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21,ネクロマンサー派。

 


 それからしばらく、〈探索迷宮(ダンジョン)〉の出入り口(洞窟を偽装していたあれ)が消滅したということで、ちまたでは話題になっていた。

 私は、アンバーがいつ口をすべらせるかとひやひやしていたけど、意外なことに黙っていた。アンバーいわく、


「お喋りは卒業したわ」


 と言っていたが、ユリシアが言うには、


「そもそもアンバーは、お喋りではありますが、必ずしもバカではありません。〈探索迷宮(ダンジョン)〉の秘密はお姉さまと共有しているほうが得であることは間違いないので、拷問でもされない限りは、黙っていることでしょう」


 そんなこんなで、〈探索迷宮(ダンジョン)〉の件も、やがては生徒間の噂の主力から外れていった。私としては、〈探索迷宮(ダンジョン)〉よりも、ボガ子爵の爵位を継いだ件だ。

 まずボガ子爵という爵位は、どうにも押し付けられたが、ボガ子爵の所領だった一帯は、別の貴族家のもとにまわったらしい。

 別に自分の領地を持ちたくはないけど、はたしてボガ子爵の元領民がどんな暮らしをしているかは、気にかかる。

 なんとなく責任があるような気がするので。


 この件については、ガリーナに調査を依頼した。王政府に無許可とはいえ、領主としてキャッスルアンロックの民を治めているので、いろいろと経験値もあるし。

 一方、私のこなす課題任務が、ここのところ士官学校の生徒がこなすには、難易度高めなものが増えてきたように思う。


 たとえば、今回の課題任務もその系統で、王都内に巣くう盗賊団を一掃せよ、というもの。それはもう、王都警察の仕事な気がするけども。


 実際、管轄の問題もあって、まずは王都警察に顔見せしてこいとか。この課題任務は、担当教師から伝えられたけども、どうやら校長ことコルドー侯爵からのものらしい。いまにはじまったことではないけども、あの〈王の右手〉は、私をこき使っているような気がしてならないなぁ。


「お姉さま。プラス面を考えるならば、士官学校生徒のうちから、各地で顔と名を売れるチャンスではあります。今回も、王都警察に死霊使い(ネクロマンサー)として、お姉さまの凄みを見せてあげましょう」


 とユリシアは言うけども、ネクロマンサーって、けっこう不気味がられるよねぇ。

 このまえも、地方へ魔獣討伐に向かったら、そこの領主から『ネクロマンサーを退治せよ』と襲撃を受けたし(ドラゴが嬉々として返り討ちにしていたけど)。


 しかし、さすがにここまで大がかりな課題任務となっては、ネクロマンサーという兵科を隠すわけにはいかないし。別に宣伝したいわけではないんだけども。


 今回の王都行きでは、ユリシア、ドラゴ、リスダンのいつものメンバー。

 王都警察の署長が、みずから出迎えてくれた。ちなみに警察といいながら、この署長は軍属。これは昔、もともとの王都警察が反王統派に協力し、反乱勢力が王都内に入るのを手引きしたためだとか。

 この事件で、当時の王都警察は解体され、署員はともかく、署長は軍から派遣されるようになった。現在の署長もそうで、階級は大尉。


「これはこれは、ネクロマンサー殿。やぁ、ようこそいらっしゃいました! いやぁ、ネクロマンサー殿のお手をわずらわせてしまうとは、お恥ずかしい限りですな。

 しかしながら、この新手の盗賊団は、なかなかに狡猾な奴らでして。われわれも手を焼いているところに、〈王の右手〉殿から、ネクロマンサー殿を派遣しようと言っていただいて。お言葉に甘えさせていただいたというわけです。まずは旅の疲れを癒してください。こちらで宿を用意しましたので。最高級の宿ですよ、はっはっはっ」


 署長の部下に案内された宿で、とりあえず一息つく。このあと警察署に行き、盗賊団の追跡を担当している捜査官と話すことになっている。どこまで私たちが関与するかは、署長に決定権があるはずだけど、そこらへんは濁していたような。


「ユリシアちゃん。あの署長さんのことをどう思う?」


「一見したところは、ネクロマンサー派のようですわね、お姉さま」


「うん………まって、なにそのネクロマンサー派って? 初耳の概念」


「難しいことではありません。ようは、お姉さまに好かれておいたほうが良しとする派閥と、お姉さまと親しくしていたという事実を残したくない派閥です。

 前者は、『唯一無二のネクロマンサーは、おそらく軍内でもすぐに頭角をあらわし、みごとに出世するだろう。いまのうちに媚びを売っておいて損はあるまい』という者たち。

 後者は、『いまは〈王の右手〉に贔屓にされてはいるが、ネクロマンサーなどが出世できるはずもなく、情勢が変われば、その忌まわしい兵科からして、火あぶりもある。間違っても、周囲に付き合いがあったと思われては困るぞ』という者たち」


「え、火あぶり???」


「可能性のひとつを申したまでですのよ、お姉さま。それに、わたくしたちがお姉さまを火あぶりになどはさせませんことよ。信用してくださいませ」


「まぁ、それは信用しているんだけどさ。ただ『火あぶり』というワードは、破壊力抜群だったもので」


 やれやれ。私の静かな士官人生は、もうはじまる前から終了しているようだぞ。

 とにかく、頑張ろー。


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