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彼女にフラれた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう  作者: 遊。


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らっきょうしか勝たん

夜。


「まさかこの年になって試験勉強をする羽目になるなんてな。」


専門学校を出た後ですぐに働き始めた俺は、当然ながらその後は勉強なんてしなくなった。


勿論仕事内容を覚えると言う意味でならしてる事になるが、こんな風に勉強して試験に臨むのなんて運転免許を取りに行って以来の事だ。


学生時代は全然好きじゃなかった勉強もあの時は真剣に打ち込めたし、つかの間だけどまた学生時代に戻ったような気分になったりもした。


てか自動車学校ってなんであんな友達出来ないのかな……?


俺だけかしらん……。


二人一組でやる心臓マッサージのやり方とかでペア組んだ人と話したりはしたが、あとは卒業検定で一緒になった人とちょっと話したくらいで基本ぼっちだったんだが。


そんな苦い思い出を頭から振り払って俺は宏美のノートと教科書を見比べながら、ノートに要点をまとめていく。


流石に全教科を一気に、と言うのは無理だから、毎日一教科ずつを目標にしてあとは土日で追い込みをかけようと言う作戦にした。


「お兄ちゃん……まだ起きてたの?」


小さく欠伸をしながら、日奈美がドアから顔を覗かせる。


「今は一分一秒でも惜しいからな。


日奈美はもう遅いんだからちゃんと寝ろよ?」


「じゃあ私もちょっとだけ勉強する……。」


そう言って日奈美は一度ドアを閉めると、ノートと教科書を持って戻ってくる。


「無理しなくて良いんだぞ?」


「うぅん、大丈夫。」


言いながらまた欠伸。


したかと思ったら……。


「ひーちゃん?だから俺は椅子じゃないよ?」


当然の様にまた俺の膝の上に座ってきた。


「椅子一つしか無いもん……。」


「ベッドがあるよ?」


「ベッドは机が無いし……。」


おぉう、眠そうなのになんでそんな反論思いつくのよ……。


と言うかこれじゃ俺が集中出来ないんだが!?


「お兄ちゃん、お弁当のおかずで何かリクエストある……?」


不意にそんな事を聞いてくる。


「そうだなぁ。


ひじきの煮物とか?」


「え、渋い。」


「え、じゃあらっきょう漬けとか?」


「弁当にらっきょう漬け!?


待って待って、そこは普通男子高校生だしハンバーグとか唐揚げとかじゃないの?」


「ははは、そんなの食べたら高血圧プラスメタボリックのダブルアタックだぞ?


それにひきかえらっきょうは凄いぞ!


フルクタンと呼ばれる水溶性食物繊維が豊富に含まれていて、 便を柔らかく保ち、ビフィズス菌の餌となって腸内環境を整える働きがあるんだ。


それに、コレステロール値や中性脂肪値の低下、血糖値の上昇を抑えてくれる。


それにひじきに含まれるヨウ素には甲状腺の働きをよくして髪の発育を促すと言われていて……」


「高校生の内からそこまで考えて食事してる人そんなにいないと思うけど……。


と言うかなんでそんなに詳しいの……?」


え?いないの?


好きな物食べまくってたせいで毎回健康診断をビクビクしながら受けなくて良いの?マジで?


それが怖くてむっちゃ調べたのに?


高校生凄すぎない?


「じゃあA5ランクのステーキで!」


「急にグレードが上がった!?


それにそんなお肉家に無いよ!?」


無いかぁ……。


まぁそりゃそうである。


そんなのが普通に常備してある家はそもそも一般家庭じゃない訳で。


「じゃあさ、オムライスが食べたい。」


「オムライス?」


「そうそう、ひーちゃんが心を込めて作ってくれた愛情たっぷりのオムライスが食べたい。


駄目か?」


「うん、うん!作る!絶対作る!


美味しいって言ってもらえるように頑張って作る!」


そう言って嬉しそうにひーちゃんは力強く頷く。


「楽しみにしとくよ。」


「うん!」


まぁ実際料理自体はなんでも良いのだ。


大事なのは日奈美が俺の為に精一杯心を込めて作ってくれたと言う過程であり、それだけで俺の中ではA5ランクの肉よりも価値があるのだ。


まぁそりゃあるなら食べては見たいけども。←え


なんて思ってたら。


膝の上から小さな寝息が聞こえてくる。


「無理すんなってのに。」


言いながら優しく頭を撫でてやると、気持ち良さそうに頭を動かす。


「いつもありがとな、ひーちゃん。」


と、言ってもこの世界のひーちゃんと関わっている期間はまだそんなに長くはない。


そう言う意味では、生まれ変わる前までこの世界にいた俺からもと言うのと、現世で俺が関わってきたひーちゃんに対する意味を込めてのお礼になるのだろう。


普段からこんなに懐いてくれていて、毎日朝ごはんや弁当まで用意してくれていて、なんだかんだ一番心配もしてくれていて。


「ほんと、俺には勿体ないくらい良い妹だよな。」


日奈美が妹で良かった。


改めてそう思う。


「さて、どうするかな……。」 


このままと言う訳にも行かないし、ひとまず俺のベッドに寝かせる。


幸せそうに眠る寝顔を見て、最近のドタバタで廃れていた心が浄化されていく。


このまま寝かせとこう。


まぁ、俺は最悪リビングで寝ても良いしな。


とりあえず、もうちょっと頑張るか。


再び机に向き合う。


絶対に夏休みを死守してみせる。


思えば一ヶ月以上の長期休暇なんて会社だったら普通に職務怠慢案件である。


なら学生に戻った今こそ存分に味わってやる。


ひーちゃんが作ってくれる愛情たっぷりのオムライスを楽しみに、俺は引き続き勉強に打ち込むのだった。





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