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33,〈古き者たち〉。

 


 シュタン少将は、妻となったサラという魔導士との出会い、そして愛の物語を語った。


 めちゃくちゃ長かったよ!


 最後まで集中して聞いていたのは、ユリシアとローレライだけ。ユリシアは、何らかの有益な情報が潜んでいないかと、その使命感から聞いていた。一方ローレライは、単純にこの手の話が大好物らしい。恋バナというやつだねー。やはり女子は、恋バナしてなんぼかもしれないぞ。私も、女子だい。


「ところでアンバー」


 私の隣で、うたた寝していたアンバーが、ハッとして起きた。


「なに、ライラ?」


「アンバーって、恋人とかいるの?」


「いないわよ。ライラは?」


「いないよ。興味ないし」


「そうよね。恋愛というものに必要性を感じないわ」


 うーむ。恋バナというのは、難しいものだ。とにかくシュタン少将の長たらしい話が終わり、ようやく本題へと入ってきた。


「このアガベ大陸には、いまわれわれが認識している国々が建国する以前、ひとつの超大国があったのだ。これは王政府にとっても極秘の秘であり、通常ならば少将程度の者が知ることはできない。

 だが私の一族は、古くから王政府の書庫番をになってきた。私は次男なのでその任にはつかなかったがな。とにかく、その超大国は亡びたが、いまもその血を引く者たちが、この地では跳梁跋扈している。わが妻サラは、どうやらその者たちの同胞のようだ」


 ユリシアは、私の耳元にささやいた。


「その亡びた超大国のひとつの置き土産が、この〈探索迷宮(ダンジョン)〉でしょう。そしてマーヴィンがお姉さまに忠誠を誓った点からして、もともとその超大国に属する者は、冥王に仕えるはずだったのです。ところがどうやら、『超大国の血を引く者たち』は、その忠誠心を忘れ、冥王と邪神を争わせようとしたのです」


「えーー、なるほど。じゃマーヴィンなら、何か情報を知ってるの?」


「可能性は低いと思いますわ。マーヴィンは長らく、起動を停止していたわけですから」


 それからユリシアは、シュタン少将に言った。


「それで少将。あなたがたたちは、『超大国の血を引く者たち』のことを、どう称しているのです?」


「明確な呼び名はないが、符号的な意味あいで、〈古き者たち〉と呼んでいる」


「お姉さま。この〈古き者たち〉の首を、自身の卒業祝いとしてはどうでしょう? ご両親の仇をとり、その魂を鎮めるのです。士官としての船出の前に、決着をつけるのが良いと思いますのよ」


 ふぅむ。ユリシアちゃんは、簡単に言うけどねぇ。

 しかし、やっておいて、損はないよね。


 私は、みんなを見まわした。


「みんな、仲良くすればいいのにね。

 とはいえ、私の家族とガートン市の殲滅をした者たちには、責任をとってもらわないと。で、その責任をとらせる責任があるのが、冥王らしい。なので皆さん──〈古き者たち〉を狩り立てるときがきたようで。戦争を始めたいのなら、戦争しましょう」


 ユリシアは、シュタン少将に命じた。


「あなたの細君を、差し出していただきますわよ」


 シュタン少将は、20歳は老いた様子で、


「仕方があるまい」


 私は、ちょっと同情したものだよ。ところで、


「けどさ、都市ひとつを殲滅した魔導士だからね。赤毛の。簡単には捕らえられないでしょう?」


 ユリシアはうなずき、リスダンを見やった。


「リスダン。あなたが指揮をとりなさい。必要な者は、あなたがここで選ぶと良いでしょう」


「承知した。

 わが君、しばし、あなたの戦士を数人、お借りします。ドラゴ、ガリーナ、ローレライ、以上を」


「どうぞー。なに、ビリーロスト? そんな泣きそうなピエロ面しても、リスダンがいらないというのだから、君は留守番だ。だいたい赤毛に興奮しないと約束したじゃないか」


 というわけで、リスダンはドラゴ・ガリーナ・ローレライを連れ、シュタン少将とともに出立した。

 一方、残った者たちも、ただ遊んではいられない。


「〈古き者たち〉という、明確な敵が分かったので、情報収集もよりしやすくなるでしょう。とはいえ、相手は古来より王国内で暗躍してきた者たちなので、一筋縄ではいかないでしょうが」


 チキータが直立して、


「冥王陛下。このチキータ、必ずやドブネズミ・ネットワークを使い、〈古き者たち〉についての情報をつかんでまいります!!」


「はい、がんばってー」


 半巨人のダクも、汗をふきながら、


「親分。あっしも、〈暗黒地帯〉に暮らす者たちに、聞きこんでみやす。なんといっても、あそこには何百年も生きているダークエルフなどもいやすからね」


「え、親分?? 私のこと? まぁ、いいや。ダクも、がんばってー」


 つづいてビリーロストが言うには、


「冥王陛下。オイラも、ピエロ連合の会合に出席し、話を聞いてみようかと思います。ピエロというのは、案外、どこにでも呼ばれますからね。思いがけないところで、情報を得ていたりするものです」


「え、ピエロ連合? そんなのあるの? まぁ、いいや。がんばってー。赤毛の女を追っちゃダメだよ」


 全員を見送ったところで、私はアンバーに言った。


「忙しくなるねぇ」


「けど、ライラは何もやることがないわよね」


「……いや、待つ身も辛いから」



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