145話 冒険都市VS――。
「あー死にそー! で、す、が! まあ、最初からアリスお姉様を相手にしているのです。これくらいは覚悟しておくべき要素でしたね」
「なんで、腕ぶった斬られて必死に止血している状態でそのテンションなんだよ、気持ち悪イ」
「あはは!! 嗤いましょう、ウィス。この世の不幸や理不尽は嗤ってる間だけは寄っては来ない。笑っている間だけはね、わたくし達こそが理不尽を押し付ける側になれるのですよっと」
フォルトナが片腕で、バスケットから取り出すのは漂竜物。
迷宮から見いだされたこの世ではない場所で生まれたと嘯かれる宝物。
その全てが――。
「”不吉な開戦の鈴”、これを鳴らせばあら不思議。どこからともなく怪物が現れ、好き放題に暴れ出す、そんな漂竜物らしいです」
「らしいってなんだよ」
「使った事ありませんもの、お姉さまを殺した時に彼女の封印庫から拝借したものです、まあ名前や使い方は幸運にも上姉様の手記に残っていたのですが」
「あー、そーォ」
「はい、そういう訳でちりんちりんっと」
この女になんのためらいもない。
片手でつまむその銀のベル、透き通った音、銀で出来た小鳥がさえずるような音が馬車の中に響いて。
ばからばからばからばからばから。
キャビンの外から聞こえる首無し馬たちの蹄の音、その音に重なって聞える、地響き、咆哮。
怪物の声が響く、どこからか現れたその声が今、どんどん重なり――。
「あっはっはっはっは! これ、外今からすっごい事になりますよ~、さあ、ウィス、ここから帝都までノンストップで行きましょう!!」
馬車は、走る。
王国を滅ぼした幸運が呼ぶのは、不特定多数を見境なく襲う怪物達。
ちりん、ちりん、ちりん。
その響きが、世界の垣根を酔わせて蕩かせる。
世界の垣根を越えて、ちりん、ちりん。
音が響く。
鐘の音に惹かれて、惹かれて、惹かれて――。
音が音が音が音が音が。
ああ、幸運にも届いてしまった。
【TIPS€ ”不吉な開戦の鐘:ジーアマーヤ樹海迷宮で発見された血塗れの銀鐘。その音は塔に届き、世界の垣根を酔わせるという。血濡れの鐘にこびりついた濃い人血は、皆、後悔や恐怖と悲嘆の中に沈んだ呪いの源である。この鐘を鳴らす者の運命力次第、呼んではならぬ者に届く事もあるだろう】
「あら?」
フォルトナの視界に、メッセージが流れる。
いつからか彼女に見えるようになった奇妙な文言。
「……TIPS? これは、なんと読むのでしょうか?」
「あ? どうしたァ? バカ姫ェ」
だが、今日のは特段に意味が――。
【TIPS€ ”開戦の鐘”の音に引かれて、異世界より】
「HELOO NICE TO MEET YOU」
【”耳の怪物”がやってきました】




