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19,活動拠点。

 

探索迷宮(ダンジョン)〉に至る道には、検問ゲートがあった。

 とはいえ警備状態はそれくらいなので、道を外れて迂回するだけで、突破できた。

 王国側も、わざわざ〈探索迷宮(ダンジョン)〉に行きたがる者もいないと思ったのだろう(そして無許可で入り込んで死ぬのなら、それは自己責任、ということでもあるのでしょう)。


 さて、〈探索迷宮(ダンジョン)〉とやら。

 はじめて見るけども、ふむ、これは入口だけ見たら、ただの洞窟だね。この中に、『古代文明が建造したともいわれる迷路構造施設』が潜んでいるとは思えないよね。


「皆さん。わざわざ言うまでもないでしょうが、お姉さまを護ることが最大の使命ですのよ。守護陣形で参りましょう」


 というユリシアの指示のもと、死霊戦士たちが私のまわりを囲う布陣。いやぁ、なんか申し訳ないです。


探索迷宮(ダンジョン)〉の中は、ひんやりしたところだった。入口は自然の洞窟だったくせに入ってみると、ここは全てが流動する金属で構成されているようだね。しばらく進むと、通路の先から金属球体が漂ってきた。


 その球体には一つ目があり、それが私たちを照らすなり、なかなかに温かみのある声で言ってきた。


「お待ちしておりました」


 そしてまずリスダンへと球体の一つ目を向けて、


「真なる剣聖閣下」


 つづいて一つ目が、ローレライへと向けられ、


「人魚の王女殿下」


 一つ目がさらに動いて、アンジェラを向く。


「この世の(ことわり)を覗いた聖女どの」


 最後に私を向いてきたけど、これがまぶしいんだから。


「なにより、王であり神である『名を申すもはばかる』冥王陛下───それと、その他大勢の皆さま」


 ユリシアが舌打ちする。


「その他大勢? このわたくしを、その他大勢の枠に入れるとは、良い度胸ですわね」


「まぁまぁ、ユリシアちゃん」


 というか、ローレライって王女だったんだね。あとアンジェラの『この世の(ことわり)を覗いた』って、どういう意味だろう。まぁそんなことよりも、


「君は、どこの誰?」


 と、私は金属球体に尋ねた。


「私は、この〈探索迷宮(ダンジョン)〉の管理者でございます。ですが、いまあなた様に見せている、この姿は端末にすぎません。私の本体は、この〈探索迷宮(ダンジョン)〉の中枢にあります。ああ、皆さまは私のことを親しみをこめて、マーヴィンとお呼びください」


「マーヴィン。えーと。ずっと、ここにいたの?」


 マーヴィンみたいな存在、私は初耳だけども。〈探索迷宮(ダンジョン)〉の探索に来た者にとっては、常識なのかな?


「いいえ。私は先日、再起動いたしました。それこそ何千年間も眠り続けてきたのですが。ああところで、どうやら悪いタイミングに、『私の中』に入り込んだ者たちがいまして。不可抗力ながら、彼らを殺してしまいました。せめてものお詫びとして、肉体すべてとはいかずとも、生首だけは送り返させていただいたのですが、気持ちは受け取っていただけましたか?」


 あーーー。あの箱詰めの生首。あれ、いちおうマーヴィンとしては、誠意をこめていたんだね。まったく逆効果に、不気味なだけだったけども。


「エイブラムたち──つまり、君が箱詰めで送り返した人たちの前にも、この〈探索迷宮(ダンジョン)〉の中に入った者たちがいると思うんだけども? ここで迷子になっていたでしょ?」


 するとマーヴィンが朗らかに言った。


「ああ、その方たちでしたら、脳を取り出し、現代の知識を抽出させていただきました。残念ながらそのために頭部を破損したため、その後に入り込んだ方々たちのように、生首さえも返却することができず、心苦しい限りです」


 整理すると──このマーヴィンというのが、〈探索迷宮(ダンジョン)〉の意識みたいなもので(目の前の浮遊球体は、端末に過ぎないと)。

 最近、なぜか何千年もぶりに再起動で目覚めた。

 そのときに〈探索迷宮(ダンジョン)〉の探索に入った魔導大学の研究チームたちから、脳みそを取り出して、知識を抽出。

 ほら、長く眠っていたので、現代の社会状況とか知らないものだから。

 このとき脳みそを使ってしまったので、頭部の損傷は著しく、生首だけを箱詰めにして外に出すこともできなかった。

 だけど、研究チームを捜索に来たエイブラムたちは、勢いで殺しちゃったけども、ちゃんと生首は箱詰めで外に出すことができた。良かった、良かった。


 いや、良くないぞ!


 私はユリシアの耳元で言った。


「このマーヴィンというの、ちょっと倫理観が壊れているんじゃないの?」


「お姉さま。相手は、非生物ですので。その思考形態も、わたくしたちとは異なるものでしょう。

 それで、マーヴィン?? あなたは、お姉さまになにを提供してくださるのです? あなたは、お姉さまの偉大さは理解しているようですが」


 するとマーヴィンは、


「私は、すなわち〈探索迷宮(ダンジョン)〉とは、その時代の王に仕えるために造られたものでございすま。残念ながら、私を創り出した人類文明は滅んでしまいましたが──しかしながら、いまようやく、新たなる真の王が覚醒された。ですから私も、またこうして再起動したのです。わが王よ、冥王陛下、私はあなた様に永久の忠誠を誓うものでございます」


「お姉さま。この〈探索迷宮(ダンジョン)〉を、わたくしたちの活動拠点といたしましょう」


 まって。マーヴィンが再起動したのって、私のせいなの? なんだかなぁ。


ブックマークなど、お願いしまーす!

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