52,かつてはヤリヤリだった。
久しぶりに王都に戻り、シルバースター勲章を頂戴する。
王都の戦功章の中では最も『出回っている』勲章なので、与えてくれたのも王政府の大臣だったけども。
別に国王に謁見したいわけではないけども、ユリシアなんかは『お姉さまが殺そうと思えばいつでも殺せる王の顔を見ることができず残念ですわ』と、反逆罪っぽいことを言っていた。
あと中尉に昇進した。
久しぶりのアンバーはまだ士官候補生だったので、
「おかしいわ! あたしたち大親友なのに! どうしてライラだけが先に昇進するの! それももう中尉って! ひどいわ、裏切りよ、死ね!」
と怒られたけども。
「アンバーの、友達甲斐のないところは相変わらずですのね。せめて形ばかりでも、おめでとう、とは言えないのでしょうか?」
とユリシアは言うけども、アンバーのこの『まんま』な性格が、私は好きだよ。案外、アンバーは本当に、かけがえのない親友なのかもしれないね。
ところで──王都に戻って早々に、転属が決まった。ダードン要塞に戻るつもりだったので、ちょっと残念。
ようやくあそこでの生活に慣れたというのに。これってもしかして、転勤族? 軍生活って、そういうものだっけ?
「将軍として、どこかの軍事拠点を任されるようになれば、一か所に腰を落ち着けることもできるのではないでしょうか?」とユリシア。
「うーん。ひとつところに落ち着くためには、出世しなきゃダメなのかぁ。しかも階級が上がればそのぶん、責任は重大になるよねー。困ったなぁ」
ところで、私の新たな任地は、戦地だった。
「戦争していたの、ロゴス王国って? 平和万歳な国だと思っていたのに」
「現在、ロゴスは領土拡張を目指した軍事戦略、つまるところ侵略行為は行っていませんが、かつてはヤリヤリでしたので」
「え。侵略行為を頻繁に繰り返すことを、ヤリヤリというの? なんか卑猥だなぁ」
「わたくしの造語です」
「ヤリヤリだったのか、ロゴス」
「そのため、いまでも各地で併呑後に残った反乱勢力はあります。つまるところ一部とはいえ内戦が起きている時点で、国としては失格ですのよ。国民同士が殺しあうわけですので」
「いずれにせよ、そんな内戦中のところに行かされるなんて。今から気が滅入るなぁ」
しかし、私は士官を続けないといけないんだよねぇ。士官学校を無事に卒業し、一族の借金は返しきった。だから私は退官して、のんびり古本屋とか開いてもいいんだよ。本来ならば。
しかし私は、ネクロマンサーだからね。ユリシア、リスダン、ドラゴ──とくに〔不死者〕たちに対して、責任がある。
それはつまるところ、彼らに『活躍の場』を与えることだよ。たとえば私が古本屋でもはじめて、ユリシアの頭脳や、リスダンの剣技や、ドラゴの格闘術が役立つかな? 宝の持ち腐れになることは、考えるまでもないことだよね。
結局のところ、私は軍人を続けて、ちょっとばかり戦争なんかにかかわったりする。その過程で、邪神の勢力や、〈古き者たち〉や、〈ベルリン〉なんかと戦ったりもする。そういう生活を維持することで、はじめてユリシアたちも生きてくる。
私はネクロマンサーとして、ユリシアたちを蘇らせちゃった責任を果たすため、いやだなぁと思いつつも、こんどは内戦中のところへ転属していくのだよ。やだなぁ。
気持ちをもりあげていこう。
転属先に向かいながら、その内戦とやらの情報に目を通す。
かつてケルゴという国があったが、半世紀前に、ロゴス王国が平定した。
しかしながら、いまだ滅んだケルゴ国から続く勢力というものが、王国に対して反旗を翻している。とはいえ半世紀ものあいだずっと活動していたわけではなく、壊滅させられては、また何年かたって、ひょいっと復活するのだそうだ。ゲルゴのモグラ叩きといわれる所以だとか。
「このケルゴの反乱勢力にも、〈古き者たち〉が関わっているのかなぁ?」
「どうでしょう。そもそも自国領土を侵略されたのですから、このような反乱勢力があること自体は、意外ではありません」
「むむむ。そう考えると、正義は向こうにあるよね」
「いえ、正義とか悪という話でもないでしょう。国家というのは、ある程度は戦争をしなくては機能不全になるものです。その過程で、侵略する側とされる側が生まれることも、これは国家社会において、致し方ない部分もあります。
それに現在のロゴス王国の政策では、侵略などという行為は認めておらず、われわれがこれから向かう先を平定したのも、半世紀は前。ですので、必ずしも向こう側に正義がある、と言い切れるものでもないでしょう。とにかく、これは時代の問題です。やはりいまの時代は、戦乱の時代なのですわ」
「ふーーーん。争いは絶えないんだねぇ…………よし、頑張るぞー」




