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95/215

95,『邪神のヨグちゃん強すぎ問題』。

 


 地下の隠し通路を進む。

 ここまで降りてくると、実に静かなものだ。


 こちらのメンバーは、ユリシア、リスダン、サラマンダー、そしてヨグ。

 ヨグちゃんは、気づいたらいた。混沌ハオスとの激しいバトル直後ながら、それを感じさせない様子。となると、これはもう正直、卑怯すぎるほど最強すぎて、なんだか申し訳なく思えてくるメンバーである。


 申し訳ないなぁ。


 申し訳ない気持ちいっぱいで隠しルートを進むと、リスダンとサラマンダーが立ち止まる。リスダンは剣を抜き放ち、サラマンダーも両手に火炎をまとわせる。(ちなみにサラマンダー、美女モードの状態でも火炎魔導を使えるが、その火力は火竜モードのときの2割程度)。

 臨戦態勢の二人に対し、ヨグは歩き続けようとして立ち止まり、きょとんとした顔で振り返った。


「なに?」


 リスダンは意外そうに言う。


「ヨグ殿は気づかれないのか? この先に、恐ろしい殺気を放っている『何か』がいることに」


「…………なにも」


 そのとき私は、地味な落とし穴に気付いた。

 すなわち『邪神のヨグさん強すぎ問題』である。強すぎるため、一般的には脅威といえる敵が、ヨグからしたら『気にとめる必要のない雑魚』。よってわざわざ事前に感知することもないのである。


 私は、ここはリーダーらしく言ったものである。


「とにかく、一本通行なんだから、進むしかないよ!」


 とりあえずリスダンとサラマンダーの後ろに隠れつつ進む。ここらへん、私は慎重肌なのである。この慎重な進行のなか、ヨグだけが先行している。

 そのなか、隠し通路の先に、男があらわれる。なんというか、芸のない登場だなぁ。とはいえ、この隠しルートは一本道なわけだし、堂々と待っているか、潜んでいるかの二択しかないわけだけども。しかし芸がないぞ。


 その男は、20代の半ば、なぜか分からないけど、偉そうだ。

 で、下品に笑いだす。


「はっはっはっ! まてまて! 貴様らは、罠にかかったのだ! ここにいるのは〈天路歴程〉は、ナンバーⅣ、怒涛のアロン様とは、オレのことよ!!」


 勢いはいいね。出オチ感はあるけど、だけど私は、嫌いじゃないよ。


 ヨグは歩く速度を止めず、とくに見やることもなく、邪神ハ堂流(じゃしんはどうりゅう)参式(さんしき)《弾く手》で、アロンの肉体を欠片もなく吹き飛ばしてしまった。そして何事もなかったかのように、歩いていく。


「ヨグちゃん、さすがだなぁ~」


 しかしユリシアは、別の評価のようだ。


「いえ、いまのは不用意すぎますわ。ヨグは、あまりに強すぎるため、下等な者たちを軽んじすぎです。しかしながら、蟻のひとかみというものがあります」


「あ、それはさっき、私も思ったよ。『ヨグ強すぎ問題』ね」


「小さな虫が、致死性の毒を隠しもっていることもあります。それに、先ほどの男、名乗りに偽りがなければ、〈天路歴程〉の四番手、ただの雑魚とは思えません」


 というユリシアの危惧に答えるようにして、どこからともなく、先ほどの男──〈天路歴程〉のナンバーⅣのアロンの声が響き渡った。


「はっはっはっはっ! かかったなぁぁ!!! このおれの、特殊技スキルは、特別仕様よ! 〈教主〉さまさえも一目おいてくださったその能力とは──『オレを殺した者は強制的に死ぬ』だ! オレを殺したことで、お前はもう詰んでいるんだよ、邪神ヨグぅぅぅぅぅぅう!」


 私はユリシアと顔をみあわせた。


「え、ヨグちゃん、詰まれた?」


「かもしれませんわ」


 それは困る!


 刹那。

〔四つの災厄〕あらため〔三大災厄〕がひとつ不可侵の兎(リミテッド)が現れる。

 巨大な懐中時計の針が戻り──時が巻き戻される。


 ヨグがアロンを殺す直前まで──つまりヨグが邪神ハ堂流(じゃしんはどうりゅう)参式(さんしき)《弾く手》を使い、アロンを粉みじんにする直前まで。


 そして私は言った。


「ヨグちゃん、気をつけて。そいつ殺すと、特殊技スキルによって、逆に『死んだ』ことにされるよ」


 ヨグは私を見てから、アロンを見た。


「では、殺さずに異界に飛ばす」


 アロンは「えっ!」という顔をする。


邪神ハ堂流(じゃしんはどうりゅう)零式(ぜろしき)《異界転移》」


 刹那、アロンを見えない巨大な手がつかみ、どこへと消してしまった。すなわち、異界へと飛ばしてしまったようだ。


 ヨグが何事もなかったかのように歩き出す。


 私はユリシアに、何が起きたのか説明した。時が巻き戻ったため、アロンの特殊技(スキル)のことは、知らないわけだからね。


 説明を聞き終えたユリシアは、溜息まじりに言った。


「お姉さまと邪神ヨグが組まれますと、敵がかわいそうになってきますわね」


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