器
ドアが後ろで閉まる音がした。
シュウは鍵をかけた。それからもう一度確認した。それから額を木に押し当てて、息を吸った。
マヤはベッドに座っていた。横になっていなかった。膝を胸に抱え、両腕でそれを包んでいた。彼女は壁を見つめていた。ポスターが貼ってある壁ではなかった。何も貼っていない方の壁。建物の間の隙間に面している方の壁。
二人とも、トイレでの出来事以来、何も話していなかった。
外では街が唸っていた。車。話し声。遠くの電車。普通の音。日常の音。マヤが見たものを何も知らない世界の音。
シュウはドアから離れた。窓際に歩いた。外を見た。
隙間はまだそこにあった。
そこには何もなかった。
しかし彼は今、それを感じていた。あの場所と同じ圧力。目の奥の同じ重み。
「目覚めたの」
マヤの声は平坦だった。落ち着いているのではなかった。怖がっているのでもなかった。ただ——空っぽ。泣きすぎて、何も残っていない人のように。
シュウは振り返った。
「何が目覚めたんだ?」
マヤは彼を見なかった。ずっと何も貼ってない壁を見つめていた。
「吊るされてた人が警告したもの。それが来るって。ついに目覚めたって」
シュウはベッドに行った。端に座った。触れるほど近くではなかった。ただ——そこに。
「正確に何と言った?」
マヤの顎が引き締まった。彼女の手は膝の周りで握りしめられた。
「彼は言った——」彼女は止まった。唾を飲み込んだ。「『終焉の体現者が目覚めようとしている。緋色の悪魔が』って」
シュウの血が凍った。
「緋色の悪魔?」
「そう呼んでた」マヤはようやく彼を見た。彼女の目は赤く、腫れていた。しかしはっきりしていた。はっきりしすぎていた。「シュウ、あれは何なの? あの場所で私が見たものは何なの?」
シュウには答えがなかった。
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三回のノックがあった。大きくはなかった。急ぎでもなかった。ただ規則的だった。間隔が均等だった。世界中に時間がある人のように。
シュウとマヤの両方が凍りついた。
誰もノックしたことがなかった。階下の老女はインターホンを使う。配達の人はメッセージを送る。友達は来る前にテキストを送る。
シュウは立った。ドアへ歩いた。覗き穴から外を見た。
男だった。濃い色のコート。疲れた目。あまりにも多くの表情が重なり合った、同じ顔。公園の男だった。
シュウはドアを開けた。
男は招きも待たずに入ってきた。シュウを通り過ぎて。キッチンを通り過ぎて。マヤの机を通り過ぎて。彼は窓際で止まった。隙間を見つめた。
「彼女の言う通りだ」男の声は静かだった。落ち着いていた。天気の話をしているかのようだった。「緋色の悪魔が目覚めようとしている」
シュウはドアを閉めた。鍵をかけた。
「どうやってあの場所のことを知ってるんだ?」
男は振り返らなかった。
「お前が生まれるずっと前から、それを見てきた」
「それは答えになってない」
「それが唯一の答えだ」
マヤは膝をさらに強く抱えた。彼女の声は小さかった。
「あなたは誰なの?」
男はようやく振り返った。彼女を見た。彼の茶色い目は重かった。疲れていた。しかし冷たくはなかった。
「誰でもない」と彼は言った。「ただの読み過ぎる男だ」
「前に同じことを言った」
「それが真実だからだ」
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男はマヤの机から椅子を引っ張り出した。座った。二人に向き合った。
「緋色の悪魔は」と男は言った。「悪魔ではない。神ではない。怪物でもない」
「じゃあ何なんだ?」とシュウは尋ねた。
男はしばらく黙っていた。
「それは終わりだ。終焉。他のものを無かったにするために存在するもの」彼は自分の手を見た。「憎まない。愛さない。欲しない。ただ——終わらせる。それが触れたものは全て、自分が存在したことを忘れる。破壊されるのではない。殺されるのでもない。書かれなかったことになる。最初からそこになかったかのように」
マヤは震えた。
「吊るされてた人は——」彼女が言いかけた。
「志願した」と男は言った。「彼が鍵になった。鎖に。目に。彼は悪魔を閉じ込めている。しかし鎖が壊れている。彼の目が開いている。そしてそれらが完全に開いた時——」
「悪魔が目覚める」
男はうなずいた。
「完全に」
シュウの頭は回っていた。
「あなたは——『終焉の体現者』と言った。どういう意味だ?」
男は彼を見た。
「つまり、緋色の悪魔は体が必要だということだ。器。あの場所から出て行く時に着る何か」彼は間を置いた。「誰かがそれになる」
シュウの胸が締め付けられた。
「誰か?」
「ただの誰かではない。すでに無に触れた者。すでに無かったことにされた者。すでに内側に虚無を抱えている者」男の目はシュウの左手に動いた。文字に。かすかに薄れゆくインクに。在る。
シュウは拳を握った。
「あなたは——」
「悪魔は器を探していると言っているんだ。そして遠くまで探す必要はない」
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シュウは立ち上がった。彼の椅子が床を擦った。その音は小さなアパートの中で大きく響いた。
「待って。待って、待って、待って」彼は両手を上げた。「混乱してる。簡単な言葉で説明してくれ。謎掛けはなし。『誰でもない』もなし。ただ——説明してくれ」
男は背もたれにもたれた。腕を組んだ。
「簡単な言葉で?」
「簡単な言葉で」
男はうなずいた。
「分かった。簡単な言葉で」
彼は窓を指さした。建物の間の隙間を。
「あそこに何かがある。とても古い。物語よりも古い。神々よりも古い。それは物事を終わらせるために存在する。無かったことにするために。自分が存在したことを忘れさせるために」
シュウは聞いた。
「長い間、それは閉じ込められていた。ある男——吊るされている者——が鍵になることを志願した。彼は鎖を握っている。彼は悪魔を盲目に保っている」
「でも鎖が壊れている」とマヤは言った。
「鎖が壊れている」と男は同意した。「そしてそれらが完全に壊れた時、悪魔は体を必要とする。器。誰かを着るために」
彼はシュウを見た。
「それが起これば——もし緋色の悪魔が器を見つければ——全てが終わる。この世界だけではない。この街だけではない。全て。創造も非創造も。その間の空間も。全て」
シュウの喉は乾いていた。
「どうやって?」
男の声は静かだった。
「速さではない。力ではない。軍隊でもない」
「じゃあ何で?」
「絶望で」
部屋は沈黙した。
「悪魔は戦わない。破壊しない。ただ——書かなかったことにする。物事に自分が存在したことを忘れさせる。そして最悪なのは? 触れる必要すらない。ただ——諦めさせる。自分が存在しなかったら良かったと思わせる。そしてそうなる」
シュウはマヤを見た。彼女は青白かった。彼女の手は震えていた。
「なぜこれを私たちに話すんだ?」とシュウは尋ねた。
男は立った。
「誰かを見つける必要があるからだ」
「誰を?」
「悪魔が自分で選ぶ前に、器になることができる者」
シュウは彼を見つめた。
「私たちに人間を見つけろと? 終焉の体現者になるために?」
「すでに空っぽの者を見つけろ。すでに諦めた者。すでに無に触れて生き延びた者」男はドアへ歩いた。「その者だけが——悪魔を檻のように着ることができる。閉じ込めることができる。全てを無かったことにさせるのを止めることができる」
「もし見つけられなかったら?」
男はドアを開けた。
「悪魔は他の誰かを見つける。そしてお前はもう何も心配する必要はなくなる。なぜなら、心配するものが何も残らなくなるから」
彼は戸口をくぐった。
「待って——」シュウが言いかけた。
男はいなくなっていた。ドアは閉まっていた。鍵はまだかかっていた。
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シュウはドアのところに立っていた。それを見つめていた。
マヤはベッドに座っていた。壁を見つめていた。
二人は長い間動かなかった。
外では街が唸っていた。車。話し声。サイレン。普通。日常。何も知らない世界。
シュウは窓際に戻った。隙間を見つめた。
何もなかった。まだ何もなかった。
しかし彼はそれを感じることができた。待っていること。圧力。起ころうとしている何かの重み。
「マヤ」
彼女は応答しなかった。
「マヤ」
彼女は瞬きをした。彼を見た。
「どうすればいいの?」と彼女は尋ねた。
シュウには答えがなかった。
彼は左手の平を見た。
在る
まだそこにあった。まだ薄れていた。しかし以前より温かかった。何かを伝えようとしているかのようだった。
「分からない」と彼は言った。
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マヤは真夜中頃に眠りに落ちた。安らかではなかった。彼女の呼吸は不安定だった。彼女の手は何度もピクピクと動いた。彼女は一度、小さな壊れたような声をあげて——それから静かになった。
シュウは窓際に座った。隙間を見つめていた。
無はまだそこにあった。しかしそれはただ見ているだけではなかった。それは待っていた。
彼は男の言ったことを考えた。
すでに空っぽの者。すでに諦めた者。すでに無に触れて生き延びた者。
彼はマヤを見た。彼女だろうか? 違う。彼女は怖がっていた。傷ついていた。しかし空っぽではなかった。諦めてもいなかった。彼女はまだ討論に勝ちたがっていた。まだレオがアウターバーサルだと証明したがっていた。まだ生きたがっていた。
彼は自分自身を見た。自分だろうか? 彼は無に触れていた。物語の終わりの外側に立っていた。天使と、光でできた目隠しをした女に会った。自分の手の平に「在る」と書き、それを本当に意味していた。
しかし彼は空っぽではなかった。疲れていた。とても疲れていた。しかし空っぽではなかった。
男は悪魔には器が必要だと言った。誰かを着るために。終焉の体現者になるために。
シュウはそれが誰なのか分からなかった。しかし一つだけ分かっていた。彼はただここに座っているわけにはいかなかった。
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午前二時頃、シュウは立った。
マヤはまだ眠っていた。彼女の呼吸は安定していた。彼女の手はピクピク動くのを止めていた。
彼はジャケットを掴んだ。彼女の机にメモを残した。
散歩に行く。すぐ戻る。 — シュウ
彼はドアの鍵を開けた。廊下に出た。後ろで鍵をかけた。
階段は暗かった。通りは空っぽだった。街灯が唸っていた。
シュウは歩いた。目的地もなく。計画もなく。ただ歩いた。
街は静かだった。自分だけが世界で起きている人間のように感じさせる種類の静けさ。彼は以前にもその感覚を味わったことがあった。白い砂漠で。終わりの後の無で。物語と物語の間の空間で。
今回は違った。この静けさは孤独には感じられなかった。それは待っているように感じられた。
彼は公園を通り過ぎた。男と出会ったベンチ。今は空っぽ。ブランコが風にきしんだ。
彼はカフェを通り過ぎた。暗かった。閉まっていた。老女はおそらく上の階で寝ていた。
彼はコンビニを通り過ぎた。蛍光灯の光が歩道に零れ落ちていた。店員がタバコを積み上げていた。顔を上げなかった。
シュウは歩き続けた。
左手の平が痒かった。
在る
彼は文字を見た。まだそこにあった。まだ薄れていた。しかし以前より温かかった。ほとんど熱かった。
彼は男の言ったことを考えた。器になることができる者を見つけろ。
彼は吊るされている男のことを考えた。彼の目のこと。鎖のこと。
彼はマヤのことを考えた。彼女が見た一兆の死のこと。彼女が彼を見て言った方法——「あなたを見てると、それらが消える」と。
彼は自分自身のことを考えた。彼が逃げ出した物語のこと。天使のこと。目隠しの女のこと。彼女が根から育てた宇宙論のこと。
彼は緋色の悪魔のことを考えた。
そして彼は思った——初めて——一つの物語から逃げることが、ただ別の物語に足を踏み入れることだったのではないかと。より暗い物語に。より怖い物語に。自分が書き抜けることができないかもしれない物語に。
シュウは立ち止まった。
彼は路地の前に立っていた。暗かった。狭かった。二つの建物の間。隙間。
彼はその中を見つめた。
何も見つめ返さなかった。
しかし彼はそれを感じることができた。圧力。重み。待っていること。
「来いよ」と彼はささやいた。
何も動かなかった。何も話さなかった。何も変わらなかった。
しかしシュウは知っていた——何かが彼の声を聞いていた。
そしてどこかで、場所と場所の間の場所で、鎖に吊るされた男が目を開けた。ほんの少しだけ。ほんの少しだけ。
そして緋色の悪魔が微笑んだ。




