38 シャンテルの気持ちを探るエドマンド
ジョセフとのお茶の席を終えたシャンテルは夕食までの間、残りの公務を片付けるため、執務室に籠もった。
今朝も昨日と同様に、エドマンドとアルツールがシャンテルを部屋まで迎えに来た。昼食時もアルツールが宣言通りシャンテルの元へやってきた。エドマンドも『ルベリオに滞在している間は朝昼晩付き合ってやる』と宣言していた通り譲らなかった。そのため、食事の席は朝食同様に三人となった。
そして迎えた夕方。夕食の時刻を少し過ぎた頃にシャンテルが執務室の扉を開けると、エドマンドが出迎えた。
「やはりこの時間に出てきたか。待っていた甲斐があったな。さぁ行こうか」
「……何故?」
瞬きを繰り返すシャンテルの手をエドマンドが平然と取って、エスコートする。
「約束したからに決まっている」
どうやら彼の中でシャンテと三食を共にすることが決定していたようだ。シャンテルは、エスコートされるがまま夕食が用意されている部屋へ向かった。
◆◆◆◆◆
「ジョセフ公子と何を話した?」
食事の中盤、それまで黙って食事していたエドマンドが唐突に尋ねてくる。
「内緒です」
澄ました顔でシャンテルが答えると「なに?」と低い声が響く。
「たとえエドマンド皇子でも、ジョセフ様との会話はお教えできません。護衛騎士として見聞きしたことに関しても他言無用です」
言えば「なるほど」と、エドマンドが口の端を釣り上げる。
「では、言葉を変えよう」
そう言うと、彼は面白そうに問いかけてくる。
「シャンテル王女は公子をどう思っている?」
「どう、と言うと?」
「好きなのか、と聞いている」
「へ……?」
「ジョセフ公子に何か言われて、まんざらでもない顔をしていただろう」
その言葉にシャンテルは飲んでいた水を吹き出しそうになって、慌てて飲み込む。
「っ!? そんな顔していましたか!?」
「無自覚か?」
エドマンドの眉間に皺が寄る。
「アイツに婚約の話をされたのだろう?」
言い当てられて、シャンテルは思わず目を見張る。そして断片的にジョセフとの会話を聞かれたのだと悟った。同時にエドマンドのペースに乗せられて、まんまと会話の一部を認めてしまったことにも気付かされる。
「仮にそうだとしても、エドマンド皇子には関係ありません」
シャンテルは一度大きく息を吸って吐くと、冷静な思考を取り戻して答える。
「大ありだ。俺はシャンテル王女に婚約を申し込むと宣言している」
「だからと言って、知ってどうするのです?」
「彼をルベリオ王国から追い出す。それが無理なら婚約者に名乗り出ることを諦めさせる。手段は選ばない」
「なっ!? 余計に教えられません!!」
物騒なことを思わせるエドマンドにシャンテルはつい声を荒らげてしまう。バツが悪くなって「ごめんなさい」と謝罪を口にした。
「ですが、ルベリオ王国内での勝手は許しません」
シャンテルはムッとエドマンドを見る。すると、少し間があってから渋々といった様子で彼は口を開く。
「……それがシャンテル王女の望みなら、仕方ない。手荒な方法は我慢、しよう」
不服そうではあったが、エドマンドの言葉にシャンテルはホッとする。
だけど、エドマンド皇子はどんな方法を使うつもりだったのかしら? ……まさか、得意の剣技で力ずくでねじ伏せようとした、とか??
想像してゾッとする。剣技に関して彼の全力はシャンテルにも未知数だからだ。他国の王族をルベリオ王国で傷害事件に巻き込むわけにはいかない。
エドマンド皇子とジョセフ様はなるべく近づけさせないようにしましょう! とシャンテルは決めた。




