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不正転生  作者: if
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プロローグ「GOOD LUCK!」

処女作です。

週1月曜に投稿します。

「ちょっと君、入試本部まで来てくれないかな?」

そう声をかけられた瞬間、俺_雨崎亮は全てを悟った。カンニングがバレたのだ。まあもとより共通テストでスマホを使ってカンニングをしてバレないわけなんてなかった。

俺は試験官に連れられ本部室に入るとなんか偉そうな人が待っていた。正直、そこからの記憶は曖昧だ。はっきりしない意識の中でかろうじて聞き取れたのは今年の試験は全部ゼロになることと来年以降の受験資格もおそらく失うことになるだろうということだけだった。

そうして色々な事情聴取や手続きを済ませて、気がついた時には試験会場の東京大学駒場キャンパスの裏門前に立っていた。

雪がちらついていて寒かった。自販機でホットコーヒーを買い近くにあったベンチに座った。

「なんでこんなことになったんだろうな」という声が漏れるとともにこれからどうしようという不安がどっと溢れてきた。そんな不安を押し流すように熱いコーヒーを啜った。

そして少し冷静になった俺はポケットを漁り、残り一本しかないメビウスを取り出し火をつけようとした。その時タバコに母からのGOOD LUCK!というメッセージが書いてあるのが目に留まった。

俺は泣いた。その時になってやっと俺がどんなに取り返しのつかないことをしたかわかった。ひとしきり泣いたのち、俺はそのタバコで人生最後の一服をした。

そうして一息つき落ち着いたところで、しょうもない人生の振り返りをしようとしたが俺は何も考えられなかった。頭が真っ白だった。だがこの時だけは思考が止まっているのに、不思議と穏やかだった。指先の熱さで我に帰ると、フィルターまで燃え尽きていた。俺は名残惜しいがタバコを足で揉み消し駒場東大前駅に向かって足を踏み出した。

駅のホームに着き、通過する急行を待った。するとさっきは考えまいとしていた記憶が俺の脳内に勝手に流れてきた。俺は一代で財を成した父親の元で生まれた。中学生の頃、期末で95点で学年一位を取って喜んだ俺に、父は「残り5点はどこへやった」とだけ言った。そんな家庭だった。その期待に応えようと勉強に励んだ。しかし運命は残酷かな、俺にはまるで勉強の才能がなく2回受けた大学受験も全落ちだった。そうして3度目の正直と言って受けたこの試験はこのザマだ。

だがこんな俺も友人には恵まれた。彼らと遊び、話している時だけはその重圧から解放されることができた。

そんなことを思っているとやっと急行列車のアナウンスがあった。悔いがないと言えば嘘になる。死ぬのだって怖いし、家族や友人たちは悲しむだろう。だがもう俺のしたことは取り返しのつかないことだった。

どこまでも独りよがりな「ごめんなさい」とだけ言い残し俺は覚悟を決めてホームの一歩先へ足を踏み出した。

うるさく鳴っている警笛だけは気に入らなかったが最後に見た雪景色は綺麗だった。存外悪くない最期だと思った刹那、俺は意識を失った。


どれだけ意識を失ってたのだろうか。俺は目が覚めた。眠い目を擦りながらあたりを見回すと一面の白だった。痛くもないし普通に体もある。ここは典型的な死後の世界だろうとわかった。とりあえず何かないかと思い起き上がった時、背後から

「おにーさん寝すぎじゃない?」という甲高い声が聞こえた。なんだと思い振り返るとローブを纏った少女がこちらをニヤニヤと見つめていた。一目見てわかった。このガキが神だ。理屈じゃない、なんとなくそうだと確信できた。こんなガキが神やってる世界なら俺の散々だった人生にも説明がつく。一人で納得しているとガキが不満そうな顔でこちらを見ていた。

「ああごめん。それで俺に何の用だ?」そう声をかけると少女は言った。

「私、暇なのよ。だからダメダメなおにーさんに転生してもらうことにしたの。嬉しいでしょ?」

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