19話目 花粉症対策グッスは現在品切れしております
〜新入生合同研修当日、夕方、フンババの森・オリバー視点〜
『ユニークスキル・・・
一部の人間が所有する特殊な才能・能力の総称
その種類は多岐に渡り、戦況を覆す程に強力なスキルもあれば、使い方によっては大きな財を築けるスキル、日常生活に支障を来すスキルもある
また、自分がユニークスキル保持者『スキル保持者』であることも知らずに、生活している人間も居る
スキル保持者・・・
ここでいうスキル保持者とはユニークスキル保持者を指す
大きく分けて二種類に分けられる
『先天的スキル保持者』と『後天的スキル保持者』である
先天的スキル保持者は、
産まれながらにユニークスキルを抱えて産まれて来る人間を指す
産まれた直後は保持者ならではの『特殊性』を確認出来ないため断定出来ず
自分が特殊であると知らずに成長する子供が多数存在する
大体、3〜8歳までの間に判明することが多いが、保持者の中には本当に『特殊』な者も存在するため、産まれて間もなく断定される場合もある。
後天的スキル保持者は、
産まれながらに所持しているユニークスキルが、なんらかの理由で解放されず
ある日突然、スキルを解放する人間のことを指す。
様々な憶測が飛び交うが
2種類の要因で解放することが多い
1・生命の危機に直面した場合
2・ジョブスキルなどで、特定のスキルを取得した場合
後天的スキル保持者の多くは
突然得られたスキルを振るい、自分に酔う者も少なく無い
(勇者養成学園・入学の手引き、より抜粋)』
率直に言おう
俺はレイチェルがコレなのではないかと疑っているのだ
そうでなければ教科書の一節など思いだしたりはしないだろう・・・
彼女はジョブスキル・『爆裂の矢』を取得した以降、
放った物が全て爆発すると言う、トンデモ現象に悩まされている
俺はコレをスキルシリーズ・『魔弾の射手』の1つなのではないかと思う
スキルシリーズとは、ある程度、関連性を見つけられたスキルに付けられる総称だ
『魔弾の射手シリーズ』は、レイチェルの様に放った物が全て魔法的な要素を付与する効果がある
現在俺達は、出来るだけ多くのトレントが群がっている場所を探している
そこで確認したいことがあるのだ
それで彼女がスキル保持者かどうか断定出来る
鼻に突く匂い・・・
黄色い花粉が飛んでいる・・・トレントの花粉だ
レイチェルにマスクを渡し着用を促す
レイチェルは顔に?を浮かべていたが問答無用で着用させる
トレントの花粉は、人間には魔物化の影響は無い
魔物になるのは植物だけだ、それも長時間花粉に晒された特定の植物である
しかし、吸い込んで身体に無害かは別問題である
人によって症状には差があるが
トレントの花粉を吸い込むと、風邪の様にクシャミや鼻水と言った症状が現れ、人によってはそれで寝込まなければならない場合もある
決して容認できる症状ではない
この症例は、トレント以外の魔法植物の発する花粉にも似た様な症状を引き起こす作用があると言われ
年間、国民の半数以上が苦しめられている・・・
「はっくしゅん!!・・・」
「だ、大丈夫ですか師匠!?」
「ああ、・・・大丈夫だ・・・」
俺がこの花粉を警戒するのは、俺自身も患者であるからだ・・・
だから、花粉の飛び交う季節になると学園の中庭には絶対に近付かない
あそこは爺ちゃん先生の『植物園』だからな・・・鼻水にまみれて死ぬのはゴメンだ・・・
さて、
花粉が濃くなったということは、この先に多くのトレントが居ると言うことだろう
「レイチェル、弓はどれくらい触っていない?」
レイチェルは一瞬、言い難そうな顔になったものの直に答えてくれた
「2日くらい前でしょうか・・・」
あれ?
結構最近じゃないか
俺はてっきり、一ヶ月以上触っていないのだと思っていたが・・・
「・・・まだ、その・・・アーチャーを諦め切れなくて・・・その・・・ゴメンなさい!」
謝ることないだろうに
目の前でレイチェルが頭を下げている、泣きそうな表情で・・・
俺はこのとき商人云々ではなく
この後輩に自信を取り戻してやろうと思った
アリシアに言わせれば
俺は、血も涙も無い冷酷な奴なのだろうけどな・・・
自分で言うのもなんだが、そこまで酷い性格ではない
少なくともレイチェルは、購買部では良く働いてくれている
それに見合った報酬をバイト代以外であげるのも上司の器量と言うやつだろう・・・
だから、俺はできるだけ優しく聞こえる様に声をかけてやる
「安心しろレイチェル
お前の努力は無駄にはならない
俺がお前にアーチャーとしての才能もあることを思いださせてやる
その後にアーチャー目指そうが、料理人目指そうがレイチェルの好きにすればいい」
俺の言葉にレイチャルは目を丸くして見上げて来た
そして一瞬後には涙をこぼし始めた・・・
おいおい泣く所ではないだろうに・・・
それにしてもレイチャルは泣き虫だ
改善しなくてはいけないかもしれないな・・・
俺がレイチェルを泣き止まそうと近付いた瞬間
その声は響き渡った・・・
「こんな森に小さい女の子を連れ込んで泣かすとは・・・覚悟は出来ていますか?」
底冷えする様な冷徹な声
それはココ最近聞いていなかった、もう一人の購買部運営委員の声である・・・
「アリシアか・・・久しいな、元気にしていたか?」
視線を向けると、無表情なのにも関わらず怒りを露にしたエルフの少女がソコに居た
エルフには少し異様に見える大きな剣、『クレイモア』の切先を俺に向けている
アリシアの『クレイモア』は特別製だ、彼女が得意とする『雷属性』と『風属性』、『水属性』の魔法に合わせて強化された、極めて高価な魔法武器である・・・
「問答無用です、切られて下さい」
アリシアは俺がギリギリ捉えられる範囲まで踏み込んでクレイモアを振るう
アリシアはクレイモアを片手で振るう・・・
クレイモアとは通常、両手持ちの大剣である
片手で扱おうと思ったら、並外れた筋力が必要となることだろう
それを彼女は風の魔法でアシストしながら振るっている
一見、頭の良い戦闘スタイルでは無いが
片手剣と同様のスピードで放たれる斬撃は恐怖の一言である
ジョブ・魔法剣士ならではの離れ業といえよう・・・
レイチェルは放心状態で、状況を把握できていない様だ
アリシアは何を誤解しているのか怒り心頭
仕方ない、アリシアの相手をしてやるか・・・
クレイモアの斬撃を避け
トレント木刀を抜く
俺の自信作の木刀を見てアリシアは笑った、自虐的な笑みだ
「私相手では木刀で十分と?
舐められたものですね・・・」
いや、お前十分強いから木刀では不安なんだが・・・
と、言おうとして言葉は遮られた
俺を追い込む様な斬撃を連続して放って来る
そしてその最中、魔法の詠唱を始めてやがる・・・
エドガーにしてもコイツにしても流行っているのか、それ?
『荘厳たる雷の聖霊よ、我が武器に宿り敵を滅ぼせ!!!』
「サンダー・ウエポン!!!」
雷属性の付与魔法
さらに魔法の詠唱は続く・・・
『天に轟く雷神よ、その雷を斬撃に変え、我が敵に天の畏怖を刻み込め!!!』
くっそ、面倒な魔法を!!・・・
瞬時に回避行動に移ったが遅かった・・・
「ライジング・ブレード!!!」
〜新入生合同研修当日、夕方、フンババの森・レイチェル視点〜
師匠が死んだ・・・そう思いました
いきなり現れた奇麗な女性に雷の剣を放たれ、師匠の居た場所は土煙が舞っている
普通に考えて、あれ程の威力の魔法をまともに喰らって生きてはいない・・・
ライジング・ブレードは雷属性の中級魔法だ
しかし、さっきのアレは・・・
どう見ても上級の威力がありました・・・
驚きを隠せません
目の前の女性に恐怖します
しかし、師匠を殺された以上、黙っているわけにも行きません
恐いですが弓を引きます・・・
私が矢を取り出していると、アリシアと呼ばれていた女性は土煙に向けて
下級の攻撃魔法サンダー・ボールを連発し始めました
死者を冒涜するつもりなのでしょうか?
矢を持つ手に力が籠ります
しかし、アリシアの次の言葉で矢を落としてしまいました・・・
「いつまで隠れているつもりですか?
さっさと出て来たらいかがですか?
もう一発、放ちますよ?」
土煙が徐々に濃くなって行きます
おかしい・・・
そう感じたのは、アリシアも同じだったようです
「何か小細工をしてますね・・・」
「ああ、小細工させてもらった
地属性の下級魔法、周辺の雷耐性を上げるサンド・フィールドだ
悪いがこの状態で戦ってもらうぜ?」
土煙の向こう側から現れたのは、師匠の姿でした
若干、修羅場なのでは・・・
花粉と砂埃と雷で、大変なことになっているとおもうwww




