少年の決意
そして、ついに満月の日がやってきた。
この日も変わらずにショーンはドールハウスへやってきた。
『ソルさん。こんにちは』
『おう。また来たのか!今日はいい日だなー』
『どうしたんです!?気味が悪いこと言って!
お医者様呼ばないと。顔色も前よりひどいです。少し待ってて下さい』
『待ってくれ!!大丈夫だから。今日で全てが終わるんだ』
『終わるって……なにが?何をする気なんですか?』
『お前は知らなくていい。これは私だけの問題だ』
『違います!もうあなたと私は知り合ってしまったじゃないですか。
そんな関係ないなんて言わないでください』
『すまない。だが、やっぱり言うことはできない。
ただ、安心してくれ。危ないことはしないから。お前の前からいなくなることはないさ』
そう。大丈夫だ。今日はマリアが帰ってくるだけなんだから。
ショーンは店にいる間、ずっとソルを観察していた。
珍しくご機嫌なソルはやはり異様だ。
生気のない青白い顔に似つかわしくない笑顔を貼り付けていたことからも、ショーンはソルが心配でたまらなかった。短い時間しか一緒にいなかったし、ショーン自身はソルの作った人形に惚れただけ。
それだけのはずだった。
なのに、いつからかソルのことを父親のように思っていたんだと思う。
不摂生な生活を送る彼をみて世話を焼き、日に日に弱っていく彼をみて胸を痛め、彼に拒絶のような感情を向けられるとひどく泣きたくなってしまった。
『本当に大丈夫なのでしょうか』
取り返しのつかない事態になってしまわないか、ショーンは自身の周りに漂うまとわりつくような良くない空気を感じ取っていた。
『ショーン。今日も早く店を閉める』
『それは構いませんけど……ソルさんはここを閉めた後何をするつもりなのか、やっぱり僕に話すつもりは』
『ない。いくらお前でも絶対に。いいか、今夜はこの店の近くに来るんじゃないぞ。
いや、今夜だけじゃない。明日も一日閉めるからここには来るな。わかったな』
そう言われてしまったものの、約束したわけじゃないと言い訳をして、どうしてもソルの様子が気になったショーンは、今夜はドールハウスの側彼のことを見守りながら過ごすことに決めた。
『中で何が起きるかまではわからなくとも、何かあればきっと自分にはわかるはずだ』
根拠のない確信がショーンにはあった。
そのため、いつでも駆けつけられる準備をしておくのだった。




