↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
1/53

001 アップデート

世界初となる完全フルダイブVRファンタジーRPG

『アルカディア・ワールド・オンライン』――通称『AWO』。


このゲームには、二つの絶対的な制約があった。


ひとつは『体型の変更不可』。

身長160cmの人間が2mの屈強な戦士になれば、ログアウトした際に固有受容覚や身体図式がバグを起こし、まともに歩くことすらできなくなる。


もうひとつは『顔の変更不可』。

理想の美男美女に顔を変えると、現実の鏡を見た際に強烈な離人感や自己像幻視に襲われ、精神に異常をきたすプロテウス効果の逆流が問題視されたためだ。


つまり、ログインしているプレイヤーたちは全員、現実の姿のままファンタジー世界を歩き回ることになる。


発売当初は「夢がない」「誰がおっさんのままファンタジー世界を歩きたいんだ」と批判されたが、いざ蓋を開けてみれば、五感のすべてを再現した異常なまでの作り込みと、圧倒的なやり込み要素がウケて、世界的な大ヒットを記録していた。






5月3日ゴールデン・ウイーク初日。

大型アップデートが開ける午前10時。


「――よし、ログイン完了っと」


視界を覆っていた光の粒子が晴れると、見慣れた石畳の上に立っていた。

名前はゲン(本名:弦一・42歳)。

プレイスタイルは【農家】。現実の草臥れたスーツ姿とは違い、麻のチュニックに麦わら帽子という出立ちだ。

リアルでは、企業向けシステムの開発会社に勤務。若い頃はプログラマー、現在はプロジェクトマネージャーのゲーム好きのおじさんだ。


「ん……? なんだここ。王都の中央広場か?」


周囲を見渡して首を傾げる。

本来なら前回ログアウトした、郊外にあるクランハウスのトマト畑にログインするはずだった。

しかし今、俺の周囲には数え切れないほどのプレイヤーたちが密集し、ざわざわとどよめいていた。


「大規模アップデートの影響で、ログイン位置がリセットされたのか? まぁいいか」


社会の荒波に揉まれて二十年。おじさんはちょっとしたシステムトラブルくらいでは動じない。

俺はすぐさまメニューを開き、クランメンバーの二人にメッセージを飛ばした。


『なんか王城前の中央広場に飛ばされたわ。二人ともどう?』

『奇遇だな。俺は噴水のある公園だ。とりあえず、クランハウスに集合しよう』

『了解。すぐ向かう』






人混みを掻き分け、石造りの立派な街並みを抜けていく。


やがて王都の喧騒から少し離れ、城壁の外に建てられた、俺たちおじさん三人だけのクランハウスが見えてきた。ログハウス風の古めかしい建物が、俺たちの第二の我が家だ。


ドアを開けると、すでに二人がテーブルを囲んでいた。


一人は、俺と同い年のシュウ。プレイスタイルは【料理人】。現実では中堅出版社で編集をやっている男で、真っ白なコックコートと少し出たお腹がトレードマークだ。


もう一人は、一歳年上で43歳のテツ。プレイスタイルは【建築家】。本業もゼネコン勤務の現場監督だ。ゲーム内でも常に腰に大工道具をぶら下げている。


歳も近く、ジャンルは違えど生産メインのプレイスタイル。ゲーム内で知り合い意気投合。

三人だけのクランを結成して、イベントや大型アップデートの時は協力して、新要素を見つけたりして楽しんでいる。


「お待たせさん。いやー、待ちに待った大型アップデート、何が変わったのか楽しみだなー。俺は新種の野菜のタネが追加されてないかワクワクしてるよ」


「俺はやっぱり新しい食材だな。追加された新種のモンスターの肉、どんな味がするか楽しみだな。早く探索に行こうぜ!」


俺とシュウがのんきに笑い合う中、テツだけがなぜか腕を組み、眉間を深く寄せて黙り込んでいた。


「……二人とも、落ち着いて聞いてくれ」


テツの低く、ひどく真剣な声に、俺とシュウは顔を見合わせた。


「なんだ? クランハウスの維持費でも値上がりしたか?」


テツはゆっくりと顔を上げ、俺たちの目を見据えて言った。


「ログアウトボタンが、無くなった」

「「は!?」」


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

もしよろしければ、『ブックマーク』と『星評価』をしていただけると、ものすごく嬉しいです。

これからも頑張って更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします!


7:00・12:00・18:00に投稿予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。