92,思考放棄!!
「まってー。アンバーの純潔がピンチとは、どいうこと?」
ガリーナが気怠そうに言う。
「うーん。よくわかんないけど、男どもにつかまって、いまにも回されそうだったのよねぇ~」
大変だ。アンバーの純潔の危険が危ない。わが大・親・友の純潔が──そういえばアンバーって、王国軍の王都守護隊に属していたのに、いまさっきまで失念していた。このことは黙っておこう。
「ガリーナ、アンバーはどこにいるの?」
ガリーナが、アンバーの純潔が危ないポイントを言う
私はサラマンダーに、火竜化を命じてから、
「アンバーの純潔を守るため、そこを焼き払うのだ!」
「あの、お姉さま。そのようなことをしては、わたくしの計画が崩れるのですが。いまサラマンダーを投入するのは──」
「リスダン、ドラゴ、サラマンダーの業火のなか、アンバーを救出してくるのだ。さぁ、行きなさい。ガリーナ、私たちもいくよ!!!」
「はぁい、冥王ちゃん」
ガリーナが私の後ろから抱き着いてきて、翼をひろげる。
ユリシアが慌てて止めてきた。
「お待ちください、お姉さま、どこに行くのですの? こら、ガリーナ。お姉さまを連れていくのではありません」
「だけど、アタシの主君は、あなたじゃないのよねぇ」
ローレライが、ユリシアの肩をつかんだ。
「誰もライラ様を止めることはできません。ライラ様は、お友達を助けるため、行かれるのです…………もっといい友達がいてもいいのに」
「冥王とは孤独なものなのですのよ」
ガリーナが飛翔し、私は『アンバーの純潔が危ない』ポイントまで向かった。
そこではすでにサラマンダーが火炎を噴き出し、そこにいた『よくわかんない人たち』を燃やしている。よくよく考えると、ここにいた人たち全員が、『アンバーの純潔が危ない』の犯人たちかは、よくわかんない。
よくわかんないけども、とりあえず焼いておけば、アンバーの純潔を汚すことはできないのだ。なんて、シンプルな思想だろう。それに市民でないことは確かだし(燃えているのは全員が軍服を着ているので、予備軍あたりかな)。
建物に入る。リスダンが、アンバーの純潔を襲おうとしていた男たちを斬り殺したところだった。
「アンバー!」
半裸のアンバーが駆けてきて、私に抱き着く。
「ライラ! こんなところで何しているのよ?」
「それはもう、アンバーの純潔を助けにきたんだよ! 純潔の危険が危なかったから!」
「え、あたしの? 確かに、あたしはいま、襲われそうだったけども。だけど──それだけのために、この街区一帯を焼き払っているの?」
「そうだけど。ここにいたのは、予備軍の人たち?」
「いえ、厳密にはそういうわけでもないわ」
アンバーの説明では、予備軍から離脱した部隊が、この一帯を制圧していたそうだ。アンバーは運悪く、そこの連中につかまり、ガリーナが目撃した『アンバーの純潔が危ない』状態に至ったという。しかし事が行われる前に助けられて良かった。
「さぁ、アンバーも救出したことだし、帰るとしよう」
「ライラ…………あの、助けてくれて、ありがとう。だけど、ちょっと大変なことになっているわよ?」
建物の窓から外を見やる。サラマンダーは大いに張り切り、この一帯にいた男たちを焼き殺している。予備軍から離脱し、やりたい放題していたようなので、別に火達磨にしても大丈夫な人たちだ。さらにドラゴもやはり大いに張り切り、片っ端からその兵たちをワンパン殺戮している。
「うーん。細かいことは気にしなくていいよ。私は、細かいことは気にしない精神でいくよ。そうだ、それがいい!」
「え? あの、ライラ、大丈夫? 変なスイッチ入ってない?」
そこからまたガリーナに運んでもらった先は、王都内にある公園。先客に、予備軍の別部隊がいたので、ローレライの水流魔導で追い払ってもらう。それから私は、公園を見渡せる高い位置に降り立ち、ユリシアを呼んだ。
「ユリシアちゃん」
「はい、お姉さま」
「ゴチャゴチャ考えるのは、疲れたよ。ここからは思考放棄でいくよ。われわれはこれから、『圧倒的なる戦力』をもってして、敵に制圧された王宮区を、再制圧するよ。いいかな、ユリシアちゃん。私は、ここで出し惜しみする気はないよ」
「お姉さま、お心のままにお決めください。われわれは、お姉さまにどこまでも付き従うまでです」
「では、やろっか。来たれ、わが眷属さんたちーーー!!!」
……………何も起こらない。
「少々、集結に時間がかかりますのよ、お姉さま」
「じゃ、昼寝でもしよう」
3時間ほど昼寝してから、気持ちよく起きる。
すると王都公園には、あふれんばかりの冥王の眷属たちが集結していた。
骸骨兵士、ゴブリン、オーク、トロール。全軍が武装しており、その兵数はユリシアの報告では約30万。公園内にはおさまらず、外の路地などにまであふれている。
私は、とくに感慨深くもなく、なんとなく眺めている。
ユリシアが少しばかり、興奮した様子で言った。
「誰も、お姉さまを止めることはできませんわ」
「うーん。コメントに困る」
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