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83/215

83,地下銀行。

 


 とりあえず、リキュール王国の首都には向かうことになった。

 ただし護衛対象であるエマ王女はつれていかずに。


 振り返ってみると──はじめに配属されたダードン要塞では陽動に引っかかって留守にしている間に陥落(すぐに奪還したけども)。

 次の任地では、はじめの命令であった交渉役に赴いたところ、寝返る形となり、そのときの直属上官の首を刎ねちゃった(クラウス殿下の許可があったとはいえ)。

 そして今回の護衛任務では、はじめて早々に〈探索迷宮ダンジョン〉に保護、見ようによっては拉致であり、しかも勝手に亡命させることにしている(予定)。


 うーーーーーん。まって、私って、すっごくダメな士官じゃない? なんでこれで不名誉除隊になるかわりに大尉まで出世したんだろう。すごく不思議だなぁ。


 ちなみにリキュール国の首都に赴いたメンバーは、私以外は、ユリシア、リスダン、ドラゴ、サラマンダー(今は美女モード)、ビリーロスト(今は人間モード)、チキータ、そして邪神ヨグ。これは戦力重視パーティ。

 やろうと思えば、国とだって戦争できるパーティ──でもある。もちろん、私は平和主義者なので、そんなことはしません。


「ヨグちゃん、平和第一だよ。命よりも大事なもの、それは?」


「明日焼くクッキー」


「はい違います。平和です。すべてより大事なのは、あとくされのない平和です」


 リキュール国の主要産業の中に、銀行業という変わった立ち位置のものがある。かつてまだこの大陸が戦乱の渦の中にあったときも、リキュール国だけは完全中立をうたい、さまざまな国家の王侯貴族から、『家宝かそれに匹敵するもの』を託され、地下銀行の貸し金庫にしまわれたという。


 そしてこの金庫を護るためだけに、リキュール国の国軍は存在するのだ。われわれが目指すのは、この王国地下銀行の本部。

 なぜかそこがエマ王女の目的地でもあった。


 地下銀行といっても、入口は地上にある。一説では地下銀行とは、地下に向かって掘られたアリの巣状であり、全容を知る者はすでにいないとか。いやいや、それだと見つからなかった貸し金庫とかありそうだよね。ある意味では、すでにダンジョンでは? 


 とにかく地下銀行の地上一階にて、エマ王女の『受け渡し者』と会う。なぜか国軍から、精鋭分隊を引き連れていた。『受け渡し者』は、「当行にようこそ」と挨拶し、ここの副頭取と名乗った。なんとも長身痩躯で、2メートル以上はある高さから見下ろされる。それはいいんだけど、突風が吹いたら飛んでいきそうな人だなぁ。


「私はロゴス王国軍より派遣された、オブリビオン大尉です。第三王女の護送任務を託されました」


 副頭取は周囲を見回す。


「はて。その第三王女は、どちらにおいでかな?」


「ええ。近くまでは来ているのですが。その前に、なぜエマ王女の目的地がこの銀行なのかを、改めて説明していただけますか? そうですね。ロゴスの王政府からは、あなたがたから詳しく事情を聴くように、と命じられていまして」


「いえ、それはないでしょう。そのような命令があるはずがない。あなたはただの護衛であり、運搬役にすぎないのだ。どうも変わった構成の隊のようですが──とにかく、あなたがたは、『詳しい事情』など知る必要がない。あなたがたは、ただの建物を建てる要員にすぎない。建築作業をするだけだ。その中で行われることを知る必要はない」


「はぁ…………………すると、どうしましょう。私は、こう言う予定なんですよ。打合せがありまして。あなたがたが、『詳しい事情』を説明してくれなかったら、私はこう言う。ではエマ王女をお渡しするわけにはいきませんね。そして回れ右する」


 はい回れ右。


「待ちたまえ」


 と、副頭取がいら立った様子で止めてくる。


「そんなことはできないはずだ。あなたがたは、ただ命令に忠実な軍人のはず。ここで我々にエマ王女を引き渡さなければ、それは命令違反となる。軍法会議だけでは済まないぞ」


 私は振り返った。このときヨグは、退屈そうにあくびしている。そばでは、サラマンダーが恐る恐ると、ヨグを凝視している。ヨグが暴走しそうになったら、それを止める役として、サラマンダーを指名したのだ。だからサラマンダーの心の声を代弁するならば、


「お願いだから、何もしないでっっ!!!!」


 となるのだろうなぁ。


 一方リスダンは、副頭取が連れてきている精鋭兵たちへ、鋭い視線を向けている。その精鋭兵たちが、緩やかに広がり、私たちを取り囲むような配置へと移動していく。

 ドラゴは、いまにもバトルしたそうにウズウズしている。

 ビリーロストは、銀行受付に赤毛の美人を見つけ、自分の欲求と戦っている。

 すでにチキータだけが、特別任務を帯びて、出陣していた。そしてユリシアは、何やら一考している。


 私は、とくにやることもなくなったので、頭をかいた。


「で?」


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