67,最終戦争?
ローレライのおかげで、衝撃波からなんとか脱した。だがまだ危険領域からは、脱していないという。
ローレライいわく、この危険領域の見積もりは、ラン要塞を中心として、半径100キロだとか。つまりこの危険領域内に暮らしている、すべての生命は、命の危機ということだ。魔神と死竜という、双方の眷属の〔災害〕級がぶつかりあったため、これは致し方ないのだとか。
「死竜だけでも冥界に戻せば、魔神も戦う相手がいなくなるでしょ」
「あの、私、思うんですけども、それはまずいかと。つまりですね、そのー。魔神が、邪神のコントロール下にあるか不明なんですよ。仮に邪神が制御していなかったら、死竜という対抗要員がいなくなることで、えーと、この王国全土が死滅させられるかもですぅぅぅぅ!!」
「それは…………困るなぁ」
ローレライに運ばれて、危険領域から出る。私はガリーナが合流してくるものと思ったけども、いっこうに現れなかった。あの衝撃波に巻き込まれたあと、ガリーナともはぐれたきりだ。ガリーナも心配だけども、真祖だし大丈夫な気もする。
それよりユリシアなんかは、こういう荒事には不向きな身体なんだから、いまごろどうしているか不安だ。バラバラにされてなければいいけど。
王都に戻ってきた。なんと平和な。ちょと数百キロ行ったところでは、〔災厄〕同士が戦争しているのに。
アンバーとルームシェアしている部屋に戻る。
リビングで、アンバーが大の字で倒れているではないか。
「え、死んだの、アンバー?」
「生きてるわよ。暑くて何もやる気がでないの。休暇だけども、どこに行く気もしないわ。ところで、どうしたの?」
「ここにはまだニュースが届いてないんだね。それは当然か。まぁいいや。ちょっと、そこのベッドで眠るから、邪魔しないで」
「邪魔しないわよ、こうも暑いんじゃ動く気もしないし」
しばらく睡眠をとってから起きると、リビングにはアンバーとローレライ以外に、リスダンが待っていた。
「リスダン、無事だったんだねっ!」
リスダンが跪く。
「わが君、ご無事でなによりです。お眠りになられていたので、こちらで待たせていただきました」
リスダンももう少しくだけてほしいんだけども、こればかりは強制できない。そんなことよりも、
「それでほかのみんなは?」
「私が生存を確認できたのは、ヨーナスとビリーロストだけです。ただしビリーロストは、八本の脚のうち半分を失い、それが原因で人型に戻れない状況ですが」
よく状況の分かっていないアンバーが、怪訝そうに言った。
「八本の脚って、なに? 蜘蛛じゃあるまいし?」
そんなアンバーのもとに、王国軍の王都駐屯部隊から急使が来た。アンバーは命令書を受け取ってから、私に不可解そうな顔で言ってきた。
「ねぇライラ、王国内で未確認の災害が発生しているため呼び出されたんだけど。もしかして、あなたは関係していないわよね?」
「関係してる」
「あー、あたしの出世道が途絶えたわ!! 王国に災害起こしたネクロマンサーとルームシェアしているなんて!!」
と嘆きながら、アンバーが出て行った。それを見送ってから、アンバーの平常運動にはホッとするなぁ、と思うわけだよ。
「ところでリスダン、どうやってここに?」
「〈探索迷宮〉を経由してきました」
なるほど、〈探索迷宮〉経由がいちばん手っ取り早いよね。というわけで、私はさっそくリスダンとローレライとともに〈探索迷宮〉に降りた。
巨大蜘蛛がひっくり返って、苦しそうにのたうっている。
「ビリーロスト、大丈夫? しっかりしてよ。ところで蜘蛛だと意思疎通できないの?」
一方ヨーナスは、遠慮深そうにちょっと離れたところで跪いていた。
「陛下、どうかこの私にご命令ください。魔神と死竜が争う地へと戻り、取り残された仲間を救出してこいと。どうか陛下、出陣させてください」
「ヨーナス、まぁちょっと休んでいて。いまあそこに戻るのは、自殺行為でしょう。みんなは自力で戻れるはずだよ。そう信じてる。しかし、ふぅむ」
ローレライが言った。
「あの、ライラ様。私はいったん、海底都市に戻り、お母さま──人魚族の女王に、状況を伝えてきます。場合によっては、あの、これはその──ライラ様と邪神との最終戦争が始まったかもしれませんので。ライラ様のために、人魚軍に出撃準備させる必要もありますし」
「…………最終戦争かもしれないの?」
「はい」
「…………リスダン」
「はっ、わが君、ここに」
「会いにいくよ、邪神に。最終戦争なんて、ごめんこうむる!」
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