第二十五話 そしていびりは終わらない
いびり…… 何もかも懐かしい……と青い星を眺めながら振り返りそうな、キュアリィのノマールいびり。
伯爵家の養子となったノマールですが、まだキュアリィはいびりを止める気はないようです。
果たしてノマールの何をいびるのか?
どうぞお楽しみください。
「お許しください! そればかりは……」
「いけませんわ! 何としても首を縦に振っていただきます!」
伯爵家の中で、ノマールの懇願にキュアリィが首を横に振りました。
しかしノマールは諦めず、キュアリィに食い下がります。
「私みたいな立場の者には、そんな事許されません! お願いします! お許しを……!」
「まぁ! まだそんな事を仰るの!? これは徹底的にわからせる必要がありますわね!」
「どうか、どうか……」
懇願を続けるノマールの前に、キュアリィが一枚の紙を突き出しました。
「ほらご覧なさい! このお誕生日を見れば、ノマールさんの方が半年近く歳上なのは明らか! なのでノマールさんを『お姉様』と呼びますわ!」
「養子にしていただいた身でそんな事……! このお家ではキュアリィさんの方が先輩ですから、私が『お姉様』とお呼びします!」
「年功序列ですわ!」
「お家にいた長さです!」
話はどちらも一歩も譲らない構え。
そこに、
「何を言い争っているのかね」
「仲良くしなくては駄目よ」
伯爵と伯爵夫人が通りかかりました。
「お父様! お母様!」
「あ、お、お父、様……。お母、様……」
ノマールの言葉に、伯爵は顔をしかめます。
「ノマール、その呼び方はやめなさい」
「は、はい! 申し訳ありません!」
伯爵の言葉に、ノマールは身を強張らせました。
(わ、私ったらキュアリィさんが優しいからって調子に乗って……! 私みたいな平民に『お父様』なんて呼ばれたくないですよね……)
「故郷にご両親がいらっしゃるのだから、その方達だけを父母と呼ぶように」
「え……、あ! はい!」
「そして私の事は、親しみを込めて『お兄様』と呼びなさい」
「ぷふっ!」
キメ顔で言う伯爵に、思わずノマールは吹き出しました。
「あら、では私は『お姉様』かしら?」
「お母様まで……。ややこしいですわ」
「わ、わかりました、お兄様、お姉様……」
「ノマールさんもお父様とお母様の冗談に、真面目に付き合わなくてよろしいのですよ?」
ふわりと柔らかくなった雰囲気の中、伯爵は笑顔のまま口を開きます。
「まぁ呼び名など何でも良いのだ。私達は仮にとはいえ家族になったのだから、好きに呼び合えば良い。お互いが納得する呼び名でな」
「はい!」
「わかりました!」
伯爵のウインクに、二人は顔を見合わせてから笑顔で頷きました。
「ではせめて『さん』は取っていただけます? もう姉妹なのですから」
「わ、わかりました! ……あ、その、きゅ、キュアリィ……」
「何ですのノマール?」
「……! キュアリィ!」
感極まって抱きつくノマールを抱きとめながら、キュアリィは決意を新たにしました。
(名前で呼び合えるようになったのは大きな一歩ですわ! この先ノマールさ……、ノマールが貴族でも平民でも好きな人生を選べるように、いびりの手は緩めませんわ!)
最後までお読みくださって、ありがとうございます。
仲良し義姉妹……。尊い……。
ちなみにキュアリィは気づいていませんが、口答えできるようになったのはノマールの大きな進歩です。
きっとこれからも仲良くいびりは続いていく事でしょう。
感想で何件か『ノマールとヴィリアンヌが出会ったら……』というコメントをいただいていたのですが、ここは勘違いさせておいたままの方が面白いかな、とここで終わりにしてあります。
期待されていた方、ごめんなさい!
続きは皆様の脳内で!
沢山の感想、ファンアート、イチオシレビュー、ポイントやPV・ユニークに支えられて、無事完結する事ができました。
特に『朝の癒し』『できるだけ長く続いてほしい』のお言葉は励みになり、当初の想定では十話ぐらいで畳むつもりでしたが、気がつけば二十五話……。
応援ってすごい。改めてそう思った。
皆様本当にありがとうございます!
そしてラストに合わせて、四月咲 香月様から素晴らしいファンアートが!
エンディングフィナーレ
素晴らしいとしか言えません!
ノリで書き始めた作品でしたが、ここまで愛していただいて、書き手冥利に尽きます!
四月咲 香月様、ありがとうございます!
今後も皆様に楽しんでもらうべく、ちまちまと投稿して参りますので、よろしくお願いいたします。