20,出入り口。
ユリシアの発案、『〈探索迷宮〉を活動拠点にする』は、評価が高かった。私以外の話だけども。
みんなの意見をまとめてみると、
まずリスダンは、
「私としては、つねにわが君のおそばに居続けるつもりです。とはいえ、このような『安全地帯』を設けることは、わが君にとっても、戦略的な選択肢が増えることになるでしょう」
人魚族の王女のローレライは、
「あのー、家出とかで利用しても、いいですか? 私、そんなに家出とかしないんですけど、ただ、ちょっと、えーと、お母さまが厳しいときがあって、いえいえ、いまは、いまは家出じゃないですよっ! ちゃんとお母さまにも、『冥王陛下の呼びかけに応えて行きます』と説明してありますし!!」
この世の理を見た(?)らしいアンジェラは、
「あー、それは助かる。うち、蘇ったはいいけど、この国でも正式な身分証とかないもんね。とっくの昔に死んでいるからさ。それだと部屋借りるのも大変だなぁと思ってたし。ここなら部屋数とか多そうだから、困んなそうだよねー」
ドラゴは、
「こんだけ広いんだから、俺主催で、喧嘩大会とかやってもいいですか。姐さん、どうでしょうね? やってもいいんですか? 頼みますぜ、姐さん!」
半巨人のダクは、
「あっしも助かります。この図体のでかさだと、まともな集落には住めませんし。かといって〈暗黒地帯〉は、あそこはおっかない魔獣が多いもんでして。はい、こういうところで住めるんなら、あっしはうれしい限りです」
真祖のガリーナは、
「アタシにはキャッスルアンロックがあるけども。いざというときの避難先があると、のびのびできるわぁ。別にのびのびするからって、必要以上に血を吸ったりはしないわよぉ」
「だけどさ、〈探索迷宮〉の入口は、そこの洞窟形式として、一般公開されているわけだよ。これだと、活動拠点としては不便では?」
と、私が常識的なことを言ってみたが、マーヴィンがすかさず言うには、
「いえ、ご心配にはおよびません。私の、すなわち〈探索迷宮〉の出入り口は、どこにでも自在に作ることができますので。そもそも現在の出入り口は、とりあえずの人間世界とのつながりとして、私が長い眠りに入る前に作ったものでございます。ですので、まずは現在の出入り口を永久に閉じてしまいましょう」
私は後ろを振り返ったが、ここからだと元の入口は見えない。
「……えーと、閉じたの?」
「はい」
「私たち、帰れないんだけど?」
「いいえ、冥王陛下。先ほども申したように、私は好きな場所に出入り口を作ることができるのでございますよ。いえ正しくは、『集団意識的に安全な場所』に限りますが。つまり冥王陛下に取って、敵性陣地などには作ることはできません」
「うーん、『集団意識的に安全な場所』? また難しいことを……………つまり、王国の士官学校の、私の寮部屋でもいいの?」
「可能でございます」
「……………じゃ、作って。あ、まった。洞窟のような入口を作ってもらったら困るよ。目立つからね。出入り口は、床に作ってくれる? そうだなぁ。王都のマンホール蓋って知っている? あれ、私ははじめて見たとき感動したんだけど。あんなのでお願い」
「完了いたしました」
「もう? 無駄に早いなぁ」
すぐそこに壁に接続した梯子が現れた。この梯子をのぼっていくと、マンホール蓋があったので、これを押し上げる。そうして梯子を上り切った先に出たのは、寮の自室だった。留守番していたアンバーが、口をあんぐり開けている。
「ライラ!! どうして、床の下から出てくるのよ??」
「話せば長いんだよね。ちょっとまってて」
私は梯子を下りて、〈探索迷宮〉の通路に戻った。マーヴィンに尋ねる。
「このような出入り口、一か所しか作れないの?」
「いいえ、望めば複数作ることが可能でございますよ」
「じゃ、みんな、自分のところに作ってほしい人がいたら、マーヴィンに言って」
結果的に、ローレライの望みで人魚の国(海底にあるらしいよ)と、ガリーナの所領にあるキャッスルアンロックに、新たな出入り口が作られた。その新たな出入り口から、ローレライとガリーナは、自分の家に帰る。ダクとアンジェラは、しばらくこの〈探索迷宮〉で暮らすという。そこで私は、ユリシア、リスダン、ドラゴとともに、梯子をのぼって、自室に戻ることにした。
「じゃあねマーヴィン、また来るよ」
「お待ちしております」
自室に帰り、一息ついたところで、私は腕組みして考え込む。
「うーむ」
ユリシアが心配そうに声をかけてきた。
「どうされました、お姉さま?」
「いやぁ、エイブラムが死んだことには、私も間接的に責任があったんだねぇ」
「お姉さま、仕方ありませんわ。お姉さまにはコントロールできないことだったのですから」
マンホールの入口から、〈探索迷宮〉をのぞき込んでいたアンバーが、顔をあげた。
「ライラ? 一体、これ、どこにつながっているの?? こんなの勝手に作って、怒られないの?」
「まぁ卒業したら、また入口の接続先を変えてもらうから。ただそれまでは、隠しておかないとね。そこの絨毯を、この入口の上に敷いておこう。その前に、ちゃんとマンホール蓋は閉じてね」
ブックマークなど、お願いしまーす!




