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シャンテル王女は見捨てられない〜虐げられてきた頑張り屋王女は婚約者候補たちに求婚される〜  作者: 大月 津美姫
2章

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54 アンジェラが話したいこと

 夕陽が顔を出す頃、お茶会はお開きになった。シャンテルが最後まで楽しくお茶会に参加したのは、これが初めてだった。

 キャロリンとイメルダは別れ際、名残惜しそうにシャンテルと言葉を交わした。


「今日ご一緒して、シャンテル様が噂と違って穏やかでお優しい方だと分かりましたわ」

「どうか、アンジェラ様をよろしくお願いします。シャンテル様もまたご一緒にお茶しましょうね」

「えぇ。私で良ければまたお願いします」


 アンジェラを含め、三人はシャンテルを「王女」ではなく「様」と敬称を付けて呼ぶようになり、シャンテルもアンジェラ嬢ではなく、アンジェラ様と呼ぶ程には仲良くなった。


「シャンテル様」


 アンジェラと二人で、キャロリンとイメルダの背中が小さくなるまで見送っていると、アンジェラに呼ばれて振り向く。


「折り入ってお話ししたいことがあります。どこかでお時間を頂けませんか? 出来れば二人きりで、内密に」


 最後の一言をアンジェラは声を潜めて告げた。その瞳には強い決意が宿っている。だが、僅かに緊張も入り交じっているように見えた。二人きり(・・・・)と言うからには、周囲に聞かれたくない話のようだ。


「それは構いませんが……」


 何のお話しかしら?


 アンジェラの雰囲気にシャンテルは身構える。そんな彼女とは対照的に、了承の言葉を受け取ったアンジェラは表情を軽くした。


「ありがとうございます。手紙でわたくしのスケジュールをお送りしますので、シャンテル様のご都合のよい日を仰ってください。では、わたくしはこれにて失礼します」



 優雅に一礼して去るアンジェラを見届けると、シャンテルもサリーとカール、エドマンドを連れて執務室へ向かう。


 トラブルはあったが、アンジェラたちのお陰で楽しい時間を過ごすことが出来たシャンテル。その余韻を味わいながら、執務室の前でサリーと別れると、手付かずの書類と向き合うため、部屋に籠る。


 そうやって一枚一枚捌いていると、視察に関する資料が顔を出した。


「あ……」


 そう言えば、ニックに予定を組んでもらっていたんだったわ。


 今回の視察は遠方が多く、普段より長い日程が組まれていた。

 まず、日照りや干ばつ対策の現場が三箇所。そして、川の決壊による橋の補修工事現場及び、被災地域が一箇所。その他、ランダムに選ばれた街が三箇所。最後に、ジョアンヌが前回視察した王都周辺の街一箇所の再視察だ。


 数年前までジョアンヌに視察公務はなかったが、『お姉様だけ視察に出掛けてずるいわ!』と言われてから、彼女にも視察を割り振っている。

 シャンテルも書類仕事を溜めなくて済み、報告書も書かなくていいので、楽になると考えていた。


 だが、その考えは甘かった。


 ジョアンヌが書く報告書は子どもの感想文レベルで、殆ど使い物にならないからだ。


 同行している官僚たちの報告書が救いだった。だが、ジョアンヌの報告書に官僚の報告書との矛盾や不明点があれば、内容を精査する必要がある。

 そこで、シャンテルに再視察が回ってくるのだ。


 再視察は手間も費用も余分に掛かる。だが、シャンテルにだけ視察があるとジョアンヌが癇癪を起こすため、以降も彼女には王都周辺の視察公務を入れている。王都周辺であれば、再視察になっても予定に組やすいからだ。


 視察中は国王にも自力で書類を捌いてもらう必要がある。だが、シャンテルが戻る日を見越して面倒な案件を回されるため、王城に帰ると想定より書類が溜まっているのが現状だ。

 視察の報告書作成もあるため、視察後は疲れていてもあまり休めないのがお決まりのパターンだった。


 因みに、視察団の護衛は第二騎士団が務める。だが、エドマンドはまだ視察の件を知らない。これは彼らがルベリオ王国に入国する前から、進めていた計画だからだ。

 エドマンドがこの件を知れば、同行すると言い出すだろう。だが、国として彼を同行させて問題ないか検討する必要がある。


 国賓が滞在している時に城を開けるのは気掛かりだが、今更、大きな日程変更は出来ない。


 一先ず、城を空ける前に国賓の皆さまに説明とご挨拶をしなくちゃ。


 シャンテルがそこまで考えたところで、ノックの音がした。気が付くと窓の外は暗くなっており、それだけ時間が過ぎたことを知る。


「シャンテル様、ニックです」


 いいところに来てくれたわ! と、シャンテルが入室を許可すると、ニックが数枚の紙束を手にしていた。


「こちら追加の書類です。それから国王陛下の婚儀の招待客リストに関して、完成版をお持ちしました」


 シャンテルは手渡された書類を受け取る。いつもより薄い紙束にシャンテルは違和感を覚えた。すると、ニックがわざとらしく咳払いする。


「ここ最近、ジョアンヌ様がご公務をサボ……お休みされていましたので、割り振りを調整しました」


 悪戯が成功したような笑顔を見せたニックに、シャンテルも吊られて笑う。


「ふふっ。ありがとう」

「因みに、招待客リストはシャンテル様が考えたものに、アンジェラ様のご友人と関係者が五名ほど追加されています」


 ニックの言葉の通り、アンジェラ側の関係者が足されていた。そこには今日のお茶会で会ったキャロリンとイメルダの名前もある。


「分かったわ。招待状は陛下とアンジェラ様が準備されるのかしら?」

「私は特に何も聞かされておりません」

「では確認後、こちらに一任されるようなら、招待状の作成に取りかかってもらえる? 過去の文面を参考にして、ニックの部下にお願いしていいかしら?」 

「畏まりました」

「それと、視察の件だけれど──」


 シャンテルは先程考えていたエドマンドの件などを相談し、段取りを決めていく。ついでに、出来上がった書類をニック渡した。


 その後、ニックが執務室を後にすると、入れ替りでアンナが軽食を運んできてくれる。シャンテルは心の中でエドマンドにお礼して、カールと一緒に夕食にありついた。

いつもお読み下さりありがとうございます!

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これにて、2章終了です。

前回お知らせした通り、3章はお休みを挟んで2/9(月)から再開予定です。

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