向き直った。大剣が風を切り、生身の俺のすぐ掠れをすり抜けてコンクリートを爆砕する。破片が頬を切り裂き、血が流れる。恐怖で心臓がうるさいほど跳ねていた。だけど、不思議と笑みがこぼれた。
「この物語は何度も何度も読んだぜ……! バルバロッサ、お前の右肩の装甲の隙間、そこが冷却組織の排気口だろ! 20話で流星に壊される前の今なら、そこが一番脆いんだよ!」
「貴様、なぜそれを……っ! どこまでも不快な虫ケラめ!」
大河内のようなモブの悪意とは違う、世界を滅ぼすための圧倒的な暴力。
激昂したバルバロッサが、大剣を上段に構える。まともに喰らえば、生身の俺の肉体なんて一瞬で消し炭だ。流星の再起動完了まで、あと数十秒。生身の俺にこれ以上の時間稼ぎは不可能――。
(……いや、本当に不可能か?)
胸の奥で、ガキの頃からずっと燻っていた熱い『妄想』が、マグマのように暴れだした。
俺は、自分がもしヒーローになれたら、なんて妄想さえしてた!
いや、夢の中では、何回だって変身してたさ……っ!
誰かを守るために傷だらけになって、それでも不敵に笑って立ち上がる。そんなガイアードの姿に憧れて、教科書の隅にオリジナルの変身ベルトの絵を描いていたあの頃の俺が、脳裏を駆け巡る。
「システムっ……俺は、この世界で変身出来るか!?」
無謀な問いかけ。だが、この世界を動かしているのは、他でもない俺の『原作愛』だ。
【システム:干渉者の要求を確認。――通常レギュレーションでは不可能です。……しかし、干渉者の脳内にある『オリジナル・プロット(妄想)』のデータ濃度が、世界の許容量を突破しています】
脳内に、かつてないほど激しい電子火花が散る。
【判定:世界線のバグを逆利用し、あなたの妄想を現実化します。アイテムを具現化してください。……ただし、変身の反動は生身の精神に100%直撃します】
「上等だ!! 痛みを怖がってオタクが務まるかよ!!」
俺は右手を腰へと突き出した。
すると、現実世界から持ち込んだライターが、俺の妄想の光を吸い込んでガキバキと変形し、腰回りを包み込む無骨な鉄塊――**『プロット・ドライバー(変身ベルト)』**へと具現化した。
「何っ……!? 奴の手にあるのは、我が組織のテクノロジーではないぞ!?」
バルバロッサが驚愕に目を剥く。
「流星! お前の背中は、今日から俺が守る!」
背後で、完全にエネルギーを充填させた流星が、ボロボロになりながらもニヤリと不敵に笑い、立ち上がるのが分かった。
「へっ……おい、新入り。お前のそのダサいベルト、なかなかイカしてるじゃねえか」
二人の意志が、硝煙の戦場で一つに重なる。
俺はライター型のキーをベルトへと叩き込み、流星は愛車から引き抜いたギアを天へと掲げた。
「「変身っっ!!」」
(つづく)




