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82/215

82,鬼畜の血がね。

 


 ガリーナがとってきた捕虜は3人。以前、捕虜だと思ったらなりすました〈天路歴程〉だったこともあり、ユリシアは私に距離をとらせる。


 しばしユリシアが尋問していると、捕虜たちが苦しみだして死んだ。それを眺めといると、デジャヴ感がありあり。まぁ、私の記憶を刺激している例は、頭部爆発だったけども。


 ユリシアがやれやれという様子で歩いてくる。


「奥歯に毒薬が仕込まれていて、それをかみ砕くと死ねるわけです。口の中を調べさせれば良かったですわね。しかし、殺しの技量は低くとも、気合だけはある者たちでした。いえ『殺しの技量』の低さは、リスダンとドラゴと比較してしまえば、そうなるでしょう。ですので、彼らはプロの襲撃者たち──傭兵でしょう」


「暗殺者ではなくて?」


「暗殺者でしたら、旅の途中で襲撃してきたりはしないでしょう。たとえば寝込みを襲うでしょう。しかしながら、傭兵というのは、報酬のためには動きますが、わざわざ自害まではしないのですがね」


「ふむふむ。トータルでいうと、どういうことかなぁ、ユリシア先生」


「よくわかりませんが、エマ王女には裏があるようですわね。どうも〈王の右手〉から、お荷物を押し付けられたという気がしてきましたわ」


「まぁいいや。とにかく、リキュール国まで護衛することだよ」


「ですが、こちらの旅程が筒抜けだったことは確かですわね。〈王の右手〉が意図的に流したのかは分かりませんが。仕方ありません。計画変更として、お姉さまの初期プランでいきましょう」


「私、プランなんか出したことあったっけ?」


 私の初期プランというのは、〈探索迷宮(ダンジョン)〉を経由することだった。まずは入口を作るため、はじめに見つけた宿の部屋を借りる。とまどっているエマ王女を連れて、〈探索迷宮(ダンジョン)〉内へと降りる。マーヴィンが待っており、まずは入ってきた入口を消してもらう。


「リキュール国の首都まで入口をつなげてほしいんだけどね」


「かしこまりました、冥王陛下」


 しゃべるカラスに驚きつつ、さらにエマ王女が驚いたのは、


「オブリビオン大尉さん。あなたは王様なのです?」


「えーー、複雑なんですよ、王女殿下」


「オブリビオン大尉。あなたが王様でしたら、わたしを臣下にしてほしいのです。そうすれば、すべての問題が解決するのです」


 おかしな方向に話が転がらない前に、軌道を修正しておこう。


「問題の内容が分からないので、なんとも言いかねますが。王女殿下は、ロゴス王国の大事な姫様ですよ」


 エマ王女はしゅんとした。


「だけども、わたしは母と会えないのです。母と会いたいのですが、協力してくれませんか、冥王陛下?」


 するとユリシアが、エマを抱きしめた。


「ご安心ください、王女殿下。わが(あるじ)であるお姉さま、すなわちライラ・オブリビオン大尉が、あなたの力になりますわ」


 おお、これは意外な展開。

 その後、私とユリシアは、エマ王女から離れたところまで移動。このときエマ王女の相手は、同じく王女であるローレライが担当。ただし、次期女王のローレライと、第三王女として政略結婚の道しかないだろうエマとでは、だいぶ立場の違う王女かもだけども。


「私は感動したよ、ユリシアちゃん。鬼畜の血が流れていると思っていたユリシアも、エマ王女からの友情には応えてあげるんだね。事情はよくわからないけども、エマ王女の力になってあげようだなんて」


 ユリシアは小首をかしげた。


「何か勘違いされているようですわね、お姉さま。エマ王女には、どうやら利用価値がありそうです。エマ王女の母親は、王妃ではありません。先ほどのエマ王女の発言から明らかです。『母に会えない』。しかしエマ王女は王宮暮らしですので、王妃に会えないとは考えられないですもの」


「うん、そうだね」


「しかしながら、これ自体は、とくに驚くことではありません。ただ──どうも、わたくしは、エマ王女の母親にこそ、今回のすべての謎を解くカギが隠されていると思いますのよ。すなわち、先ほどの襲撃者たちは、エマ王女を殺そうとしたのではなく、拉致しようとしたのではないかと。さらにいえば、取り返そうとしたのかもしれません」


「どーいうこと?」


「エマ王女は、王政府がとった人質なのかもしれませんわ」


 ユリシアの言うことは、よく分からない。いや、なんとなく分かるんだけども、中心となる部分がまだ闇の中だから。そして私は、そういった見えない部分を補う想像力は持ち合わせていないのだ。


「結論からいうと、リキュール国にはいくの、行かないの?」


 ユリシアは一考する様子で、エマ王女へと視線を転じた。

 エマ王女は、ローレライと楽しそうにおしゃべりしている。二人の王女、気があったようだ。


「亡命させましょう」


「誰を?」


「お姉さま、エマ王女に決まっていますのよ。この会話の流れで、たとえばビリーロストを亡命させるとかいう話はいたしません」


「あのさ、ユリシアちゃん。私は冥王と呼ばれているけれども、自分の国家はもってないからね。それとも、この〈探索迷宮(ダンジョン)〉にかくまうの?」


「いえいえ。お姉さま、お忘れですの? お姉さまの眷属の中には、一国の次期女王がいるではありませんか。その者の国に、亡命させればよろしいのです」


 私は、唖然とした。

 え、それってローレライのこと?


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