再戦
痛みなんぞ…苦しいものではない。
再古真はそう言って、優多の目の前に瞬間移動をし、殴ろうと拳を構えている時。
優多の四肢は完全回復。優多はガッチリ頭を両サイドから鷲掴みし、何の慈悲もなく自分の膝の関節に再古真の顔面をぶつけた。
一回目、ゴツンとえぐい音がしたが、何も異常は無い。
二回目、骨が割れる音と共に顔が関節に沈んで行き、額がが凹んでいた。
三回目、叩きつけるとともに、完全に骨が割れる音と、骨の破片が脳に突き刺さる音、出血する音が聞こえ、血が飛び散るのがわかる。もう顔は皮が剥がれ骨が割れ、脳が見え半壊状態だったが、優多は、止めることはなかった。
四回、五回、六回、七回…何度も何度も繰り返し、十五回目…関節に埋まった。
みればわかる。再古真の顔にはパーツがない。
メ 目も口も鼻も…
何回もぶつけ、顔面には関節の跡が深く入っている。
優多の目は暖かくない。凍っている。
冷たいを通り越して、凍っている。
『神の力をなめるなよ?』
目もなければ口もない再古真が喋った。
ただ声は何かがかさばっているようで、聞こえづらい…
スッと、崩れた顔の奥の奥から浮き出るように超高速で元の顔に戻った。
「僕がこれで死ぬと思ったか?」
「『はい』、さっきまでの僕ならそう答えていたでしょう。ですが、今は、『いいえ』ですね。あなたが神人類ということをすっかり忘れてました」
優多の手が緩み、再古真は優多と一緒に地に足をつけた。
目は変わらず凍っている。
「そんなに警戒すんなよ。もう、僕は戦う気がないんでね」
「嘘ですか」
「嘘ですよ。よく分かったね」
「分かりますよそれくらい。だって目が、負けを認めていない」
「勝敗を決めるのは、戦った者の意思で決めるものじゃなくて、第三者の判断で決めるものだと思うんだよね」
「なぜですか?」
「簡単な話だよ。一つ一つの競技に審判がいるのと同じ。平等、時に残酷な判断で勝敗を決める」
片手に気力刀を出して、再古真は笑いながら言った
『イーザス《再戦》だ!』
この世界の一部は、今優多達の戦闘で、ぶっ壊れている。
この世界の住人は全員避難していると事前に聞いているが、無限の性格も怪しくて本当かどうが信じることが出来ない…
ふと、頭次の中で考えていた。
と、次の瞬間。
思いっきりふっとばされ壁の中にそびえ立つ立派な洋館の窓に突っ込んだ。
これで二回目の油断、しっかりしないと…
物凄い音を立てながら、人様の家に窓を割って勝手に入ってしまった…
周りを見渡すと、立派な長い長いテーブル。その両端に置かれている椅子。壁には、絵画が飾られており、ピアノも置かれている。天井には、シャンデリアが五つ下げられてあり、火はつけられていない。辺りが暗い理由が分かった。
「ここは…食堂か…」
その場で周りを見渡しながら言った
と、いきなり
「うおおおおおおおおお!」
声が聞こえ振り向こうとしたその瞬間、
横一直線。平行に切れた。
「へ?」
この1秒よりも速い一瞬がなぜか数十秒並み遅さに感じられた。
バリンバリンバリンバリン!
と、勢いよくガラスが弾き飛び柱や壁ごと切断し、同時に、優多の腹がまた斬れた。
だが今度は、『斬れた』の度合いが違う。
『切断』されたのだ。上半身と下半身が離れ離れになり、一瞬何が起こったのか全然わからなかった。
そして、次の瞬間シャンデリアが全て同じタイミングで落下してきた。
もう周りは、大惨事だった。ロウソクが割れ、散らばり、宝石が散らばり、金属が散らばり…
「安心しろ、建物全開というのは阻止した」
「それ以前にダメです」
「この状態で聞くのもなんだかなぜだ?」
割れた窓越しに再古真は優多上半身と下半身がくっ付き始めている優多に問う。
「派手にやりすぎです」
「じゃあ程々とはどのくらいだか問おうか?」
「それくらいご自分で考えてください」
言い終わった直後優多は香花刀を抜き、放った。
「刀技、無斬 真」
青い剣気が、窓側の壁一面を突き破りそれが建物の崩壊の始まりの合図かのように、一瞬建物が崩壊する“時”が止まり、そして壊れる
パラパラパラ…と、建物の残骸。木のクズや、レンガ、ガラスの破片など建物の大部分が小さくチリとなり雨のように降っている。
横一直線に刀を振り、半径約10キロ。
破壊範囲が広い…
案の定、破壊範囲内の豪邸や壁はボロボロに崩壊されている。だが、あくまでも一部。
建物の全てがチリとなって吹き飛んだわけでもない。
少しは残っている。
しかし残念な事にこれを見ただけで元の『家』と断定する事。いや、そもそもこれが『建物』だったと判断する事さえ難しい…
元、豪邸だった。今、残骸の中に今、この状況を作った少年優多は、顔を伏せたまま力なく立っていた。
顔を上げこの状況を見て汗を垂らし、ゆっくりと囁くように言った。
「やって……やっちゃった…」
次にこう叫んだ。
『やっちゃった!』
と、
物凄く辺りに響いた。
周りは瓦礫だらけ、焦りと緊張が体を支配している…
妙にさっきとは違う、違う何かを感じる…
静けさが直ったわけでもないし、風が止んだわけでもなければ、未だ続く瓦礫の雨に特に変化したわけでもない…なのに“何か”を感じる…
ガシャン!
と、強い風が吹き瓦礫が踊ったと同時に、瓦礫の山から何者かが突き出た。
『背後からか!』
優多は瞬間的に自身の香花刀の刃の面で再古真の気力刀の刃先を受けた。
金属独特の行って帰ってくる音が刀の中で響いている。
両者その場から飛んで距離を取り話し始めた。
「痛い」
「僕もです」
「止めたい」
「何故ですか?」
「死ぬわ!このまま続けてたら死ぬわ」
「でしたら選択肢が二つありますね。あなた達が起こしたこの『事件』をとっととやめて、自首するか、そのまま死んでもらうか…」
「そんだったら前者の方がずっといいや」