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三十六計逃げるに如かず!

授業中。


「ふぁあ……。」


思わず欠伸が出る。


朝起きた時は案外平気だなと思っていたが、やっぱり睡眠時間が足りなかったらしい。


「ほう?私の授業で大欠伸たぁいい度胸じゃねぇか。」


俺のクラスの担任であり、現国担当の綱岡幸(元ヤン、独身彼氏募集中夜露死苦)。


「いやぁ……はは、昨日遅くまで先生の授業の予習してたので。」


「何?」


さっきまでの鋭い目付きが若干和らぐ。


お、これはもしかしたら……。


「いや、先生の授業が好きなのでつい予習が捗っちゃいまして!気が付いたら日付け変わっちゃってたと言いますか。」


まぁ嘘は言ってない。


昨日現国の勉強をして寝落ちしたのは事実だし……。


「私の授業を好いて根をつめるのはまぁ……そのう、嬉しくなくもないが……。


で、でもその、なんだ……。


本来の授業を疎かにするのは駄目だろう……。


い、以後気を付けるように。」


おや?おやおやおや?


もしかして結構チョロい?


「はいっ!気を付けます!」


「ん。」


そう言って綱岡先生はそっぽを向いて行ってしまった。


「何やってんだか……。」


横から宏美が呆れた声を出す。


「なんだよ、見てたのか。」


「隣だしそりゃ聞こえるでしょ。


あんな調子良い事言っといて本当は徹夜でゲームでもしてたんじゃないの?」


全く失礼な奴である。


「そう言えばこの世界に来てまだゲームとかしてないな。」


「この世界?」


「あ、いやこっちの話。」


「え、マジで勉強してたの?」


さも信じられないと言わんばかりの表情。


ちょっと失礼過ぎないかしらん...。


「当たり前だろ?


あ、これ、一応サンキューな。


すげぇ役に立った。」


借りていた現国のノートを返す。


「……そ。」


短く返して宏美はそれを受け取り、そのままカバンに入れる。


「ねぇ……三澄君ってそんな勉強熱心なタイプだっけ?」


目線はノートと教科書に向けたまま、ペンを動かしながらで、不意に宏美がまた声をかけてくる。


えぇ……まだ絡んでくんの……?


「別に良いだろ?


なんかそう言う気分なんだよ。」


「気分、ね。


どうせ夏休みが補修で潰れのが嫌だからでしょ。」


うっ、当たってるけど素直に認めんのはなんか癪だな……。


「あ、図星なんだ。」


えぇ……なんでこんなにあっさりバレんの……。


「だったらなんだよ?」


「別に。」


そこから沈黙。


俺もこれを好機とノートに目を向けてペンを走らせる。


「相変わらず字汚っ。」


「うっせ。」


えぇ...なんなの今日...。


めっちゃ絡んでくるじゃん...。


「ねぇ。」


「今度はなんだよ?」


「その……今楽しい?」


また意図の分からない質問だな……。


「だったらなんだよ?


お前には関係ないだろ。」


「なんでもない。


ただちょっと気になっただけ。」


そう言ってまたそっぽを向く。


もう話しかけるつもりは無いようだ。


なんて思っていたら授業終わりのチャイムが鳴る。


ったく、調子が狂うな……。


その後の昼休憩。


そう言えば今日は日奈美がなんだか特別なお弁当を用意してるみたいだったな。


よし、ここは早速中庭に……。


「いや、だから何ナチュラルにぼっち飯始めようとしてるんですか!」


またリオに背中を掴まれた。


「えぇ……だってぼっち飯は……「そのくだり前にもやりましたからね?」はい。」


そう言えば今日は日奈美が来ないな。


「あぁ、日奈美さんなら今日はクラスの人と食べるって言ってましたよ?」


「そ、そうか。」


まぁ、そうだよな。


日奈美にもクラスに友達の一人二人居るよな……。


そんな所までお兄ちゃんに似てたら流石に申し訳なくなるし……。


「と、言う訳で、今日は私と一緒に食べましょう。」


リオがそう言って手を引いてくる。


「おっ、おう。」


「ねね!」


と、そこで背後からスーパー5歳児のお友達の名前みたいに誰かが声をかけてくる。


「あ、はいねじゃん。」


「あ、どもども〜。」


灰崎八重音(はいざきやえね)


俺のUthtuber経由の知り合いである。


ニックネームははいね。


明るく元気なキャラであり、現在のクラスではクラスのムードメーカー的なポジションのようだ。


「二人って最近いつも一緒だけどもしかして付き合ってたりするの?」


「なんだリア充か……滅べ……。」


そしてこのいかにも陰キャっぽくてボソリと毒舌を吐く中性的な顔立ちの女子は宮戸冷(みやとれい)


タイプとしては対象的な二人だが、幼なじみらしくいつも一緒にいる。


「えぇっ!?いやいやいや!違いますよ!?


彼はその、親戚だしどちらかと言うと頼りないお兄ちゃんみたいな感じと言うか!」


あれ、なんか今リオがそう言った後に一瞬悪寒が走ったような……。


気のせいだよな……?


恐る恐る後ろを振り向くも、誰もいない。


うーん……疲れてるのかしらん……。


「あー、確かにそう聞いたけどなんかあんまり親戚なのに似てないなと思って。


それに従兄弟とかなら普通に結婚とかも出来るし?」


「け、結婚!?いやいやいや!学生の内からそんな……それに、その……!」


あぁあ、真っ赤になっちゃってまぁ。


必死に言い訳を考えている様だが恥ずかしさと混乱で頭がキャパオーバーな様子。


え、と言うかこれチャンスじゃね?


「あ、悪い、俺用事あるからまたな!」


「え!?ちょ!悠太さん!?」


グッドラック、チョロリ目刺。


俺はお前の屍を越えていく!


そうして俺は教室を飛び出し、今度こそいざ、ぼっち飯に!


「お、心友!いい所に!


一緒に飯行こうぜ!」


あれー……?


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