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琥珀色の心  作者: 柴垣菫草
第二章 人間へ(猫又)
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人間へ<16>

 玄武(げんぶ)と琥珀は京都が見下ろせる高台にいた。三人はまだ意識が戻っていない。晴茂は玄武に聞いた。

「どうだ、玄武。三人の様子は」

「大丈夫です。怪我もしていない」

「ここで目を覚まさせてもいいが、帰るのが大変だな。もっと、家の近くまで運んでくれるか、玄武」

「分かりました」


 玄武は甲羅の上に乗せると、山原家の近くまで飛び、森の中で下した。晴茂は、猫又(ねこまた)とのやり取りと、鞍馬の大天狗が猫又の世話をする話を玄武に伝えた。玄武は、大天狗を手伝うと言うと、帰って行った。


「さて、琥珀。定男と妹さん、それにお母さんにどんな説明をするかだな」

「そうだね。まさか、猫又なんて言っても信じてもらえないだろうから」

「やはり、妹さんの夢遊病ってことにするか。お母さんと定男は、疲れていたので山で倒れたと言うことだな」

「はい」


 晴茂は、三人に呪文を飛ばし、目覚めさせた。そして、なぜここにいるのかを、説明した。妹さんも、もう大丈夫だろうと付け加えた。そして、琥珀を紹介した。

「定男、お母さん、妹さん、これは僕の妹の琥珀です」


琥珀は、『えっ!妹?私が晴茂様の妹?…』 と驚いたが、言ってしまったので仕方がない。琥珀は、三人に挨拶をした。

「琥珀です。はじめまして」

「ああ、こちらこそ。えっと、母の啓子です。そして妹の真弓です」

五人はお互いに挨拶をし、山原の家に向かった。


 山原の家に着いて晴茂は、三人でゆっくり休んでくださいと言い、そして次の提案をした。

「琥珀は、こう見えても医学を学んでいまして、時々真弓さんの様子を診に来てもよろしいでしょうか」

「あら、それは心強いわね。ねぇ、真弓」

真弓は頷いた。


「それに、僕の妹はがさつ者で、時々自分が女だということを忘れるんです。真弓さんのようなお淑やかな女性になって欲しいのですが、なかなか上手く行きません。厚かましいようですが、真弓さん、琥珀に女道を教えてやってくれますか」

真弓は、ふふふふっと笑いを(こら)えた。

「女道はどうか分かりませんが、お友達として仲良くさせて頂きますわ」

よし、これで決まりだ、と晴茂は山原家を後にした。


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