閑話 傷痕
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刃物の先が手に突き刺さり、肉をジクジクと切り分けていく。
ジクジク
ジクジク
切り開かれる。
切り口からは、粘度のある膿みと赤い血。
ナイフを持つ、白服の男が上手く切れたとでも言うように笑みを浮かべる。
動かせないよう、台座に固定された手、その手のひらから汗が噴き出る、まるで痛みに涙を流すように。
白服の男は、ナイフを置くと煮えたぎった液体から細く銀色に輝く針を取り出す。
そのまま無言で、血を流す傷口に。
ブスリ
ブスリ
ブスリ
その手つきに迷いはなく、まるで毎日やっていることであるかのように、淡々と針を突き刺す。
白衣の男が口をひらく。
「はーい、終わりましたのでお大事になさってください」
「ありがとうございます」
治療が終わった。
そんなに深く切ったわけでないとはいえ、麻酔なしの切開と縫合はかなり痛かった。
この世界では仕方がないことだが、縫合用の針も太い。
昨日、路地裏で拾った少女に噛まれた。
結構ちゃんと噛まれてて、内出血もあり、血も滲んでいたがアルコール消毒はしたし、その日はなんともなかったので大丈夫だろうと思っていたら、翌日腫れた。
医者が言うには、悪い血が溜まっているのでそれを出せば治るということだった、まぁ膿みを出せということなので現代医学に照らしても正しそうであった。
雑菌という概念はまだないらしい。
ただ、問題は方法だ、前世なら病院で切れ味のいいメスでさっくりいって、あとは包帯というところだが、こちらではそんなに進んだ道具はないので普通のナイフで切って出すことになる。
正直拷問でも受けてるのではないかというぐらい痛かった、縫合も絹糸を使うので糸自体は細いが針はそこそこ太いのでこちらもとても痛かった。
治療の甲斐もあってか、一週間ほどで傷は塞がり腫れも完全に引いて治った、ただうっすらと傷痕は残った。
______________いつかの日、ミュレ視点________________
ベルク様の左手の親指には傷痕がある。
初めて出会った日、私がつけた傷痕だ。
とんでもないことをしてしまったと後悔している。
ただ、その傷痕を見ると、温かさが胸に湧く。
あまりに申し訳なかったので、せめてもの償いとして自分にも消えない傷痕をつけるよう、頼んだことがあるが断られてしまった。
元々そんなに目立つ傷痕でもなかったが、時間が経つごとに傷痕は薄くなっている。
私はそれを、少し嫌だなと思った。




