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看板娘

 青く澄みわたる空の下、私は集合仮宿(アパート)の扉をくぐり、大通りへと踏み出した。陽光が石畳を眩しく照らし、肌を撫でる風には微かに魔素の気配が混じっている。左右に伸びる街路は、淡い灰色の石で整えられており、その両脇には色彩豊かな屋根を戴いた石造りの家々が、ずらりと建ち並んでいる。赤、青、緑――鮮やかな屋根瓦が連なる様は、まるで絵本の挿絵のようである。見慣れない景色、集合仮宿(アパート)から出ればこの高揚感が毎度のこと楽しませてくれる。


 「ほう…これが人間の住む街か」


 「あ、街に来るのも初めてなんですね」


 「そうだな。部下から人間の街や集落の様子については再三聞かされていたのだが、実際に赴いたのは、これが初めてだな」


 道を抜けるそよ風が、彼女の長い白髪を揺らす。辺りを回しながら、リクの少し後ろを付いて歩く。一方で、行き交う人々の視線は、その見慣れぬ美女――アマリマに一点集中していた。けれど、その視線を彼女は意に介する様子もなく、淡々とした足取りで歩き続きていた。


 道行く人々の声が重なり合い、街にはいつもと変わらず活気に満ち溢れていた。住民の話し声や子どもたちの笑い声、獣人やエルフたちの軽やかな足音。それらが混ざり合い、王都特有の多種族的な喧騒が響いている。だがそれに一切の不快感は湧いてこない。


 「———にしても人間だけではないのだな」


 「もちろんですよ。エルクレイム王国では奴隷制度を禁止されていますからね」


 【エルクレイム王国】は、幾つかの大国の中でも特に、「多種族共存」の理念を重んじていて、種族間の隔たりをなくす政策が徹底されている。リクが述べた"奴隷制度の禁止"もその一環の一つ。実際その所以(ゆえん)だろうが、街にはさまざまな種族が肩を並べて暮らしている。多様な種族の冒険者、商人、観光客、研究者……目的は違えど、誰もがこの王都に魅了され、ここでの時間を過ごしていた。この国は、まさに「多様性」が息づく場所だと言えるだろう。


 「そうなのか。通りでエルフや獣人が活き活きしている訳だ。奴隷の撤廃…殊勝な心がけだな」


 そうして、大通りを歩いていく。


 「——して、これはどこに向かっているのだ?欲しいものは新たな装備と、茶葉であろう。道具屋ならそこら辺にあるではないか」


 そう言うと、アマリマさんは道の脇にある武器屋を指差す。その武器屋の軒先には、いくつもの樽や木箱が置いてあり、その中に無造作に剣や槍、斧までもが保管...いや入れられていた。


 「確かにそうなんですけど…。ポーションの予備ももう無かったので、ついでにそれも買おうと思って。いつもお世話になっているお店があるので、今はそこに向かっている途中ですよ。嫌なら集合仮宿(アパート)に帰るか、実家に帰ってくださいねー」


 「…殺すぞ貴様」


 「すみませんでした」


 ……今のは俺が悪い。アマリマさんに怒られた直後だったが、空気はまだ柔らかく澄んでいた。気を取り直し、大通りをさらに進んでいくと、道幅が徐々に広がり、人の流れも明らかに密度を増していく。


 そして――視界がぱっと開けた。


 そこは、エルクレイム王国が誇る最大規模の市場にして、他国からも観光客が訪れる名所。目の前に広がるのは、【ノヴァリア露店街】。その美しさと賑わいは、この大陸の"絶景七選"にも選ばれている。


 辺りには色とりどりのテントが連なり、紅、蒼、橙、紫といった鮮やかな布地。どの布地にも光を受けてきらりと輝く刺繍が施され、風に揺れるたび、虹のような光彩を空に映す。屋台には香辛料や果物、魔道具、アクセサリー、異国の布までが所狭しと並び、通りには荷を満載した荷車や、品定めに夢中の人々があふれている。そのすべてが一本の道に収まりながら、波打つように賑やかに動いているのだから、まさに"色彩の奔流"と言っても過言ではない。


 「……これは、なかなか。」


 思わず、アマリマが足を止める。

 その紅と黄金色の瞳が微かに見開かれ、色と光の奔流を静かに見つめていた。


 「これが我が王国が誇るノヴァリア露 店 街ッ!!なんと、この市場は絶景七選の——」


 我が物顔で自慢するこいつの話は左から右に流すとしよう。ふむ、これは確かに美しい。色彩豊かな蝶が飛んでいるようだ。にしても、自身の住まいの件と言い、(いささ)(やかま)しいな。


 「——という訳なんですよ、アマリマさん!!って聞いてます?さっきから余所見が凄いのですが」


 「おー…キイテオル、キイテオル。さっさと行くぞ。百聞は一見になんとやらだ」


 アマリマさんの顔がみるみる渋々顔に代わり、息を吐きながら、もう一度市場の方へ目を向け直した。こうして二人は市場へと足を進める。幸い長い一本道の両脇に出店や屋台が並んでいるだけのため、道に迷うことは無いが、人混みに流されてしまう可能性は大いにある。

 ズンズンと歩いていき、やがて俺は一軒の屋台に足を止めた。看板には、手書きの文字で「リンダの香草茶房」とある。


 「ここです。俺がいつも使ってる茶葉は珍しくて、他じゃあまり見かけないんですよ」


 ノヴァリア市街の一角、香気漂う茶葉専門店。

 店主の軽快な掛け声とともに、慣れた調子で店員のおばあさんに話しかける。俺は目的の茶葉を選び、さっと数袋を購入する。

 その間アマリマさんは屋台にある簡易的な木造の棚に、ずらりと並ぶ瓶のラベルを興味深げに眺めている。


 「……良い香りだな。これは眠気覚ましの効果があるのか?」


 アマリマさんは、ぶつぶつと独り言を呟いていた。茶葉というより、それがもたらす効能に興味を示していた。


 「ありがとうございましたー!」


 目的の茶葉を買い終え、リクは露店街の喧騒を背に一本の細道へと足を踏み入れていった。私もそれに従うかのように後を追う。


 舗装された石畳は、露店街のものと比べると少し古びている。道幅も先ほどまでの大通りに比べると随分と狭い。左右の建物が近く、看板や軒先が頭上すれすれまで迫ってくる。香辛料や香水、魔導具が所狭しと吊り下げられ、彩りに満ちた通りとはまた違った、雑多で息づくような活気がここにはあった。そんな路地のような細道を興味深げに見回しながら歩く。


 「…何故こうも、薄汚い(みち)を通らねばならんのだ。茶葉を買ったのだから、次は装備であろう?武具店なら先ほどの屋台通りに何軒か立ち並んでいたぞ」


 「そう言わないでくださいよ。薄汚い…のはそうかもしれないですけど。屋台の防具とかは高くて仕方ないんですよ…。それに屋台同様、よく行くお店があって、そこは結構良い品物が揃っているんですよ!」


 しばらく進むと、奥まった角地にひとつの店が現れた。扉に掛けられた、年季が入った木製の看板には、「エレナの魔道具店」と記され、歪なランタンが入口を照らしている。小ぢんまりとした外観だが、軒先には小型の魔導具が吊るされている。つい先日まで、慣れないことが多く続いていたから、見慣れた風景に安心感を覚える。


 「ここです。俺の行きつけの魔道具店。店長の娘さんが良くしてくれてそれ以来、よく通うようになったんですよ——」


 そう言って扉を開けたその時だった。怒気を大いに含んだ低い声が聞こえてきた。


 「テメェ!!舐めてると本当に痛い目見るぞ!!とっくに今月の期限は過ぎてんだよ!!」


 「ま、待ってください、あと少しだけ時間を……!本当に今は無理なんです!」


 バンダナを巻いた大男と、金縁の眼鏡をかけた細身の男がカウンター越しに、叫んでいる姿が目に入った。柄が悪いとはこの人たちのことを言うのだろう。叫ばれているのはこの店の店員だ。

 だが、俺が扉を開けたことで備え付けの呼び鈴がチリンと鳴ってしまった。それに気付き、さっきまでカウンター越しに、店員を怒鳴りつけていた男二人が振り向き、その鋭い目つきを俺に対して向けた。


 「ア、アハハどうも…えっとぉお客さんですよぉ。......なんちゃって」


 俺はアマリマさんにも使用した、作り笑いを炸裂させながら、この張り詰めた空気を和ませようと努力したが、その努力は無に帰してしまった。


 「あ゛ぁ!?見てわかんねぇのか!!こっちは今取り込み中なんだよ!さっさと出て行きやがれ!テメェ()——!!」


 その瞬間、ゾクッ——と俺の背筋が音を立て凍りついた。

 テメェら。バンダナを巻いた大男がそう言ったと同時に、俺の横に立っているアマリマさんが、物凄く鋭い冷ややかな目つきで男を睨んでいるのが、視界の端で感じ取れた。本当に鋭過(するどす)ぎて切ってしまいそうな勢いだ。その殺気を帯びた視線に男たちは肩を振るわせ、怯んだ様子を見せた。


 「……チッ、おい!帰るぞ。…テメェ、女ァ。顔覚えたからな」


 舌打ち混じりに、男たちは肩をすくめながら店を後にした。アマリマ()()の態度に何かを察したのか、深追いする様子も無く、すれ違いざまにこちらを横目で一瞥すると、そのまま細道へと消えていく。しっかりと大通りに姿を消したのを見届けて、俺は自慢げに鼻を鳴らす。


 「まったく...一昨日来やがれッ!!アマリマさんがやっちまいますよ..!」


 「非常に不愉快だったな。貴様も含めて...な」


 …まぁ良い、気にするだけ無駄と言ったところだ。店前の看板もそうだが、店内もそれなりに年季が入っている。「魔道具店」と書いてある通り、店内には至る所に見たことのない魔道具が、置かれていた。…"セナ"の工房で魔道具の類はそれなりに知っていたつもりだが、やはり時代が進んだのだな。見たことのない物ばかりだ。今度リクに買わせてみるとしよう。


 それらの魔道具の中には、すでに魔力が宿っており、誰かの手が施されていることがわかる。

 だがこれは、おそらくカウンター越しにいるこの小娘が作ったものだろう。


 栗色の髪を後ろでまとめ垂らし、白いエプロン姿で棚の整理をしている娘。年の頃はリクとそう変わらないように見える。透き通るような肌に、長いまつ毛。笑顔を浮かべると、その場の空気が一段明るくなるような、不思議な魅力を持っていた。"セナ"が人間に興味を示す理由がなんとなく理解できる。


 「リクくん!久しぶり!…そ、そのごめんなさい!騒がしくしちゃって…」


 深々とカウンター越しに何度も頭を下げる少女に、リクは笑いながら話かける。


 「アハハ…大変ですねエレナさん。あんなのに絡まれて。」


 「大丈夫、大丈夫!こっちが強く出られないって分かってるから、店まで来るんだよね…あの人達」


 ぽつりと愚痴をこぼしながらも、エレナさんはすぐにいつもの調子を取り戻し、この魔道具店の従業員として振る舞う。


 「それで今日は何をご用意いたしましょうか!いつもの回復用ポーションでしょうか?」


 「あ、今日は回復用ポーション(それ)と、冒険者用の装備一式もあったら見せてもらいたいです」


 俺はカウンター越しにそう告げる。エレナさんはすぐに「少々お待ちください!」と微笑んで、奥の部屋へと軽やかに駆けていった。かと思えば、箱に詰められた赤い液体の入ったガラス瓶に、綺麗に畳まれた革装備、金属製の籠手と短刀を持ってすぐに戻ってきた。


 「回復用ポーションは、【ニンブル山岳】地帯の薬草を使った新調合のやつが入ってますよっと…!あ、リクくん知ってます?あそこ最近、魔素が多くなったらしいですよ」


 「え?そうなんですか。あそこ…結構王国から近いですよね。はぁ…依頼減りそうだなぁ。」


 「アハハ…辺りの魔素が多いと、強い魔物が増えちゃいますからね。確かに、低級の魔物の討伐依頼は減っちゃうかもです。…それで新しいポーションなんですけど、いつものよりちょっとだけ回復力が上がってて、味は──まあ、多分大丈夫なハズですが、いかがですか?」


 エレナさんは比較するように、これまで俺が買っていたポーションを隣に置いてくれる。…確かに、新しい方の色味がより赤い気がする。気がするだけだから、なんとも言えない。


 「あー…じゃあお言葉に甘えて、一本だけお願いします。あ、あと、いつものは三本お願いします!」


 そんな注文交じりの世間話を交わし、購入品を包装しながら、エレナさんは瓶を並べていく。並べられた回復用ポーションは、どれも丁寧に拭かれたガラス瓶に詰められ、ラベルも綺麗に整えられている。エレナさんの包装はいつ見ても丁寧だ。正直、露店等の武具店の包装は雑だ。一度だけ買ったことがあるが、持ち帰ると装備に傷が付いていたことがあった。


 「装備の方は…現在これぐらいしか無いんですが。銀級程の魔物の攻撃であれば、大丈夫だと思います。」


 「あ、いえ全然大丈夫ですよ。俺は銀級の依頼なんて受けられませんし…。ハ、ハハハ…」


 "銀級程度"という言葉が、俺の心に突き刺さる。それに激しい痛みを感じた俺は白目を剥いて、空を見上げながら勝手に笑ってしまう。もちろんエレナさんに、他意がないのはわかっている。


 「え、急にどうしたんですかリクさん…?あ、あぁぁあ!?違うんです!別にそういうつもりで言ったんじゃ無くて!あくまで装備の説明として言っただけで…!!」


 俺の反応を見て、自分が何を言ったか理解したようで、エレナさんの顔は突然真っ青になっていく。そして、捲し立てるように言葉を重ね、絵に描いたように、カウンター越しにアタフタしている。


 「ハ、ハハ...いいんですよ——あ、そうだ。最近お父さんの方はどうですか?」


 それまで白目を剥いていた俺は、正気を取り戻し、エレナさん自身の話を切り出した。その問いに対して、エレナさんの(うつむ)きながら、カウンター越しに答えてくれる。(うつむ)いているから、顔まではよく見えなかったが、どこか暗い顔をしていたように思う。


 「はい…父はまだ元気ですよ。母も、薬のおかげで少しずつ良くなってきてて……。だから、私が店番くらい、ちゃんとやらないとって思って」


 そう言って、エレナさんはどこか誇らしげに微笑む。

 その笑顔には、無理をしている様子も、どこかの誰かに媚びる作り笑いでもなかった。本来の年齢よりも少しだけ大人びた、その強さと優しさが、僕にはとても眩しく映った。俺と年は一つしか変わらないはずなのに、ホントよくできた良い娘さんです。


 …エレナさんがこのお店で、店主として働くようになる前は、エレナさんのお父さんが店主を務めていた。そして、ご両親二人仲睦まじく、お店を経営していた。その頃から、俺はこのお店でよく装備を購入していたから、エレナさんのご両親とは面識がある。店主であるお父さんは大柄で、見た目通り豪快な性格かつ、人当たりが良くて常連さんとはよく世間話を交わしていた。お母さんも口数は多い方ではなかったが、穏やかで良い人だった。エレナさんの商品の管理の丁寧さは、きっとお母さん譲りなのだろう。


 だが、その中でお母さんが病を患ってしまい、今は王国内の医療施設で入院中らしい。


 それに呼応するように、エレナさんのお父さんはよく働くようになってしまったらしい。それが祟ったのか、体を悪くしてしまい、それ以来お店で見かけることは無くなってしまった。


 自分がこの店に長く通っている理由の一つは、冒険者になったばかりの頃に、そのお二人に良くしてもらっていたからだ。──けど、もしかしたら、エレナさんの存在があるのかもしれない。何事にもめげずに取り組む彼女の強かさ。そんな彼女が持つ強さに憧れている——そんな思いが胸をよぎったが、俺はそれを言葉にはしなかった。


 「用は済んだか?ならば行くぞ。さっきの市場をもっとよく見ておきたい。」


 店内の商品を観察していたアマリマさんが俺に声をかける。ちょうど店内を一周していたので、一通り見終わったのだろう。


 「あの……そちらの方は?見たところ魔族の方のようですが。」


 エレナさんが恐る恐る、俺と一緒に来店したアマリマさんのことを尋ねる。

 エルクレイム王国は「多種族共存の理念」を重んじている、と言っても魔族は別なのだ。魔族は代々、魔王を生み出している種族であり、人間やその他の種族に大きな損害を及ぼしている。もちろん人間に友好的な魔族も居るには居るのだろう。だが、世間では前者のイメージが多く流布しており、現状魔族のことをよく思わない人が多い。よってエレナさんが目の前のアマリマさんに対して、恐怖または嫌悪感を抱いていても、それは何らおかしいことではないのだ。

 先ほど、街中を歩いていた時、街中の人の視線を釘付けにしていたが、その七割ぐらいはアマリマさんを警戒する視線だろう。...正直、魔族と一緒に行動しているということは、なるべく隠したい。


 「え?あぁ、この人とはさっきそこで——」


 「共に暮らしている」


 俺の返答を遮るように、アマリマさんはキッパリと一言、エレナさんに向かってそう告げる。そして、この空間に少しの間静寂が訪れた。


 「…共に暮らしている……え、ど、どどど同棲っ!?」


 そう言うと、エレナさんは顔を真っ赤にさせて、目をぐるぐると回し、頭からはフシュ―と煙を上げている。少しの沈黙の後、顔の熱気は元に戻っていったが、エレナさんは口をあんぐり開け、アホ面を繰り出すが、すぐに表情を整える。その間、俺は両手をアタフタと指揮者のように慌てて振り回し、補足するように否定を混ぜて捲し立てる。


 「いや、住んでないでしょ!アマリマさんはこれから自分の家に帰るんでしょ!!」


 「…ム?貴様も今そう言っているではないか。私の家は()()()()だ。この街に来る前も夜を共にした、私達の家に帰るのだろう?」


 アマリマさんの口が三日月のようにニンマリと変形し微笑む。まるで楽しんでいるかのようなその表情に、俺は少しだけ既視感を覚える。さては俺の反応を見て楽しんでいるなこの魔族…!


 「いやっ!そ、そのエレナさん!誤解はしないで欲しいんですけど。昨日偶然出会って…!仲良くなって…みたいな……」


 そんな焦りに焦った俺の様子を見て、エレナさんは怪訝そうにジトーッと俺の目を見つめる。残念ながら俺の目は現在、泳ぎまくっているため、エレナさんと目が合うことは叶わなかった。そして、エレナさんはハァと一息吐いて、柔らかく微笑み口を開く。


 「フフ…!ごめんねリクくん。急に一緒に暮らしてるって聞いたから、少し驚いただけです!でも、二人とも凸凹コンビって感じでなんかお似合い!それに...言葉にしづらいけど、()()()()()()みたいな...?お二人が一緒に居ると何か起きそうな気がします…!」


 「…それってどう言う意味ですかエレナさん?」


 「フフッ…良い意味ってことっ!」


 そう言いながら、彼女はカウンターの下をガサゴソとまさぐり、大きく黒い布を取り出した。


 「あ、あった!あと、これもお渡ししておきます。父製では無いんですが、私が作ってみたんです…!素材はそこまで貴重な素材は使えなかったんですけど、物理攻撃に対する耐性を組み込んでみました」


 リクはそれを手に取り、丁寧にその黒い布を広げてみせた。広げるとそれはリクの身長よりも、少し大きめなサイズの黒い外套(ローブ)であった。【式導魔法】を用いて、この外套(ローブ)を視ると部分的ではあるが、"衝撃緩和"の魔術式が組み込まれていることが、文字通り目に見えてわかった。


 「え、いいんですか…!?これ結構良い生地使っていると思うんですけど…」


 「はい。試作品のようなものですから、サイズも少し間違えてしまって…。見たところお隣の魔族の方にサイズが合うようなので!是非ともお使いしていただけたら幸いです…!」


 「そこまで言ってくれるなら…お言葉に甘えて、これも買わせて貰います。…えーっとポーションが四本と俺の装備…、あとこの外套(ローブ)…合計でいくらになりそうですかね?」


 「あ〜…この外套なんですけど、おまけしておきます!さっきも言ったんですけど、試作品ですし、全然気にしないでください!!それに…いつも来てくれてるお礼ですから」


 そういう時、アマリマさんは俺が持っていた外套をむしり取り、俺の顔に被さる勢いでバッと(ひるがえ)し、羽織ってみせた。


 「そうか…。では遠慮なく貰っておくとする」


 「何でアマリさんが決めてるんですか?」

 

 「フフフ…喜んでもらえてよかったです!今日は貴方方に助けられましたから」


 「では、お会計が―――...」


§


 そう言って、俺たちは購入品を手にして魔道具店を後にした。その時も、エレナさんはわざわざ外にまで出てきて大きく手を振ってくれていた。なんて健気で良い子なのだろう。薄暗い路地を抜けて、再び人通りの多い露店外へと戻ってきた。


 「お気をつけてー!さっきはありがとうございましたー!!」


 「用は済んだか?済んだのなら、私は先ほどの露店をもう一度見たいのだが」


 「あ、じゃあここでお別れですね。俺は少し"冒険者ギルド"に行こうと思っていたので「私も行く」


 「...いや、露店は――「黙れ。気が変わったのだ。私もつれていけ」


 「えぇ...」


 今日何度目かわからない困り顔を浮かべながら、リクはため息交じりにそう呟いた。


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