エピローグ
つけたしです
セレシアや竜達の時代から、遠い年月が流れていた。
一人の男が、今は「エルドリア」と呼ばれている城の図書室にいた。
古い本ばかりだったが、「治癒魔法」に関する書物は驚くほど豊富だった。
男は夢中になって、その本を読み漁っていた。
ある日、図書室の一番端にある本棚の横に、不自然な丸い透明の石が埋め込まれているのを見つけた。
「なんだ? これは……?」
男がその石に触れた瞬間、魔力が吸い取られる感覚が走る。
気が付くと、全く違う部屋に立っていた。
男は目を見開く。
「ここへ来られたという事は、相当な回復魔法の使い手とみた」
突然、眼鏡をかけた小柄な男が現れた。
立派な衣装をまとっているが、その姿はどこか透けている。
生きている人間ではない。
どういう仕組みかわからないが、立体的な幻影のようだった。
男は息を呑む。
「私の名は『リュカ』。この土地の初代領主だ。
治癒魔法を扱える者のために、大陸内を自由に移動できる魔道具を作った。
役立ててほしい。
与えるのは、一人につき一個のみ。
人間が一生使うには充分な量の魔力を込めてある」
そう言い終えると、男の姿は静かに消えた。
その場には、地味な色合いをした楕円形の石が、紐に通された状態で置かれていた。
紐には、古代文字で書かれた「使い方」が結び付けられている。
「本当に、そんな物があるのか……?」
男は説明書を読み、しばらく考え込んだ。
「……まあ、試してみるか」
男は紐を首にかけ、楕円の石を握り締める。
そして念じた。
「元の場所へ」
次の瞬間――景色は元の図書室へ戻っていた。
先ほどの丸い透明な石は、もう消えている。
説明書には、さらにこう記されていた。
『持ち主が亡くなった時、この魔道具は次の者へ託される』
「初代領主、か……驚いたな」
男は静かにつぶやいた。
こうして、彼は新たな移動手段を手に入れた。
この男こそ、後に――
『神出鬼没の名医』
と呼ばれるようになる、アルフレッドである。
実は、この話、皇女の帰還に出る国々のご先祖様のお話しでした。




