決戦
高貴で綺麗だったこの広場は、二人の少年により跡形もなく破壊され、ボロボロだった。
石畳だった地面も、ひとつひとつの板石が地面に浮いたり沈んだり埋まったりして、下の土が丸見えだ。ベンチも街灯も植木も、折れ曲がったり、破壊されたり、土がかかったり…戦闘の面影が残っている。まあ、戦闘した後だから問題無いのだろうけど、
さっき。と言っても1時間ほど前の事だが、優多は、一にする能力を所持する天正之一 悲雄残という少年と戦い、無事勝利した。と、言っても悲雄残は一切能力を使わなかったため勝ったのかもしれない。
まあどちらにしろ、あの能力自体戦闘に不向きだから押し合いになったのだろう。
それにしても相変わらず高い壁だ。段々と高い壁に囲まれた世界、城中の香『カタリア』。
この世界の壁がどのようにできているか、簡単に例えれば『段々畑の高低差が激しい版』とでも言えばいいのか?…でも、全体的の姿を簡単に例えればピラミッドや複雑に組み合った城が正しいのだろうか?
まあ、全体像はともかくてっぺんの教会までの高さがなんと3776M程…なんと驚きの大きさで、富士山と同じ高さ…
まあ、普通の人間であれば山登りの感覚で行くだろう。でもこの富士山級の城、城内は登ったり下ったり、足場の悪い道を登る登山と比べて歩きやすいだろうが、物凄く道が長く時間がかかる。大人の足でも3ヶ月はかかるだろう。
だが自分は超人であり、超人らしい能力を持つ者『生物の域を超えた知能、力、生命力を持つ能力』
助走をなどの勢いを付けて飛べば
今の所最大で1億5000万キロ、大体地球から太陽までの距離。無限によれば今後、トレーニングを続けていれば、更に伸びるらしい。余談になるが、そのトレーニングのため、地球の長時間の訪問が許された事に少々自分は舞い上がっている。
まあ、その話はまた別の時にでもしよう。
と、言うわけで優多は、体勢を整えて思いっきり一歩、二歩、三歩…助走を付け思いっきり上に飛んだ。
助走をつけたせいで、地面が酷く凹んだのはしょうがないが、酷く凹んだものだ。
一歩目二歩目の凹み具合は1センチ2センチほどで、良かったのだが、飛んだ三歩目は月のクレーター並み、約1メートル程凹んだ。後で整備員に謝らなければ…
と、思っている間に着いた。
力加減もちょっと難しい…降り立ったところが壁の縁と言うところがそれを訴えている。
と、降りようと、思ったその刹那、
両方の眼球の表面が、綺麗にスパッと切れた。
優多は、叫びながら目を両手で押さえた。その時、バランスを崩し重心が後方に。高い高い壁からものすごい速さで落下した。
早速修正された目で、景色を見ながら思った。
『間違いなく再古真の仕業か』
在るを無にする能力。存在を無にすることができる力。
落ちている最中の優多は、体勢を直し自身の重力を壁に移し、下に叩きつけられるのを未然に防いだ。
壁に乗り移った時、落ちている時の速さが物凄かったせいで、ブレーキをかけようと踏ん張った足。いや、靴からは、煙のようなものが発している。メチャクチャ熱い。
前を向けば、地に足を着けず、浮いている入山導 再古真がいた。物騒な表情だ、絶対何か企んでいる。妙に暗く悪役じみた微笑み方が物語っている。
「いや〜………驚いた驚いた。アンベルシン・カタリーナ、天正之一 悲雄山。2人を倒すとは…まあよくできたと褒めてやってもいいんだけど、あいにく俺は君の敵でねえ〜負けない限り褒めの言葉を話せないんだよ」
表情を変え、困った顔になった
「それにしても、結構来るまでに苦労したんだね〜服がボロボロじゃないか」
「おっしゃる通り。来る前に油断していたせいで、結構苦戦しました。ですが、結果勝っているので文句なんて贅沢な言葉を使わないようにしています」
「文句が贅沢とは、中々質素な生活や人生を歩んでいたのかね?言ってることが難しすぎてよく分からないや」
「その一文を取り上げて話すということは、多少意味が分かるという事ではないのですか?」
「ほう、またまた深いくも浅くもない微妙な回答が戻ってきたもんだ。君は天邪鬼だね〜なんでも否定したがる。おまけに、相手よりもよく言おうと難しい言葉をただ並べただけ。意味が分からないや」
再古真は、僕の目の前に瞬間移動し、
「僕の能力は…」
「知っていますよ、『在るを無にする能力』ですよね?」
「あれま?流石、香花館主の執事だけあって大したものだ。まあその通り僕は『在るを無にする能力』。君の存在を無にすることだって簡単にできる。でもそれじゃあつまらないだろ?と、いうことで、僕は能力を使わずに、君を倒しに行くよ」
再古真はそれを言った直後、片手をすごい速さで横に振りかぶった。
グシュッ
と、腹が深く切れ、勢いよく血が噴き出した。
この短い3秒間、何が起こったのか優多にはよく理解できなかった。
だが、自分の腹と再古真が振りかぶった片手を見て、理解した。
相手は、自分と同じく、
『大気の気と自身の気を合わせて作る気力刀』
特有の力を持った者だと、
壁に伝う重力が落ち、また急な速さで、落ちた。
傷はすぐに回復する者の、回復するのに多少の時間がかかる。再古真はそれが分かっている。
優多の傷が治っている最中。再古真は手に持っている気力刀で、治り始めている傷をまた深く斬り、
横に縦に斜めにザクザクと斬っている何度も何度も同じところを繰り返し繰り返し、
『治らない様に』『傷が閉じない様に』
案の定、優多の体は見事に傷だらけであり、服も前以上に酷くなっていた。
だが、再古真の攻撃は止まらない。
回転し、飛び、激しい動きが止まる気配すらなく、ただひたすら血色に染まった赤い肉を血と撒き散らしながら斬っていく。
その時の彼の表情は、悲しそうでもなく辛そうでもなく、暗く微笑んでいる。いや、暗く笑っていた。
目は死んで口が三日月の様に曲がっている。
それはもう“表情がない”と良いに等しい。
斬られ斬られ斬られ…
地面に思い切り叩きつけられ自分は思った。そろそろこの斬られる痛みにも慣れたところ、
優多は、死んだ様な目から生きた目に戻り、次降りかかるであろう場所に手を構え刀を受け止めた。目すれすれの場所。もう当たるか当たらないかの場所。
刀が手に当たった瞬間、思いっきり握り刀にヒビが入り、ピキピキと割れていく…
「何をする」
再古真は暗く低い声で言った。
多量の蒸気を傷口から発生させ、傷を復活させながら優多は答えた
「斬らない様にしているんです」
「斬れないじゃないか」
「斬らなくて良いんです」
「斬らなくちゃ、僕が勝てない」
それが再攻撃の合図かのように、少し刀を上に上げてから思い切り下に突き刺した。
グシュッと辺りに血が散らばり、優多は何とも言えないような聞くだけで感じる痛々しい悲鳴をあげた。
「剣技、大抉り眼球」
「させません!」
優多は、思い切り拳を地面に叩きつけ、地面に大きな凹み、クレーターのような大きさの凹みを作った。
当然、その大きなクレーターのような凹みの上にあった道、壁などの建物、公共建築物は瓦礫と化し、濃い砂煙が舞った。
再古真はこの爆発の影響で派手に地面を転がりながら吹っ飛んだ。砂煙とともに、大小様々な瓦礫が宙を舞い、とある大きな壁の一部が地面に突き刺さり、再古真はそれに思い切り突っ込んだ。
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今、一瞬何が起こったのか分からなかった。
再古真が僕の前に瞬間移動したのは分かったが、気づいたら、四肢が折れ宙に浮いていた。
完全に、“油断していた”
自分は再古真を殺していない。だが、弱ったと勘違いしていた…




