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10話目 この時期トレントの実は、御安くお買い求め頂けます

〜新入生合同研修へ向けての発注で、オリバーとアリシアが揉めてから一週間後・アリシア視点〜


「それじゃぁ、講義を始めるから皆ノートとってくださいね。・・・よっこらしょ」


 大勢の生徒が席に着く階段教室・・・

 座席数450を全て埋める生徒達の視線を一身に浴びるのは、教卓の椅子に座る初老を迎えた男性である・・・


 マック先生(通称・爺ちゃん先生)・・・

 学内唯一の龍人族の教員で、龍人族の象徴である『角』。それが、小振りな巻き角である事から、龍というより羊の様な印象を受ける。

 性格は非常に穏やかで、のんびりとしており、生徒達からの評判も良い。

 校内における魔境の一つ、『植物園』の管理人でもあり、魔法植物学の先駆者。

 

 彼の教える魔法植物学は専門家には高い評価を受けているが、生徒達からは眠くなる授業No.1に選ばれる程に眠い。しかし、寝てても怒らないから、この先生の人気は高い。


「んじゃ、新入生合同研修説明会を開催しますわな」


 そう言って、マック先生は教室内を見回し、私の隣に目を留め溜め息をついた。

 座席に座る生徒の多くが約1ヶ月前に入学した新入生、その他は今回の研修に引率として付き添う事となった上級生が数名・・・その中には私と、隣で寝るエドガーも含まれている・・・


 この男、先生が来た瞬間寝るとは・・・

 オリバーから話を聞いていたが、筆記が苦手というより身体が拒否しているのではないだろうか?


 一週間前、植物園でエドガーとあった後、直に新入生合同研修の引率に志願した

 オリバーの発注を改めさせる事のできなかったせめてもの償いだ

 エドガーを巻き込んだのは、今現在、学内最強の一人となった男の助力が必要と感じたからだ


 しかし、直ぐ寝るとは・・・


「ぐがーーぐがーー・・・」


 イビキ五月蝿いし、寝てても五月蝿いとは・・・この男、救いようが無いな


 マック先生は露骨に顔をしかめたが、何も言わずに黒板に絵を描く

 そこに描かれたのは『木に脚が生た様な生物』と『太った鳥の絵』、そして『赤いオオカミの様な生物』・・・

 

 まず、木の様な魔物の絵と、鳥の絵、オオカミの絵を順番に差して


「この時期になると、『フンババの森』に生息するトレントは、花を咲かせ実を実らせる

 他の場所に生息するトレントと違い、『フンババの森』はトレントが群生しており、実らせる果実も他より栄養素が高くなる。

 理由として挙げられるのは、その昔、八聖勇者の一人が『フンババの森』にて上級魔族の一人を封印した事により、眷属であったトレントが成長し易い土地になったという説と、

 ただ単に、トレントの花粉が飛び易い土地と言う説があるねぇ〜。


 ・・・話が脱線したのぉ

 つまり、実ったトレントの実を狙って、南西からコッコ鳥が群れで押し寄せる

 そして、そのコッコ鳥を狙ってレッドハウンド共が現れるわな・・・


 それが、この時期

『フンババの森』で魔物が大量発生する簡単な原理なのじゃが・・・」


 生徒を見回してニヤリと笑う・・・


「無論、発生するのはこの三種だけでない

 稀に低級のドラゴン、巨人族、低級の魔族などが紛れ込むことがある・・・


 実際、3年前の合同研修では

 低級のドラゴン族であるワイバーンが群れで現れた事例があるのぉ」


 三年前の悲劇は今でも語り継がれている、

 コッコ鳥の群れを追いかけて現れた、ワイバーンの群れ・・・


 ワイバーン・・・

 魔物分類では龍族に属する魔物。

 人間が使役する事の出来る魔物で、ジョブ・龍騎士が乗る龍の殆どがワイバーンである。一度、心を許した人間には死ぬまで忠実であり、魔物の中では知的な龍族に属するだけあって、個々の知能が極めて高く、また、プライドが非常に高い魔物である。

 野生のワイバーンは、その知能を生かした狩りを得意とする。

 個々の戦闘力はそれほど高くは無いが、群れを作り、陸空両方から敵を追いつめる戦法をする。


 三年前の先輩方は研修期間中、92名が死亡、研修後に51名が学園を後にしたと聞く・・・


 新入生達はそれでも、合同研修という響きに心躍らせている様だ

 ワイバーンという固有名称に、「やっとドラゴンと戦える」と呟いている者も居る

 一ヶ月間、この学園で生活していたとしても

 その一ヶ月で覚えれる事は微々たる物だ、しかし、彼等が根拠の無い自信を持つには十分な期間だった


 初級の魔物を簡単に倒して、悦には足れる時期は終わったのだ・・・


〜引き続き、新入生合同研修説明会・ある一年生の視点〜


 軽装学科一年生のフィオナは欠伸混じりに、爺ちゃん先生の授業を受ける

 ぶっちゃけ眠い、帰りたい・・・

 レッドハウンドなんざ余裕だしwww


 爺ちゃん先生とは違い、おなじ龍人族である彼女は人一倍自尊心が強かった。

 いや、マック先生が龍人族にしては異質なだけか・・・


(先生のことは一応、尊敬してるんだけどなぁーー)


 なにぶん、眠気を誘う授業をする先生だ

 口調も眠りを助長している様にしか聞こえない・・・


 こんな先生でも、学園長の次に強い4人の教師の一人なのだから笑えて来る


 この学園には、歴代最強クラスの学園長の下に

 学園長には劣るが、圧倒的とさえ言われる強さの教師が4人居る


・現役時代『剣聖』と呼ばれ、今は、剣士学科の主任教師を勤めるマリエル先生

・宗教系学科の主任教師を勤め、『神々の怒り』という渾名を持つ大神官ドミニク先生

・我が軽装学科の誇る災厄のアサシン、『暗殺姫』の渾名を持つソフィ先生

・そしてイマイチ、仕事してるのか家庭菜園しに来ているのか解らない、『爺ちゃん先生』ことマック先生


 以上の4人が徒党を組めば、どうにか学園長の横暴を止められるレベルの強さを持つ4人だ・・・

 マック先生は知らんが、残りの三人はそれぞれ八聖勇者に選ばれる程の実力者と聞く


 そんな一人に数えられるのだからマック先生もソコソコ強い筈なのだ

 同じ龍人族として一度手合わせ願いたいと思う


 まぁ、わたしのジョブは格闘家で、爺ちゃん先生のジョブが錬金術師らしいから、まともな勝負にならないとは思うけどね・・・


 どうせ手合わせするなら同じ近接系がいいな、

 と、思い教室を見回して見たときだった。


居た


 教室の後ろ側の席に面白そうなのが二人

 一人は有名人、『神速の魔槍』だ。しかし、もう一人、エルフの少女は初めて見る。

 少なくとも一年生ではないな・・・では、上級生か? だとしたら無名でアレか・・・


 一目見ただけでただ者では無いと感じ取れる・・・感だけどな・・・

 こういうときの感は、当たる方だ

 強い人間は、強い人間を求めるものだ・・・


 フィオナは

『神速の魔槍』に勝てると思っている程、愚かではないつもりだ

 一度、あの男が戦っている所を入学前に見た事がある、・・・レベルが違いすぎて笑ってしまった

 戦闘能力は高い方だと自負していた自分が、姿を捉える事が出来なかったのだ


 しかし、あの時

『神速の魔槍』と対峙していた男も素晴らしかった

 わたしが捉える事の出来なかった攻撃を最小限のステップで避け

 絶対絶命のピンチから奇跡の逆転劇に変えた男・・・

 さぞ、高名な渾名を持つ剣士なのだろう

 わたしはあの時、遅れて決闘場に見学に来たため選手紹介を聞いていなかったのだ

 もしかして4年生だったのかもしれない

 あれ程の剣士、一度手合わせ願いたかった・・・


 しかし、このエルフの先輩は何者だ?

 ほのかに感じられる闘気は、恐らく自分で調整し気配を察せられないように隠されている

 身体付きからして剣士学科の生徒と見た・・・

 剣士学科の渾名持ちを何人か見て来たが、どれにも当てはまらない気配を感じる


・・・フィオナは名も知らない上級生に闘志を燃やすのだった

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