第10話 心宿りの小鳥
誰にも言えない鳥かごが、私の胸にある。
硬い肋骨に囲まれた、その暗くて狭い場所。
そこに、一羽の小鳥が棲んでいる。
誰かの強い言葉に触れると
誰かの正しい言葉に触れると
その小鳥は、怯えて羽をばたつかせる。
私は、胸に手を当てる。
暴れる小鳥を、なんとか押さえつけようとする。
暴れないで。
おとなしくして。
気づかれたら、終わってしまうから。
けれど、押さえつければつけるほど
小鳥は必死に鳥かごに体を打ちつけ、
私を内側から傷つけていく。
それでも表面は、作り笑いを張り付かせる。
胸に手を当てたまま、
うまく笑えているかは、わからない。
けれど、誰も何も言わない。
「――それ、違うんじゃない?」
「そうかな」
なんでもない顔で、答える。
その一言で、胸の奥の小鳥が跳ねた。
強く、鋭く、羽が、ぶつかる。
私は、息を止める。
小鳥は、暴れる。
やめろ。やめて。
何も起こっていないふりをしなければならない。
そう思えば思うほど、
小鳥は激しく鳥かごに体を打ちつける。
「大丈夫?」
誰かが言う。私は、笑顔でうなずく。
大丈夫。
そう言おうとした瞬間、
息が、途切れ、何かが、こぼれた。
小鳥の声だった。
「――こわい」
私は、固まった。
かすれた声
「消えてしまう」
震えた囁きが続く
「――消えるのはいや」
その瞬間
押し殺していたものが口をついて出た
「大丈夫じゃない!」
「違わない!」
周囲が唖然と私を見る
だが、そんなことはどうでもよかった
私の胸の小鳥は、鳥かごの中で、静かにたたずんでいた。




