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30/215

30,各自宿題。

 

探索迷宮(ダンジョン)〉に戻り、再度の作戦会議。

 しかしながら、殲滅魔導をガートン市に向かって放った〈赤毛の女〉にたどり着きそうなアイディアはなし。


「こんなに人数がいるのに、こう、すごい閃きはないものかな?」


「あの、お姉さま。そんなことより、邪神ヨグと話したというのは、本当ですの? しかも邪神からもらったクッキーを、食べたのですの?」


「ふむ。これ以上、いま話し合っても進展はなさそうだね。卒業試験を達成するまでの期限はまだあるし。今回は各自宿題ということで、解散!」


「あの、お姉さま。ですから邪神ヨグの件を」


「うーん。なんか友達になれそうだったよ?」


「ライラのズッ友は、このあたしでしょ!」とアンバー。


「お姉さま、邪神と友達になってなどいけませんのよ!」とユリシア。


「えい、うるさいぞ!」


 というわけで解散。

 

 各自が頑張って宿題を果たしてくれることに期待するよ。

 私は──まず、両親の葬儀を行った。両親ともに無宗教だったけど、生前、手っ取り早く王国の国教で葬儀は行ってくれ、という話を聞いていた。


 それは私にとって、良い葬式だったと思う。ひとつの区切りをつけるためにも。

 それから三日後。一族の弁護士という人が来て、私に小箱を渡してきた。ちなみにこの弁護士さんは、王都に事務所があるため、無事だったわけだ。


「この小箱は、なんですか?」


「あなたのご両親の遺産です。生前、あなたに手渡しするようにと、細かく指示を受け取っておりました。そして、あなたの叔父である──つまりあなたの御父上の弟であるアーガスには、このことは話さぬようにと。それは遺言でもあります。どうかライラさん、アーガス氏にはこの小箱の中身のことを明かさぬように」


「叔父さんに? 分かりました」


 アーガスおじさんとは、かれこれ10年は会っていないけども。確かお父さんと大喧嘩したのだとか。


 ふむ。小箱の中には、一冊の書物がおさまっていた。

 はじめ、さすが両親ともに司書だっただけはある、と思った。けどもちょっとおかしい。司書は、図書館の蔵書の整理などをするわけで、個人で所有するものではない。それにこの書物は、どうも高価そうだ。

 うーむ。借金苦だった我が家らしからぬ。


 とにかくこれは大切な形見なので、大事に保管しておくとしよう。

 というわけで盗難の心配のない〈探索迷宮(ダンジョン)〉にしまっておくことにしよう。このさいマーヴィンに頼んで、〈探索迷宮(ダンジョン)〉内に小さな金庫をつくってもらった。そこに保管しておく。


 で、この書物のことは、随分あとまで忘れることになるわけだ。


 月日が流れるのは、早い。二学期も中間をこえて、パーティによっては、卒業試験をクリアした者たちもちらほら現れだす。

 アンバーが焦りだして、


「ライラ。そろそろ、あたしたちも進展がないと、やばいわよ」


「確かに。そろそろ、宿題の結果を聞くとしようか」


 というわけで、全員を呼び集めての、第二回作戦会議を〈探索迷宮(ダンジョン)〉で開くことにした。

 出席者は、

 最年少で〈王の右手〉だったユリシア、初代剣聖のリスダン、王国格闘技大会の初代チャンピオンのドラゴ、この世の理を見た不良聖女のアンジェラ、吸血鬼の真祖にして男爵位を(無断で)取得しているガリーナ、半巨人のダク、殺人鬼(殺人からは足を洗ったと当人は言う)ピエロのビリーロスト、人魚族の王女殿下であるローレライ、そして魔鼠族のおさたるチキータ。あとアンバー。


「今回は、珍しく新メンバーが増えてないね。めでたい。じゃ、みんな宿題の報告を受けようかな。『ガードン市を攻撃した犯人グループは何者なのか?』。まずアンジェラ」


 アンジェラはガムを噛みながら、


「うちは、回復魔導一本でやってきたんで、これという追跡スキルとか、人脈とかもないんだよね。けど、何かしら手がかりを見つけるにはどうしたらいいか、と考えたわけ。んで、うちなりにやってみたことがある。

 白魔導というのは、マナと相性抜群でさ。で、マナに問いかけてみたわけ。あの日、ガートン市が破壊されたとき、殲滅魔導を使った奴はいたっかって? ほら、魔導にはマナが不可欠だからさぁ。

 んでさ、マナから回答があったよ。殲滅魔導《竜弾》を使ったのは、名前とかわかんないけども、ただ一つハッキリしていることがあるって。そいつは、マドリギの杖を持っていたってさ」


 すると、ピエロメイクを落とす気がない(というか、あれが素顔かも?)ビリーロストが、叫ぶように言った。


「オイラが目をつけていた赤毛の女も、そのマドリギの杖をもっていましたぜ!」


『目をつけていた』の表現が気になるなぁ。

 私は問いかけた。


「その人は、誰?」


「サラ・シュタンという女ですぜ。そういや、ガリダの丘で見た赤毛と、似ていたような」


 あんた、赤毛の女の見分けくらいつけなさいよ。ところで、


「シュタン? どこかで聞いた家名だなぁ」


 ユリシアが呆れたように言った。


「副校長ですわよ」


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